ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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51)オーナーの本当の事情

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1
「……よし、行くか」

 翌日。

 猫カフェ「ねこまど」の営業前の時間を使い、峰子(みねこ)、昭人(あきと)、真緒(まお)、琴葉(ことは)の4人は オーナー・川島静(かわしま しず)の自宅 に向かっていた。

「……オーナー、話してくれるかな?」

 峰子が、少し不安そうにつぶやく。

「どうですかね……でも、話してくれなくても、こっちで探りまくってますし」

「うん、猫たちも全力で情報収集してたしね」

「にゃ!(俺たちが見つけたスーツ男の話もあるしな!)」

「にゃぁ!(これはもう、聞かないと気が済まない!)」

「……いや、お前らは今回はお留守番な」

「にゃ~~!(えぇぇぇ!?)」

「さすがにオーナー宅に猫の軍団を連れて行くのは無理だろ」

「にゃ……(たしかに)」

 猫たちは しぶしぶ納得。

 そして、峰子たちは ついにオーナーの家へと向かった。

2
 オーナー・川島静の自宅は、小さな古い一軒家だった。

 何度か訪れたことがあるが、最近はほとんど顔を出していなかった。

 昭人が ピンポーン とインターホンを鳴らす。

『……はい』

 ドア越しに、かすれた声が聞こえた。

「オーナー、私です。峰子です」

『……ミネコさん?』

「少しお話しできますか?」

『……』

 しばらく沈黙が続く。

(やっぱり、話したくないのかな……)

 そう思った時――

『……鍵は開いてるわ。入ってらっしゃい』

「……!」

 ついに、直接話を聞ける瞬間がやってきた。

3
「お邪魔します」

 室内に足を踏み入れると、そこには 少しやつれた様子のオーナー・静がいた。

 78歳という年齢を感じさせる細い体。

 昔はもっと元気だったが、今はどこか 疲れたような雰囲気をまとっていた。

「……ごめんなさいね、急にこんな話をして」

「いいえ……でも、オーナー、本当にお店を閉めるしかないんですか?」

「……」

「売上が回復してきたのに、運営資金が足りないのはおかしいです」

「……」

「何があったんですか?」

 オーナーは 小さくため息をついた。

 そして――

「……少し、コーヒーを淹れてくるわ」

 そう言って、ゆっくりとキッチンへ向かった。

(話すのをためらってる……)

(やっぱり、何かある……)

4
 数分後、コーヒーが運ばれてきた。

 静は カップを両手で包みながら、小さくつぶやいた。

「……私はね、ミネコさん」

「はい」

「猫たちを守りたくて、このお店を始めたの」

「……ええ」

「でも……今は、私がこのお店を続けるのが難しくなったのよ」

「それは、健康の問題ですか?」

「……それもあるわね」

 静は、少し苦笑した。

 そして――

「でも、本当の理由は……私の息子のことなのよ」

「……息子?」

「……」

「……え?」

5
「私には、息子がいるの」

「……」

「でも、何年も疎遠になっていてね……つい最近、突然連絡があったのよ」

「……」

「彼はね……多額の借金を抱えていたの」

「!!?」

「借金……!?」

「……ええ」

 静の声が 震えていた。

「彼は、私に助けを求めてきたのよ」

「……」

「私は、母親として何とかしてあげたかった」

「……それで、お店を売ろうと?」

「……そう」

 静は、 うつむいたまま、申し訳なさそうに峰子たちを見た。

「ごめんなさいね、ミネコさん」

「……」

「でも、私は母親だから……彼を見捨てることなんて、できなかったの」

「……」

6
「それで……その借金の相手って、どんな人なんですか?」

 昭人が 慎重に尋ねる。

 すると――

「……たぶん、良くない人よ」

「……!」

「私もよくわからないけど……彼の家には、スーツを着た男たちが何度も訪ねてきてるみたいで」

 猫たちが見た“怪しいスーツの男”のことを思い出した。

(やっぱり……)

(借金の取り立てだったんだ……)

7
「……オーナー」

 峰子は ゆっくりと、静を見つめる。

「私たちに、何かできることはありませんか?」

「……」

「お店を手放さずに済む方法を、一緒に探しませんか?」

「……ミネコさん」

「ねこまどは、私だけのものじゃないんです」

「昭人くんも、真緒も、琴葉も、猫たちも……みんなの居場所なんです」

「だから……どうか、私たちに頼ってください」

「……」

 静の 目が、少し潤んだ。

 そして――

「……ありがとう、ミネコさん」

 ようやく、彼女は 本当の気持ちを打ち明ける決心をした。
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