元ヤン女子、婚活はじめました ~結婚って魂のぶつけ合いだよね!

naomikoryo

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番外編②「川原家へ、まいります」

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「……絶対、茶室で正座させられるやつじゃん」

「いやさすがに今日は茶室じゃないって」

「畳の匂いだけで心折れそうなんだけど」

「だから落ち着けってば。俺の実家、そんな武家屋敷みたいじゃないし」

そう言いながらも、川原本人もどこか顔が引きつっている。
そう、本日ついに――
元ヤン女子、大庭ひかり、川原家へご挨拶である。

川原家は、郊外の落ち着いた住宅地に建つ和風モダンな一軒家。
敷地内には小さな茶室と庭があり、玄関にある竹垣と石灯籠からすでに圧が強い。

「……これ、実家ってより旅館じゃね?」

「ほら、もうその発言が怖い」

インターホンを押すと、出てきたのはきっちりした和装姿の女性。

「はじめまして。川原翔太の母でございます。ようこそ、お越しくださいました」

「ど……どうも……!」

背筋が勝手に伸びた。
この威圧感、まるで警察面談のとき(※黒歴史)みたいだ。

この方が、川原家のお義母様=川原久子(かわはら・ひさこ)。

代々茶道を継いできた家の主婦であり、現在も教室を開く“現役の正座魔女”。
その凛とした姿勢と完璧な所作、どこをとっても“気を抜いたらしばかれそう”。

「さ、どうぞお上がりなさいませ。粗茶ですが」

「粗茶……ってほんとに出てくるんだ……」

「ひかり、声に出てる」

リビングはシンプルな和洋折衷。
すでに居間に通されていたのは、川原の父・川原貞一(ていいち)。
元・地方役所の職員、見た目は昔の学級委員長をそのまま拡大したような人。

「翔太、よく連れてきたなぁ……ひかりさんだね。うん、いい、すごく……いい」

「お、お父さん、にやけすぎ……」

「いやな、あの子ら(孫たち)見てたらさ、また増えるのかな~って……いや、あ、別に、急げって意味じゃないよ!?でも、いやあ……あはは」

めちゃくちゃ顔ゆるんでる。

そして。
奥の部屋から、ふすまがスッと開く。

「こんにちは……どうぞ、よろしくお願いします……」

現れたのは、川原の兄の嫁、川原真理子さん。

しっかり者で和服がよく似合う上品な女性――なのだが、
その目の下にはっきりとわかる**“疲労”の影**。

「お義母様のお茶会の準備で、ちょっとバタバタしてまして……すみません、こんな格好で」

「いやいや!全然!すごく綺麗です!」

「ありがとうございます……ひかりさんって……話しやすいですね……」

そう言った後の「はぁ……」があまりにリアルすぎて、
お茶の世界、想像以上に過酷なのだと私は悟った。

緊張の中、食卓へ。

お義母様の手料理が並ぶ。

「ひかりさん、お箸の持ち方は……あっ、綺麗ですね。よかった」

「ほっ……あ、いえ、ありがとうございます」

「お茶の基本も、所作の美しさから入るんですよ」

「そ、そうですよね……!所作、大事……」

「もしご興味があれば、いつでも教室にいらしてくださいな」

(うわ出た!!勧誘きた!!!)

横で真理子さんがそっと目をそらしていたのを、私は見逃さなかった。

途中、子どもたち(川原の兄の子どもたち)がリビングを駆け回る。

「ばーば!だっこー!」

「うふふ、やんちゃねぇ。はい、ばーばは忙しいけど特別よ」

「じーじ、おなかすいたー!」

「おお、なんでも食え、うちのご飯はうまいぞ~!」

父・貞一、孫に甘すぎ問題勃発。

その様子を見ながら、私は思った。

この家も、ちゃんと家族なんだ。
“きちんと”してるけど、“息ができない”ほどじゃない。
ちゃんと笑いがある。

そして、川原の手が、そっと私の膝に触れた。

「……大丈夫か?」

小声でそう言った彼に、私はこっそりガッツポーズ。

「舐めんな。あたしを誰だと思ってんの。元ヤンだぞ」

帰り道。

「……なんか、疲れたけど面白かったな」

「だろ?わりと濃いだろ、うちの家族」

「濃いってレベルじゃねぇよ」

「ちなみに兄貴は“真理子に怒られたら死ぬ”ってよく言ってる」

「なんかわかる……あたしもあの義姉さんと友達になりたい」

「お茶会で共闘して?」

「“茶道サバイバル2025”。やったるわ」

川原が笑った。

そして、つぶやいた。

「……こうやって、家族になっていくんだな」

私は、少しだけ照れながら返した。

「うん。なんか、ちょっと実感湧いたわ。
“私たちのこと”だけじゃなくて、
“家族のこと”も、ちゃんと考えてくんだなって」

彼は、うなずいた。

「でもな、俺の一番の味方は、お前だって決めてるから」

「……くっさ!」

「言わせたのお前だろ!」

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