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第54話『学園の異変』【陰謀と策謀の王都編⑤】
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翌朝の学園は、いつもよりざわついていた。
校庭には夏の名残を抱いた風が吹き抜けていたが、その心地よさを味わう余裕は、生徒たちにも教師たちにもなかった。
「聞いたか? カイ先生が……」
「評議会で“追放”が検討されてるって……」
「でも先生の授業がなかったら、私たち魔法まともに使えないよ!」
ざわめきが渡り廊下を駆け巡り、各教室へと流れ込んでいく。
黒板の前に立ったカイは、その声を耳にしながら、いつも通りチョークを手に取った。
「はい。今日も授業や。噂話は噂でしかない。黒板に書いた式だけが確かなもんや。」
生徒たちは顔を見合わせ、不安げな目をしながらもノートを開いた。
だが、その日の午後。
学園全体に告知が回った。
――「本日放課後、臨時の教員評議会を開く。議題はクロス臨時教師の任用について。」
瞬間、校舎全体にざわめきが広がった。
◆◇◆
放課後。
大講堂に集められた教師たち。
その背後の傍聴席には、珍しく多くの生徒の姿もあった。
議長の老教師が杖を鳴らし、低い声で開会を告げる。
「議題は――カイ・クロス殿の任用継続の是非について。」
すぐに、一部の教師たちが声を上げた。
「カイ・クロス殿は優秀だ。しかし、外の噂がひどすぎる。」
「“異邦人”という出自、公爵家との近しさ。学園が政争に巻き込まれては困る。」
「彼を教師から外せば、波風は立たぬ。」
重苦しい声が次々と飛ぶ。
そのとき。
傍聴席からひとりの生徒が立ち上がった。
「待ってください!」
少女の声が講堂に響く。
カイの授業で初めて魔法を使えるようになった生徒だった。
「先生がいなければ、私は一生、魔法が使えなかったかもしれません! 先生が教えてくれたから、私は初めて自分を誇れたんです!」
続いて、別の生徒も立ち上がる。
「俺もだ! 先生は僕たちに“できる理由”を教えてくれた! 追い出すなんて絶対におかしい!」
次々と立ち上がる生徒たち。
やがて傍聴席全体がざわめき、声が重なり合う。
「カイ先生を追い出すなら、私たちも学園を辞めます!」
「先生の授業がなければ意味がない!」
「クロス組は全員、先生と一緒にいます!」
講堂は騒然となった。
一部の教師は目を丸くし、別の教師は顔をしかめる。
議長が杖で床を鳴らすが、熱を帯びた生徒たちの声は止まらない。
その中心で、カイは教壇の横に立ち、ただ静かにその様子を見守っていた。
胸の奥がじんと熱くなり、視界の端が少しだけ滲む。
(……ワイ、守られてばっかやなぁ。)
(ほんまは、ワイが守る立場やのに。)
それでも、生徒たちの声は確かに彼を支えていた。
◆◇◆
やがて、学園長が立ち上がった。
「諸君。見よ。これが彼の授業の成果だ。――教え子がここまで声を上げる教師を、私は追放すべきだとは思わない。」
老いた声は力強く講堂に響いた。
「クロス殿の任用は、継続する。むしろ正式な任用を検討すべきだ。」
生徒たちから大きな拍手が湧き上がる。
教師たちの一部も頷き、反対派は押し黙った。
評議会が終わり、講堂を出たところでルーティアが駆け寄ってきた。
蒼い瞳に強い光を宿しながら、にこりと笑う。
「見ましたでしょう、カイ。あなたの居場所は、もう揺るぎませんわ。」
「……ああ。せやけどな。」
カイは頭をかき、苦笑を浮かべた。
「なんやワイ、また守られてもうた気ぃする。」
「いいじゃありませんか。守られる旦那様も、悪くありませんわよ。」
そう言って彼女は、当然のように腕に絡みついた。
生徒たちの笑い声と「先生ー!」という呼び声が、夕暮れの学園にこだました。
校庭には夏の名残を抱いた風が吹き抜けていたが、その心地よさを味わう余裕は、生徒たちにも教師たちにもなかった。
「聞いたか? カイ先生が……」
「評議会で“追放”が検討されてるって……」
「でも先生の授業がなかったら、私たち魔法まともに使えないよ!」
ざわめきが渡り廊下を駆け巡り、各教室へと流れ込んでいく。
黒板の前に立ったカイは、その声を耳にしながら、いつも通りチョークを手に取った。
「はい。今日も授業や。噂話は噂でしかない。黒板に書いた式だけが確かなもんや。」
生徒たちは顔を見合わせ、不安げな目をしながらもノートを開いた。
だが、その日の午後。
学園全体に告知が回った。
――「本日放課後、臨時の教員評議会を開く。議題はクロス臨時教師の任用について。」
瞬間、校舎全体にざわめきが広がった。
◆◇◆
放課後。
大講堂に集められた教師たち。
その背後の傍聴席には、珍しく多くの生徒の姿もあった。
議長の老教師が杖を鳴らし、低い声で開会を告げる。
「議題は――カイ・クロス殿の任用継続の是非について。」
すぐに、一部の教師たちが声を上げた。
「カイ・クロス殿は優秀だ。しかし、外の噂がひどすぎる。」
「“異邦人”という出自、公爵家との近しさ。学園が政争に巻き込まれては困る。」
「彼を教師から外せば、波風は立たぬ。」
重苦しい声が次々と飛ぶ。
そのとき。
傍聴席からひとりの生徒が立ち上がった。
「待ってください!」
少女の声が講堂に響く。
カイの授業で初めて魔法を使えるようになった生徒だった。
「先生がいなければ、私は一生、魔法が使えなかったかもしれません! 先生が教えてくれたから、私は初めて自分を誇れたんです!」
続いて、別の生徒も立ち上がる。
「俺もだ! 先生は僕たちに“できる理由”を教えてくれた! 追い出すなんて絶対におかしい!」
次々と立ち上がる生徒たち。
やがて傍聴席全体がざわめき、声が重なり合う。
「カイ先生を追い出すなら、私たちも学園を辞めます!」
「先生の授業がなければ意味がない!」
「クロス組は全員、先生と一緒にいます!」
講堂は騒然となった。
一部の教師は目を丸くし、別の教師は顔をしかめる。
議長が杖で床を鳴らすが、熱を帯びた生徒たちの声は止まらない。
その中心で、カイは教壇の横に立ち、ただ静かにその様子を見守っていた。
胸の奥がじんと熱くなり、視界の端が少しだけ滲む。
(……ワイ、守られてばっかやなぁ。)
(ほんまは、ワイが守る立場やのに。)
それでも、生徒たちの声は確かに彼を支えていた。
◆◇◆
やがて、学園長が立ち上がった。
「諸君。見よ。これが彼の授業の成果だ。――教え子がここまで声を上げる教師を、私は追放すべきだとは思わない。」
老いた声は力強く講堂に響いた。
「クロス殿の任用は、継続する。むしろ正式な任用を検討すべきだ。」
生徒たちから大きな拍手が湧き上がる。
教師たちの一部も頷き、反対派は押し黙った。
評議会が終わり、講堂を出たところでルーティアが駆け寄ってきた。
蒼い瞳に強い光を宿しながら、にこりと笑う。
「見ましたでしょう、カイ。あなたの居場所は、もう揺るぎませんわ。」
「……ああ。せやけどな。」
カイは頭をかき、苦笑を浮かべた。
「なんやワイ、また守られてもうた気ぃする。」
「いいじゃありませんか。守られる旦那様も、悪くありませんわよ。」
そう言って彼女は、当然のように腕に絡みついた。
生徒たちの笑い声と「先生ー!」という呼び声が、夕暮れの学園にこだました。
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