元ヤン女子、婚活はじめました ~結婚って魂のぶつけ合いだよね!

naomikoryo

文字の大きさ
23 / 24

番外編③「温泉旅行と露天風呂と震える元ヤン」

しおりを挟む
「あー!テンション上がるわぁ!旅館ってだけでテンション上がるわぁ!!」

宿に着いて10分。
私、大庭ひかり(元ヤン・現在婚約者)、テンションMAX。

チェックインしてすぐ、部屋にある露天風呂を見てからというもの、興奮が止まらない。

「見ろよ翔太!この檜!この湯気!この解放感!!すごくね!?マジすごくね!?」

「いやあの……それ昨日から10回くらい聞いてる」

「いいからほら!とっとと風呂入ろうぜ!せっかくだし!部屋風呂だし!」

川原翔太、彼氏(婚約者)はというと、
その私のテンションに若干押され気味だった。

「え、ちょ、いきなり一緒に?」

「は?何いってんの、部屋風呂ってそういうもんでしょ。カップルだぜ、カ・ッ・プ・ル」

「いや、もちろん俺は全然いいんだけど……てか、ひかりのほうがさ」

「え、なに。びびってんの?男子たるもの“露天風呂で彼女と混浴”とか夢見ないんすか?」

「うわ~急に強キャラ感出してきたな~~……」

私のテンションが高すぎるせいで、翔太はむしろ引き気味。
でも、私は今日という日に燃えていた。

理由?――この人と、ちゃんと“恋人”になりたいって思ってるから。

「じゃあ、準備するわ。タオル取ってくる!」

そう言って脱衣所へ駆け込んだ私は、
扉を閉めた瞬間、ひとりで震えていた。

「……しぬ……まじでしぬ……あたし、どうするん……」

実は私――

未経験なのである。

そう、元ヤンだの婚活女子だの言われてきたが、
いろいろあってタイミングを逃し、
いまに至るまで、恋愛的に“本番”を踏んだことがない。

なのに今、自分から風呂に誘った。混浴である。しかも檜。完全に高級旅館ムード。
冷静に考えて、どう考えても初手でラスボス戦突入である。

「いやでも、言っちゃったし……今さら“やっぱ無理”とか無理じゃん……!でも怖いじゃん……ってか緊張で胃がヤバい……」

鏡の前でひとり葛藤していたら、
ドアの向こうから翔太の声。

「おーい、ひかり?準備できてる?……もしかして本気で寝た?」

「ねてねーよ!」

どうにかバスローブを羽織り、風呂場に向かう。
湯気の中、翔太はすでに肩まで浸かっていて、軽く手を振ってきた。

「よっ」

「よっじゃねぇよ……なんでそんな余裕あんの……」

「なんでって、風呂だから……」

私は、そろ~りと縁に腰を下ろす。

(いける……いけるいけるいける……これは文化的入浴行為……健康のため……交際関係の発展のため……!)

「……ひかり?」

「なに……」

「いや、さっきからガタガタ震えてるけど、寒いの?」

「ちがうわ!!」

「じゃあなに」

「……あたし、さ……」

もごもご言いながら、ついに口にした。

「……未経験、なの……」

翔太が目を丸くした。

「……マジ?」

「うん……だからって、なんかその……ひくとかは、なしで……!」

「……ちょ、待って、俺めっちゃ感動してんだけど今」

「は?」

翔太はお湯から出てきて、バスタオルを肩にかけながらこっちに寄ってきた。

「いや、俺さ。
ひかりが今までどう生きてきたかとか、
元ヤンだったとか、婚活で地雷引きまくってきたとか、
そういうの、全部わかった上で付き合ってるじゃん?」

「うん」

「でも今日さ、“ちゃんと好きでいてくれてる”って、やっと実感したんだよ」

「……なにそれ」

「こんなに緊張してて、怖くて、それでも俺の前で震えてくれるって、
信じてくれてるってことじゃん?」

私は思わず、目をそらした。

「うるさいな……」

翔太は、バスタオルを私の肩にかけてくれた。

「じゃあ今日はさ、風呂入るだけにしよ。
……ふたりで、ただ湯気の中で喋ってたい」

「……はぁ?それ、超キザじゃん」

「おまえが最初に誘ったんだろが!」

ふたりで笑ったあと、
私はそっと翔太の隣に並んで湯船に足を入れた。

熱めの湯に足を沈めながら、肩を預ける。

「……でも、ありがと」

「何が?」

「待ってくれて。
笑わないでくれて。
そういうとこ、ずるいくらい、あんたのこと好きになるわ」

翔太は、湯気の向こうで、
少しだけ顔を赤くして、言った。

「……俺も、そういうとこが好きなんだよ」

部屋に戻ったあと。

私は布団にくるまりながら、ぽつりと言った。

「……でも、次はちゃんと覚悟しとけよな」

「……マジで?いつ?」

「気分と月によるわ」

「え、月!?月の満ち欠けとか?」

「違ぇよバカ!」

また笑った。

きっと、こうして
ひとつずつ、大人になっていくんだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...