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第69話『共闘の刃』【魔族姫編⑨】
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その日の放課後。
西日が校庭を赤く染めるころ、クロス組の一年の一人――快活な青年マルクの姿が見えなくなった。
授業のあと、仲間と一緒に帰るはずだったが、ふいに「ちょっと呼ばれた」と言い残して姿を消したのだ。
「マルクが……帰ってこない?」
報告を受けたルーティアの顔がきゅっと引き締まる。
リリシアも横に立ち、紫紺の瞳を細めた。
「これは……普通のいたずらではありません。」
間もなく、学園の裏手に怪しい連中が出入りしているという情報が舞い込んだ。
黒い外套に仮面をつけた一団――陰謀派閥の手の者だ。
標的は明らか。噂を利用して、一年の誰かを攫い、証拠に仕立てようとしている。
「行きますわ。」
ルーティアは即座に立ち上がった。
「放っておいたら、クロス組全体が危険に晒されます。」
「私も一緒に。」
リリシアがためらいなく言う。
「仲間を見捨てるなど、あってはなりません。」
「二人とも、単独行動は……!」
制止しかけたカイの言葉を、二人の背中は振り返らずに切り裂いた。
「先生は――信じていてください。」
声だけを残して、夜の路地へ駆けていった。
◆◇◆
裏路地の奥。
マルクは縄で縛られ、地面に座らされていた。
周りには仮面の男たちが七、八人。
「やはりな。お前らは怪しい。人の形をしていても……」
「証拠を掴めば、クロス組は潰せる。」
その時、炎の光が闇を裂いた。
薔薇の花弁のように広がる紅の剣。
「そこまでですわ!」
ルーティアが飛び込み、剣を振るう。
仮面の男たちの武器が弾き飛ばされ、火花が散った。
同時に、風が唸りをあげて走る。
リリシアの剣が疾風を纏い、敵の動きを絡め取る。
砂埃とともに視界を奪われた男たちは、次々に膝を折った。
「な、なんだこの力は!」
「二人……だけで我らを……!」
「マルク!」
ルーティアが縄を断ち切る。
青年の目に涙が浮かぶ。
「すみません、僕……!」
「謝らなくていい。悪いのは、こんなことを仕掛けた奴らですわ。」
「立てますか。」
リリシアが手を差し伸べ、マルクを支え起こした。
その瞳はやさしく、それでいて揺るぎない光を宿していた。
敵の残党が二人、必死に立ち上がり剣を振りかざす。
しかし、ルーティアとリリシアは迷いなく動いた。
炎と風が交差し、二本の刃を一瞬で無力化する。
背中合わせに立った二人の姿に、敵は恐れをなして後ずさった。
「こ、こんなはずでは……!」
「退け!」
仮面の一団は蜘蛛の子を散らすように闇へ消えていった。
静寂の中。
ルーティアは大きく息を吐き、剣を下ろす。
「……助け合うなんて、思いもしませんでしたわ。」
「私も。」
リリシアは髪をかき上げ、微笑む。
「けれど――悪くありませんね。」
「……ええ。」
二人の視線が交わり、一瞬だけ柔らかな笑みが重なった。
そこへ遅れて駆けつけたカイが姿を現す。
「お前ら……勝手に飛び出して、心臓止まるか思たわ。」
怒鳴る声には、安堵がにじんでいる。
「ごめんなさい、先生。でも……」
「旦那様。無事に仲間を取り戻しましたわ。」
マルクが頭を下げる。
「先生、先輩たちが……僕を守ってくれました。」
カイは頭をかき、深く息を吐いた。
「……アホども。けど、ようやった。次は報告してから走れや。」
「はい!」
三人の声が揃い、夜の路地に力強く響いた。
西日が校庭を赤く染めるころ、クロス組の一年の一人――快活な青年マルクの姿が見えなくなった。
授業のあと、仲間と一緒に帰るはずだったが、ふいに「ちょっと呼ばれた」と言い残して姿を消したのだ。
「マルクが……帰ってこない?」
報告を受けたルーティアの顔がきゅっと引き締まる。
リリシアも横に立ち、紫紺の瞳を細めた。
「これは……普通のいたずらではありません。」
間もなく、学園の裏手に怪しい連中が出入りしているという情報が舞い込んだ。
黒い外套に仮面をつけた一団――陰謀派閥の手の者だ。
標的は明らか。噂を利用して、一年の誰かを攫い、証拠に仕立てようとしている。
「行きますわ。」
ルーティアは即座に立ち上がった。
「放っておいたら、クロス組全体が危険に晒されます。」
「私も一緒に。」
リリシアがためらいなく言う。
「仲間を見捨てるなど、あってはなりません。」
「二人とも、単独行動は……!」
制止しかけたカイの言葉を、二人の背中は振り返らずに切り裂いた。
「先生は――信じていてください。」
声だけを残して、夜の路地へ駆けていった。
◆◇◆
裏路地の奥。
マルクは縄で縛られ、地面に座らされていた。
周りには仮面の男たちが七、八人。
「やはりな。お前らは怪しい。人の形をしていても……」
「証拠を掴めば、クロス組は潰せる。」
その時、炎の光が闇を裂いた。
薔薇の花弁のように広がる紅の剣。
「そこまでですわ!」
ルーティアが飛び込み、剣を振るう。
仮面の男たちの武器が弾き飛ばされ、火花が散った。
同時に、風が唸りをあげて走る。
リリシアの剣が疾風を纏い、敵の動きを絡め取る。
砂埃とともに視界を奪われた男たちは、次々に膝を折った。
「な、なんだこの力は!」
「二人……だけで我らを……!」
「マルク!」
ルーティアが縄を断ち切る。
青年の目に涙が浮かぶ。
「すみません、僕……!」
「謝らなくていい。悪いのは、こんなことを仕掛けた奴らですわ。」
「立てますか。」
リリシアが手を差し伸べ、マルクを支え起こした。
その瞳はやさしく、それでいて揺るぎない光を宿していた。
敵の残党が二人、必死に立ち上がり剣を振りかざす。
しかし、ルーティアとリリシアは迷いなく動いた。
炎と風が交差し、二本の刃を一瞬で無力化する。
背中合わせに立った二人の姿に、敵は恐れをなして後ずさった。
「こ、こんなはずでは……!」
「退け!」
仮面の一団は蜘蛛の子を散らすように闇へ消えていった。
静寂の中。
ルーティアは大きく息を吐き、剣を下ろす。
「……助け合うなんて、思いもしませんでしたわ。」
「私も。」
リリシアは髪をかき上げ、微笑む。
「けれど――悪くありませんね。」
「……ええ。」
二人の視線が交わり、一瞬だけ柔らかな笑みが重なった。
そこへ遅れて駆けつけたカイが姿を現す。
「お前ら……勝手に飛び出して、心臓止まるか思たわ。」
怒鳴る声には、安堵がにじんでいる。
「ごめんなさい、先生。でも……」
「旦那様。無事に仲間を取り戻しましたわ。」
マルクが頭を下げる。
「先生、先輩たちが……僕を守ってくれました。」
カイは頭をかき、深く息を吐いた。
「……アホども。けど、ようやった。次は報告してから走れや。」
「はい!」
三人の声が揃い、夜の路地に力強く響いた。
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