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43)本音と傷跡
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1
「お見合い相手を紹介しにきたわよ!!!!」
突然の乱入。
静寂に包まれた店内で、峰子(みねこ)と昭人(あきと)、そして猫たちは全員 完全にフリーズ した。
(お、お母さん!?!?)
予想外すぎる展開に、峰子は心臓が跳ね上がる。
「なっ……なんでまた急に……!!?」
「だって、あなた、お父さんにあの子のこと話したら、すっごく怒っちゃって!!」
母親は、ふぅと息をつきながら 座席にドカッと腰を下ろす。
「『そんな若い学生が本気で相手にするわけない!』『遊ばれて捨てられる前に、ちゃんとした人とお見合いさせろ!』って!!」
「はぁぁぁぁ!?!?」
峰子は 頭を抱えた。
(いやいやいやいや!! 何勝手に決めつけてるの!?!?)
「だから、お父さんが『すぐに見合いさせろ!』ってうるさくて、もう、こうするしかなかったのよ!」
「お母さん……!!!」
その言葉を聞いた瞬間、峰子は 隣の昭人の方をそっと見た。
(……昭人くん、これ聞いてどう思うんだろう)
すると――
「……」
昭人は 黙ったまま、拳をぎゅっと握りしめていた。
2
「……じゃあさ」
ぽつりと、昭人が口を開く。
「俺が店長を本気で好きだって言ったら、どうするんですか?」
「えっ?」
「お父さんは『そんな若い学生が本気で相手にするわけない』って言ったけど」
昭人は まっすぐに峰子の母親を見つめる。
「俺、本気なんですけど」
「……!!!」
(えっ……)
峰子は 息をのむ。
「遊びじゃないです」
「……」
「だから、そう簡単に“どうせ捨てられる”とか決めつけないでください」
母親は 一瞬、驚いたように昭人を見つめた。
そして――
「……あなた、本気で言ってるの?」
「はい」
「……ふぅん」
母親は じっと昭人を見つめる。
峰子は どこか居心地の悪い沈黙を感じながら、昭人の横顔を見つめた。
(昭人くん……本当に、そんなふうに思ってくれてたんだ……)
3
「……でも、俺、今までリアルの恋愛なんてしたことなかったんですよ」
昭人は 少し目を伏せて、小さく笑った。
「推し活ばっかりで、リアルの女の子に興味持てなかったっていうか……」
「……」
「まぁ、正直に言うと、怖かったんですよね。リアルの女の子が。」
「怖かった……?」
「はい」
昭人は、ふっと息を吐く。
「……俺、小学生の頃、好きな子がいたんですよ」
「……!」
「近所に住んでた同い年の女の子で。明るくて、笑顔が可愛い子で……俺、ずっと好きだったんです」
峰子は 静かに昭人の話に耳を傾ける。
「でも、ある日、クラスの男子に『お前、○○ちゃんのこと好きなんだろ?』って冷やかされて」
「……うん」
「俺、恥ずかしくなって、なんも言えなくて。そしたら、その子がさ……」
「……」
「『え、やめてよ! 昭人くんのことなんて何とも思ってないし!』 って、みんなの前で言ったんですよ」
胸が ギュッと締め付けられるような感覚。
「それがショックで……俺、それ以来、生身の女の子が怖くなったんです」
昭人は 淡々と語るが、どこか寂しげだった。
「だから、アニメとか漫画の女の子は好きになれるのに、リアルの女の子はダメで……」
「……」
「でも、店長だけは違いました」
「……え?」
「店長だけは、怖くなかったんです」
その言葉に、峰子の 心臓がドクンと跳ねる。
「最初は、ただのバイト先の店長って思ってたんですけど……いつの間にか、店長のことが気になってました」
昭人は 真っ直ぐに峰子を見つめた。
「だから、俺は店長が好きです」
「……っっ!!」
4
峰子は 息が詰まりそうになるほど胸がいっぱいになった。
(そんな過去があったなんて……)
(それでも、私だけは怖くなかったって……)
気づけば、峰子の中にも“ずっと言えなかった想い”が込み上げていた。
「……私もね」
「え?」
「私も、ずっと恋愛を避けてきたの」
昭人が、驚いたように峰子を見つめる。
「私、小さい頃からずっと“お姉ちゃん”だったのよ」
「お姉ちゃん?」
「うん。下に妹がいて、私はずっと“しっかりしなさい”って言われて育ったの」
「……」
「だから、誰かに甘えるのが苦手で……恋愛も、誰かに頼るのも、全部遠ざけてた」
「……」
「好きになって、もし傷ついたらどうしようって……ずっと思ってた」
「店長……」
「でも、昭人くんと一緒にいると……なんか、少しだけ“頼ってもいいのかな”って思えて……」
気づけば、峰子の目が潤んでいた。
「……私も、昭人くんのこと、好きになってたのかもしれない」
「……っっ!!」
昭人の 目が見開かれる。
「……俺、ちゃんと店長のこと守りますから」
「……ふふっ、頼りにしてるわよ」
――こうして、2人は 本当の気持ちを伝え合った。
「お見合い相手を紹介しにきたわよ!!!!」
突然の乱入。
静寂に包まれた店内で、峰子(みねこ)と昭人(あきと)、そして猫たちは全員 完全にフリーズ した。
(お、お母さん!?!?)
予想外すぎる展開に、峰子は心臓が跳ね上がる。
「なっ……なんでまた急に……!!?」
「だって、あなた、お父さんにあの子のこと話したら、すっごく怒っちゃって!!」
母親は、ふぅと息をつきながら 座席にドカッと腰を下ろす。
「『そんな若い学生が本気で相手にするわけない!』『遊ばれて捨てられる前に、ちゃんとした人とお見合いさせろ!』って!!」
「はぁぁぁぁ!?!?」
峰子は 頭を抱えた。
(いやいやいやいや!! 何勝手に決めつけてるの!?!?)
「だから、お父さんが『すぐに見合いさせろ!』ってうるさくて、もう、こうするしかなかったのよ!」
「お母さん……!!!」
その言葉を聞いた瞬間、峰子は 隣の昭人の方をそっと見た。
(……昭人くん、これ聞いてどう思うんだろう)
すると――
「……」
昭人は 黙ったまま、拳をぎゅっと握りしめていた。
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「……じゃあさ」
ぽつりと、昭人が口を開く。
「俺が店長を本気で好きだって言ったら、どうするんですか?」
「えっ?」
「お父さんは『そんな若い学生が本気で相手にするわけない』って言ったけど」
昭人は まっすぐに峰子の母親を見つめる。
「俺、本気なんですけど」
「……!!!」
(えっ……)
峰子は 息をのむ。
「遊びじゃないです」
「……」
「だから、そう簡単に“どうせ捨てられる”とか決めつけないでください」
母親は 一瞬、驚いたように昭人を見つめた。
そして――
「……あなた、本気で言ってるの?」
「はい」
「……ふぅん」
母親は じっと昭人を見つめる。
峰子は どこか居心地の悪い沈黙を感じながら、昭人の横顔を見つめた。
(昭人くん……本当に、そんなふうに思ってくれてたんだ……)
3
「……でも、俺、今までリアルの恋愛なんてしたことなかったんですよ」
昭人は 少し目を伏せて、小さく笑った。
「推し活ばっかりで、リアルの女の子に興味持てなかったっていうか……」
「……」
「まぁ、正直に言うと、怖かったんですよね。リアルの女の子が。」
「怖かった……?」
「はい」
昭人は、ふっと息を吐く。
「……俺、小学生の頃、好きな子がいたんですよ」
「……!」
「近所に住んでた同い年の女の子で。明るくて、笑顔が可愛い子で……俺、ずっと好きだったんです」
峰子は 静かに昭人の話に耳を傾ける。
「でも、ある日、クラスの男子に『お前、○○ちゃんのこと好きなんだろ?』って冷やかされて」
「……うん」
「俺、恥ずかしくなって、なんも言えなくて。そしたら、その子がさ……」
「……」
「『え、やめてよ! 昭人くんのことなんて何とも思ってないし!』 って、みんなの前で言ったんですよ」
胸が ギュッと締め付けられるような感覚。
「それがショックで……俺、それ以来、生身の女の子が怖くなったんです」
昭人は 淡々と語るが、どこか寂しげだった。
「だから、アニメとか漫画の女の子は好きになれるのに、リアルの女の子はダメで……」
「……」
「でも、店長だけは違いました」
「……え?」
「店長だけは、怖くなかったんです」
その言葉に、峰子の 心臓がドクンと跳ねる。
「最初は、ただのバイト先の店長って思ってたんですけど……いつの間にか、店長のことが気になってました」
昭人は 真っ直ぐに峰子を見つめた。
「だから、俺は店長が好きです」
「……っっ!!」
4
峰子は 息が詰まりそうになるほど胸がいっぱいになった。
(そんな過去があったなんて……)
(それでも、私だけは怖くなかったって……)
気づけば、峰子の中にも“ずっと言えなかった想い”が込み上げていた。
「……私もね」
「え?」
「私も、ずっと恋愛を避けてきたの」
昭人が、驚いたように峰子を見つめる。
「私、小さい頃からずっと“お姉ちゃん”だったのよ」
「お姉ちゃん?」
「うん。下に妹がいて、私はずっと“しっかりしなさい”って言われて育ったの」
「……」
「だから、誰かに甘えるのが苦手で……恋愛も、誰かに頼るのも、全部遠ざけてた」
「……」
「好きになって、もし傷ついたらどうしようって……ずっと思ってた」
「店長……」
「でも、昭人くんと一緒にいると……なんか、少しだけ“頼ってもいいのかな”って思えて……」
気づけば、峰子の目が潤んでいた。
「……私も、昭人くんのこと、好きになってたのかもしれない」
「……っっ!!」
昭人の 目が見開かれる。
「……俺、ちゃんと店長のこと守りますから」
「……ふふっ、頼りにしてるわよ」
――こうして、2人は 本当の気持ちを伝え合った。
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