再び君に出会うために

naomikoryo

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再最終章

貴子の願い

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三人は公園の入り口まで駆け抜けたが、息を整える間もなく、黒服の者たちがすぐ背後に迫っていた。
優也が振り返ると、銃口が彼らに向けられているのを見て、目を見開いた。
その瞬間、銃声が響き渡り、貴子の右足首をかすめた。
「うっ…!」
貴子はその場に倒れ込み、地面に手をついた。
痛みで顔を歪めながらも、すぐに優也と麻友を見上げ、必死に言葉を絞り出した。
「二人とも、早く逃げなさい!」
「でも、貴子さん!」
優也が焦ったように叫んだ。
「行けって言ってるでしょ!」
貴子は声を張り上げた。
その表情には痛みと共に、強い決意が宿っていた。
「太一にこのことを伝えて。彼なら、きっと何とかしてくれる…お願い、私のためにも!」
麻友は涙をこらえながら、震える声で
「でも、置いていけないよ…」
とつぶやいた。
「お願い、私のことは気にしないで!君たちが捕まったら、すべてが終わってしまう。
太一に伝えて、それだけが今の私の望みよ」
黒服たちが迫りくる中、貴子の言葉はまるで最後の頼みのようだった。
優也と麻友は互いに顔を見合わせ、彼女の覚悟を感じ取った。
「わかった…約束します。」
優也は力強くうなずいた。
「絶対に太一先生に伝える。だから、無事でいてください。」
「ありがとう…」
貴子は優しい微笑みを見せたが、その目には涙が滲んでいた。
「さあ、行きなさい!時間がないわ!」

躊躇しながらも、優也と麻友は貴子の元を離れ、公園の茂みの中に身を隠した。
二人はそのまま様子をうかがい、貴子が黒服に取り囲まれるのを見て、胸が締めつけられるような思いだった。
「優也、行こうよ…」
麻友が声を震わせながら囁いた。
「でも、貴子ねぇが…」
優也は歯を食いしばり、拳を握りしめた。
しかし、貴子の言葉が彼の耳に蘇る。
「太一に伝えて、それだけが今の私の望みよ」
優也は深呼吸をし、覚悟を決めたようにうなずいた。
「麻友、頼む、先生に伝えてくれ。
俺はここで貴子さんの様子を見張る。
彼女がどうなるか、見届ける。」
「優也…」
麻友は悲しげな表情で優也を見つめた。
「絶対に無事でいてね。約束だよ」
「もちろんだ」
優也は微笑み、麻友の肩を優しく叩いた。
「君も気をつけて。
急いで先生のところに行ってくれ。」

麻友は涙をぬぐい、頷くと、公園の茂みを抜けて駆け出した。
彼女の小さな背中は、どこか不安げに震えていたが、彼女は一度も振り返らず、公園を飛び出していった。
優也は茂みの陰から貴子の方を見つめ、彼女が黒服たちに拘束される様子を見届けた。
貴子は痛みで顔を歪めながらも、毅然とした態度を崩さず、小南に向かって何かを言っているようだった。
しかし、その言葉は遠すぎて、優也には聞こえなかった。
その時、小南が冷たい笑みを浮かべ、何か指示を出すと、黒服たちは貴子を連れてその場を去っていった。
優也は心の中で祈りながら、彼らが去るのを見届けた。

一方、麻友は公園を飛び出し、もうすぐ来るであろう駅に向かって走り続けた。
息が切れるほど全力で走った彼女は、駅前でようやく足を止めた。
息を整える暇もなく、彼女の目に入ったのは、駅前の大きなモニターでニュースを見ている太一の姿だった。
「太一先生!」
麻友は叫びながら駆け寄った。
太一は驚いて振り返り、麻友の姿を見て目を見開いた。
「君は…神宮寺さんだね?
どうしたんだ!?」
「貴子ねぇが…、貴子ねぇが捕まったんです!」
麻友は息を切らしながら、泣きそうな声で説明を続けた。
「小南教頭が黒服たちを連れて来てみんなを小さな光のような宇宙人に寄生させて、助けようとした私たちを追いかけて、彼女を連れて行ったんです!」
太一の表情が一変し、険しい顔つきになる。
「少し落ち着いて、分かるように話してくれないか?
大まかな情報としては、丁度今もニュースでやっていたんだ。
公園でテロがあったって…」
麻友は軽く頷くと、今度はゆっくりと事の顛末を話し始めた。

「なんだって…?
それは本当なのか?」
麻友は涙をぬぐい、力強くうなずいた。
「はい、優也も公園に残って、貴子ねぇの様子を見てます。
先生、どうか助けてください!」
太一はしばらく考え込んだ後、深く息を吸い込み、決意を固めたようにうなずいた。
「分かった。
君はここで待っていて、俺が戻るまで絶対に動かないでくれ」
「はい…」
麻友は不安げに頷いた。
太一は彼女の頭を軽く撫でると、駅から駆け出し、公園の方へと走っていった。
麻友はその背中を見つめながら、ただ祈ることしかできなかった。
彼女の胸には、希望と不安が入り混じっていた。
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