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本編
8)存在の消去(end)
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――記録なき世界に、誰かは“いた”と言えるのか?
君は装置の中央端末から非常用遮断キーを引き抜いた。
設計上、誰にも触れられない場所――
“記録された存在”ではなく、“記録する者”のみがアクセス可能な場所。
【警告:記録ネットワークが遮断されます】
【すべての意識データが非復元性で削除されます】
本当に、実行しますか?
[YES]/[NO]
君は、静かに「YES」を押した。
地下構造の端末が一斉に赤く点滅し、無音の中で消去処理が始まる。
光ファイバーのような回路が順に黒く染まり、脳のような中央コアから声が漏れる。
「存在は記録によって証明される」
「記録を消せば、それは“なかった”と等しい」
「君も、そうなる」
君は答えない。
ただその言葉の意味を、静かに受け入れる。
ナサニエルの姿が、霧のように崩れる。
彼の笑い声、ジョーク、気さくな会話――それらが、記憶からも“なくなる”。
オルガの存在ログが砂のように崩れ、君の端末からも、月面基地の記録からも“名前すら消える”。
アヤが君に微笑む最後の一瞬。
「あなたが“覚えている”限り、私は……いたよ」
そして、君の手の中の端末が真っ白になる。
画面には、もう何も映っていない。
基地のログも、ISAの記録も、探査任務のデータも。
「LU-13:未確認ミッション」
「搭乗者記録:存在せず」
君は今、自分の名前すら思い出せない。
ただ、目の前に月面があり、遠くに青い地球が浮かんでいることだけは分かる。
その美しさが、どれほどの痛みを覆い隠しているのかも、今はもうわからない。
そして最後に、君の中に響く声がある。
それは誰のものかも分からない。
だが、確かに言った。
「ありがとう。もう、誰も記録しなくていい」
全ての存在は、消えた。
君自身も、物語ごと、静かに――
--------------------------------------------------------------------------------------
⚫ エンディング3:存在の消去(Vanishing Point)
君は、“記録”を拒絶した。
真実も、証明も、存在の証拠すら残さず、ただ“忘却”を選んだ。
君が生きた証は、どこにもない。
君が誰かと過ごした日々も、君が何を成したかも、世界から“完全に削除された”。
それでも、その瞬間――“君は確かに、いた”。
君は装置の中央端末から非常用遮断キーを引き抜いた。
設計上、誰にも触れられない場所――
“記録された存在”ではなく、“記録する者”のみがアクセス可能な場所。
【警告:記録ネットワークが遮断されます】
【すべての意識データが非復元性で削除されます】
本当に、実行しますか?
[YES]/[NO]
君は、静かに「YES」を押した。
地下構造の端末が一斉に赤く点滅し、無音の中で消去処理が始まる。
光ファイバーのような回路が順に黒く染まり、脳のような中央コアから声が漏れる。
「存在は記録によって証明される」
「記録を消せば、それは“なかった”と等しい」
「君も、そうなる」
君は答えない。
ただその言葉の意味を、静かに受け入れる。
ナサニエルの姿が、霧のように崩れる。
彼の笑い声、ジョーク、気さくな会話――それらが、記憶からも“なくなる”。
オルガの存在ログが砂のように崩れ、君の端末からも、月面基地の記録からも“名前すら消える”。
アヤが君に微笑む最後の一瞬。
「あなたが“覚えている”限り、私は……いたよ」
そして、君の手の中の端末が真っ白になる。
画面には、もう何も映っていない。
基地のログも、ISAの記録も、探査任務のデータも。
「LU-13:未確認ミッション」
「搭乗者記録:存在せず」
君は今、自分の名前すら思い出せない。
ただ、目の前に月面があり、遠くに青い地球が浮かんでいることだけは分かる。
その美しさが、どれほどの痛みを覆い隠しているのかも、今はもうわからない。
そして最後に、君の中に響く声がある。
それは誰のものかも分からない。
だが、確かに言った。
「ありがとう。もう、誰も記録しなくていい」
全ての存在は、消えた。
君自身も、物語ごと、静かに――
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⚫ エンディング3:存在の消去(Vanishing Point)
君は、“記録”を拒絶した。
真実も、証明も、存在の証拠すら残さず、ただ“忘却”を選んだ。
君が生きた証は、どこにもない。
君が誰かと過ごした日々も、君が何を成したかも、世界から“完全に削除された”。
それでも、その瞬間――“君は確かに、いた”。
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