逢魔ヶ刻の迷い子2

naomikoryo

文字の大きさ
12 / 12

真実の掘り起こし

しおりを挟む
翌日——。

 七不思議の恐怖を乗り越えた六人は、眠気と疲労感を抱えながら、それでも確かめずにはいられない気持ちを胸に、昼過ぎの校庭へと集まった。

 昨日の夜、花壇で出会った**「泣いていた少女」**。
 彼女は、「私の花を返して」と泣き続け、消えていった。

「……ここだよな」

 陽介がつぶやく。

 花壇は、昼間になってもやはり元のままだった。
 土は乾いていて、花などどこにも咲いていない。

「昨日の夜、ここに花が咲いたのは……夢じゃないよな?」

 隼人が額の汗を拭いながら言う。

「……確かめてみるしかない」

 美咲が決意を込めた声で言った。

 六人は、用意してきたスコップを手にし、慎重に土を掘り返し始めた。

 掘り始めて数分——。

「ん……? なんか、出てきたぞ……」

 大輝が、スコップを止めた。

「なに……?」

 紗奈がのぞき込む。

 土の中から出てきたのは、古びた布の切れ端だった。

「何かを包んでるみたい……?」

 由香が慎重に布をめくった、その瞬間——。

「……っ!!」

 乾いた白い骨が、土の中から顔を覗かせた。

「骨……!?」

 六人全員の心臓が凍りつく。

「まさか……」

 陽介が息を詰めながら、さらに慎重に掘り進めた。

 すると——。

 小さな人間の頭蓋骨が、土の中から現れた。

「う、嘘だろ……!?」

 隼人が後ずさる。

「やっぱり……あの少女……!」

 美咲が、手で口を押さえる。

 彼らが昨日見た少女——。

 泣いていた少女は、ここに埋められていたのか。

 七不思議では、「花壇の少女が泣いていた」と語られていたが……。
 本当は、「泣きながら花を守ろうとしていた少女が、ここに埋められた」というのが真実だったのかもしれない。

「……これ、先生に言わなきゃ……」

 陽介が震えながら言った。

 六人は顔を見合わせると、スコップを置き、すぐに職員室へと向かった。

 職員室には、教頭の河村先生がいた。

 六人は、昨夜の出来事をできる限り普通の言葉で説明し、そして——。

「校庭の花壇から……骨が出てきたんです。」

 教頭先生の表情が凍りついた。

「……骨?」

「はい……多分、人の……」

 美咲がそう言うと、教頭先生は一瞬顔をこわばらせたが、すぐに深刻な表情になった。

「……どこにあるんだ?」

「校庭の、あの花壇のところです」

 先生はすぐに立ち上がり、六人と共に花壇へと向かった。

 教頭先生が、掘り起こされた骨を見た瞬間——。

「……これは、本当にまずいことになったな……」

 先生は顔をしかめながら、すぐに携帯を取り出し、警察に連絡を入れた。

「これは、我々では判断できない。すぐに警察が来るだろう」

 六人は無言で頷いた。

 あの少女の霊を見たこと、夜の七不思議を巡ったこと——。
 それらの出来事は、恐ろしくもあり、信じがたいものだった。

 しかし、この人骨は確かに現実だった。

 彼らが昨夜見たものは、単なる怪談ではなく、実際にこの学校で起きた“何か”の名残だったのだ。

 しばらくして、警察が到着し、発掘現場を封鎖した。
 六人は事情聴取を受け、先生と一緒に校長室で待機することになった。

「……あの子は、ずっと助けを求めていたんだね」

 由香が、静かに呟いた。

「うん……きっと、ずっと、誰にも見つけてもらえなくて……」

 美咲が遠くを見つめながら言う。

「だから、七不思議になったのかもな……」

 隼人が小さく言った。

「でも……私たちが、見つけてあげられた」

 紗奈が微笑んだ。

「……ああ。これで、彼女もやっと……」

 陽介が言いかけた、その時——。

 教室の窓の向こう、校庭の花壇の前に、白いワンピースの少女が立っていた。

「……!!」

 六人は息をのむ。

 少女は、やさしく微笑んでいた。

 その瞳には、もう涙はなかった。

 そして——。

 ふわりと消えていった。

 その後、発掘された人骨は警察によって調査が行われた。
 結果——数十年前のものと判明した。

 当時、この旧校舎は小学校だったようだ。
 そして、五年生だった少女の失踪事件があったことも分かり、警察はその関連性を調べることとなった。

「この話、誰かに言う?」

 由香が、六人に問いかけた。

「……いや、俺たちの中だけでいいだろう」

 陽介が静かに言った。

「七不思議は、もう七不思議じゃなくなった。でも、これ以上、噂にする必要はない」

「……うん」

 美咲が頷いた。

 こうして、六人の**「七不思議の夜」**は、静かに幕を閉じた。

 だが、きっとこれからも——。

 この学校には、語られないままの“物語”が眠っているのかもしれない。

 ——終
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし

響ぴあの
ホラー
【1分読書】 意味が分かるとこわいおとぎ話。 意外な事実や知らなかった裏話。 浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。 どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

処理中です...