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終わりし世界

一寸先は闇

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ギルスタッド一行は彦山へ着いた。彦山を登り、中腹に来た時おじいちゃんがいた。似つかわしくない不思議な格好だった。ミオや五十嵐咲良はその格好を登山客が装備する格好らしい。その老人は、声かけてきた。降りるまで、あとどのくらいかな?と、言ってくるがそれを何度も繰り返す。最初はただのボケが始まったとしか思わなかったが、同じ人が聞いては降りたかと思えば消え、また現れて消えを繰り返したものだからそれがこの世のものでは無いと気づいた。五十嵐咲良は、死んだことに気づかず未だにさまよってるのだろうな。と、呟いた。
あぁいう危害を加えてこない霊もいるんだよ。大抵、悪霊や地縛霊などのタチの悪い霊は生前酷い目にあった者がなりやすい。だが、中には特殊な理由でなることもあるんだ。例をあげるとするなら、事故とか特定の人物によるものなのか。実はな、昔はそんなことは言われてなかったのだが、どっかの誰かが意図して相手を地縛霊や悪霊、怨霊にすると言う説を唱えてな。それ以来、その説も浸透したわけだ。そうしてると、老婆が今度は現れた。老婆は、お前さん方何しに来た。ここは、危険じゃぞ。霊山だからの。と言ってきた。そうすると、五十嵐咲良が俺だよ。親父。
聞きたいことがあるんだ。と言ったら、その老婆はそうかそうか。ならばこっちに来るのじゃ。と言ってきた。そして案内されたのは洞窟。洞窟をくぐるとログハウスのような家が出てきた。ログハウスの扉が開いて、娘よ。久々だな。とやせ細ったおじさんがいた。そんな極端なおじいちゃんでは無いものの髭も髪も長くパッと見おじいちゃんにしか見えなかった。だが、声はまだ50代くらい。
と、男はお主がギルスタッドと言う異世界から来た男じゃな。風が噂しとったぞ。後、わしが知っとるのはお主にはアトランティスの後継者であるという事。確か、お主の妻は元アトランティス帝国の姫君メルティナの末裔じゃな。
お主が聞きたいこと聞こうかの。まぁ、予測はつくが。と言ってきた。ギルスタッドは、折り入って聞きたいことがあってな。ミヤギユウキと言う者について知りたい。彼は一体何者だ?と聞いた。
男は、ミヤギユウキか。久しぶりに聞く名前だ。かつて、この地球が栄えていた頃のこと。そいつは、その栄えていた世界を哀れんだ。便利になり、人間は愚かになっていくとその男は思った。だが、それと同時に嫉妬もしていた。彼は、不幸のどん底にいたという。どんなに便利だろうが、彼にとっては全てが醜く見えていた。心に余裕がなかったのだ。次第に壊れていった。彼は、誰ふり構わず不幸に陥れる事に快感を覚えていった。最初は孤児だったある少年を引き取った里親がターゲット。
里親は、いわばエリート中のエリート。父親はそろそろ大蔵省の大臣になれると喜んだ頃だ。その孤児だった少年とは何度か遊んだこともあったミヤギユウキは取られたと激昂し、里親を殺害。ましてや、殺された母親は女優と来た。当時、こぞってニュースとして報道もされた。だが、犯人の特定が出来なかった。その犯人を巡って論争も起き、謎多き事件として知られた。何故、犯人としてミヤギユウキが出なかったのか、それはわかるか?実はな、殺された父親は多くの人に恨まれてる可能性があってな。
だから、怨恨の線で警察も父親絡みの事件として捜査されて、孤児だった男の子絡みとは誰も予想してなかったのだ。割と直ぐに、孤児だった二人の子供絡みとして捜査を切り替えたのだが、実を言うと捜査は困難を極めたのだ。その捜査に、メスが入ったのだ。
担当した刑事が汚職の噂があって、汚職を理由に結局捜査から外され、その後自殺。だが、その自殺もかなり不可解な死に方でな。1部の人からは、彼は殺されたなんて言われてる。彼が持っていた遺書と名刺があったらしいのだが、名刺が誰のものかは未だに分かっておらず、名刺が誰のものか分からないのは書かれていた名前、カウンセラーや勤務先。全てが嘘だと分かったからなんだ。偽の名刺の存在が彼の自殺の不可解さを際立たせたのだ。
不可解な事件、事故はその後も色々起きてな。それと同時に妙な宗教団体が生まれてしまってな。その教祖だという男、そいつがミヤギユウキって奴なんだ。ミヤギユウキは霊力を高めて未練のある未成仏霊を喰らい、不老不死になると言うぶっ飛んだ目的を掲げ、それを信じる人達も増えてしまい、収拾がつかなくなったのだ。そして、ある日ミヤギユウキは失踪したというのだが、実際のところはどうだろうか。
人間の時代が終わる、終末の日に姿を突如として姿を現したのだ。そして、ミヤギユウキと言う男は不気味に笑いながら最後にこう言って自らを天に捧げた。それがいつもカース様の御心のままに。とな。そして、彼の体を取り巻いた赤い閃光がこの世をこんな風にしてしまったらしいのだ。風がそう話してるぞ。と、五十嵐咲良の父親は語った。あまりに途方もない話だった。
しかし、カースか。厄介な事になりそうだ。ライセル様はカースの暴走を止めるために、私をここへ?とギルスタッドは考えた。だが、屋敷で問いかけてきたあの女の言葉も気になる。宝石を見せ、これはアトランティスの心と言うらしいがこれを集めろと言ったのだ。その真意も知りたいのだ。それに、まだある。私は森で女の子に会った。私を知っているようだった。と、色々聞いて回った。と、突如すきま風が次第に人の姿になった。次第に、女の子になった。五十嵐咲良の父親はこれは、エアロ様。と、女の子の姿をしたそのエアロ様は私の事だな。久しいな。と顔を見せた。
ギルスタッドは、お主だったのか。まさか、エアリローゼ様がこちらの世界においでとは。と言うと、エアリローゼ様は、そちらこそ。驚いたよ。オルテガミスの者がいることが。オマケに、お主の様な武人が森で狩りをしていて。だが、何故こっちに来たのか分かっておらぬ様子だから説明しよう。お主が来たのは、ライセルの気まぐれだ。ライセルもおかしくなったな。あいつはいもしない亡霊に怯えている。神であるにもかかわらず、カースにびびりすぎだ。カース自体、実体のない神だ。
だから、ライセルにとって亡霊と変わらないのさ。カースは時に子どもの姿にもなる。老人や色んな姿に化けるときた。それは、だいぶ昔のこと。肉体を滅ぼされた今カースは何も出来まい。出来るとしたら、そのミヤギユウキと言う男じゃ。ミヤギユウキがどうやって力を得て、どうやってカースを復活させようとしてるのか全く読めない男だ。
やつの心を読もうにも深い闇にいるようで全く分からない。どこにいるのかも分からぬ。そう言えば、お前に幼い子供いたよな。と言ってきた。ギルスタッドは、エドワードの事か。それがどうしたと言うのだ。と、言うと、エアリローゼ様はなーに、心配するな。ちゃんと約束は守るぞ。彼は、オルテガミスを継ぐ王子にならなければならないからな。だが、ミヤギユウキが考えることは誰にも予測がつかない。警戒は怠るなよ。
そうだ。その剣は使い物にならない。置いてけ。代わりに、五十嵐総一郎が奉納していた剣を持っていけ。と、五十嵐咲良の父親は、祠に奉納していた剣を出して、ギルスタッドに手渡した。それは、ほんとに空気のように軽く鋭さもピカイチだった。と、エアリローゼ様が万が一復活なんてことも有り得ないことではないから、くれぐれも気をつけろよ。じゃあな。と、無邪気な笑い消えた。相変わらず、緊張感のないやつだ。と思いつつ、父親である総一郎に礼を言うぞ。御協力に感謝いたす。と、言った。
五十嵐総一郎は、まぁ、待て。実を言うとだな。ギルスタッドよ、その剣を完成させなければならぬのだ。そのアトランティスの心と言う宝石をその剣にはめ込む必要がある。と、言った。ギルスタッドは、アトランティスの心を剣に近づけると急にふたつが共鳴し合い脈打ち始めた。と、同時に男の声が頭の中に入ってきた。私が目覚める時、いかなる邪悪なものも両断する。と言う声。と、剣が変化した。細身の剣から、豪華な宝飾剣となった。五十嵐総一郎は、流石だ。アトランティス一族は面白い。こうも色々と起こるのだからな。どんなに、一寸先は闇でも、その剣なら光を与えられるだろう。だが、それで完成では無い。アトランティスの心は後5個ある。全部揃った時本当の姿を見せる。
集めつつ、ミヤギユウキの野望を打ち砕くのだ。まだ、やつは夢を叶えてない。だから、気をつけろ。そうだな。お風呂は入ってるか?ならば、生存者達が集まって出来た温泉施設がここより北にある。そこで、少しリフレッシュするといいだろう。と、言ってまた瞑想をするのであった。
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