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オルテガミスの黄昏

アルフィリオンの道標

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マレイボスの屋敷に向かうことになった3人。マレイボスの屋敷へと続く森は、妙に静かで動物の気配がしない。そして、日中なのに薄気味悪い空気が漂った。静寂の中、突然頭の中からなのか、声が響き渡った。誰だ。我が眠りを妨げるのは。と、声の主がそう言った。しかし、すぐに何かに気付いたのか。なるほど。坊主の連れか。それに、随分とまあ珍客がいるな。オーロラもいるのだろ?感じるぞ。それに、アルテミシアの気配もするな。凄い組み合わせだ。まぁ、来い。我が庭は迷いやすい。道を作っておくように言っておいた。我が屋敷へ来い。そういうと、近くにあった古い大樹の様な木が動き出しマゴルダグニア様が歓迎なさるとは。良かろう。道を開けよと言う声が響き渡った。


と、森が動き一つの道が見えた。このまま歩くと屋敷にたどり着く。行きなさい。そう言って眠りについた。そして、その道を進んだ。どうやら、薄気味悪さはまやかしだったのか。ちらほら、リスや鹿がいるのがわかった。ついさっきまでの薄気味悪さはなくなり神聖な森の中を歩いてる気持ちになった。ごろつきを寄せ付けない為だろう。歩いて、30分がたった頃ついに屋敷を発見した。マレイボスの屋敷は朽ちていてあまり原型を留めてなかった。かろうじて、正門だと思われるものがあった。打ち破られた正門のドアを潜り抜け、中に入った。朽ちたホールにはかつて住んでいた人の趣味なのか、沢山の肖像画が連なっていた。こんな朽ちながら肖像画は一つも朽ちておらず、綺麗なままだった。


アルジェリアがこの肖像画のどれかが地下への扉だったはず。と言いながら、手探りで入り口を探していた。そして、見つけた。その肖像画の絵にドアノブが不自然に描かれていて。押すとドアノブが絵から浮き出てきた。それを回すと肖像画のドアは動いた。そのまま地下へと向かった。階段降りた先に道が見えた。どれほど、歩いただろうか。無限に伸びるその道のせいで時間の感覚が麻痺してくる。と、アルジェリアが止まった。ここだ。そう言うと、良くきたな。頭に語りかけた声が目の前でその声がした。そして、暗い空間の中から顔が浮かび上がった。その顔は、続いてこう言った。なんだ。アルテミシアでは無いのか。アルジェリアだったな。お前の血はアルテミシアと似てるからな。アルテミシアは元気にしているのか?


そういうと、アルジェリアは曾祖母ならとっくに死んでいる。曾祖母のアルテミシアと私は曾祖母の若い頃にすごい似ていると良く言われてるからな。そう返すと、マゴルダグニアがそうか。そんなに長い期間眠ってたのか。すまないことを聞いたな。と、浮き出た顔は引っ込んだかと思いきや、アルジェリア達と同じサイズになってまた現れた。よく来たな。勇者の子よ。オーロラもよく来た。オーロラ殿に、アルジェリア。そうか。ついに時が来たか。我が使命を果たすときが。真実を語ろう。あの日、私は見たのだ。オーロラ殿と勇者が災厄を追い払った後のことだ。オーロラと勇者アルフィリオンの力は当時でも類まれなる絶大な力の持ち主だったのだ。それが、当時の権力者達の組織体、セブンヘッドドラゴンズにとって面白くなかったのだ。その1人は今も存命のはず。魔王ゴル・エデノアだ。彼だけが2人を闇に葬るのを反対した。しかし、他の6人、ラーズグリーズ卿、アーベスト卿、ルーガス卿、ハルスブルグ卿、ロッシュフォール卿、グリフォン卿が2人を歓迎する素振りをして、毒殺したのだ。


その事実を知った私だったのだが、何より、彼らの会話に奇妙な名前が出てきたのだ。それが、ミヤギユウキ。彼らはミヤギユウキという男をまるで神のようにユウキ様と言うのだから、とんでもないやつではあるのは確かだ。しかし、それ以上にそのユウキ様らしきものがオーロラ殿と勇者アルフィリオンの殺害を指示した可能性が高い。私も、奴らの手にかかってこんな羽目になっている。
だが、こうして、身を隠しながら生きていけてるのは、魔王ゴル・エデノア様のおかげだ。と、マゴルダグニアは語った。そして、マゴルダグニアはここからが、本題だ。と続けて言った。つい先程話した六人の者たちのことピンと来ないだろう。それもそのはず。彼らは私と魔王ゴル・エデノアを悪役とし、2人殺害の犯人にされたのだ。私が実行犯、魔王ゴル・エデノアが黒幕としてな。しかし、奴らの名前がこの世界から抹殺された。彼らにとって不本意な結果となっただろう。当時、彼らの事故死や自殺を勇者の呪いだと言って騒ぎ立てるもの達が多かった。そうだ。ラーズグリーズ卿は趣味だった舞台を見に行ってた時に、シャンデリアの下敷きにあって死んだのだ。今度はアーベスト卿もまた、鹿狩りの最中に落馬して死んだ。その次はルーガス卿が誘拐された愛娘の身代わりとなって殺された。

その話を聞いたハルスブルグ卿は、ルーガス卿の死を不審に思い、屋敷にこもったのだが、その屋敷から異臭のクレームが来て、心配したロッシュフォール卿が訪問し、寝室で首を吊ったハルスブルグ卿が見つかった。ロッシュフォール卿はあまりに度重なる悲劇を恐れ、私の元に来た。ロッシュフォール卿は完全に正気を失ってたよ。かなり脅えていた。俺なら何かを知っていると思ったのだろうな。同じ頃、グリフォン卿は失踪したと言う話を我が部下の動物達がどこからか聞きつけ、私の耳にも入った。ロッシュフォール卿は私の元に来てそんな経たないうちに、流行り病にかかり衰弱死したらしいのだ。残りはグリフォン卿だった。グリフォン卿に関する情報は非常に少なく私もよく知らないが、眉唾な話として伝えられてる話ではグリフォン卿は今も何処かで身を隠しながら生きてると言うもの。本当かは知らないが、だが、皆口を揃えて良く言ったものよ。

アルフィリオンの呪いだってな。だが、アルフィリオンがそんな事をするような奴ではないことは知っている。ゴル・エデノアもアルフィリオンの仕業ではなく、偶然が重なって起きてしまった事だってな。それでも、アルフィリオンの呪いだと騒ぐものは多かった。何故なら、彼らにとってアルフィリオンの存在は腐敗しきった権力者の集いセブンヘッドドラゴンズをどうにかしてくれると期待していたからだ。不条理な独裁時代を終わらせてくれる勇者アルフィリオンの存在がそれだけ大きかったのだ。国民にとってな。そして、オーロラ殿もまたアルフィリオンの理想の相棒として、慕われていた。そんな中私の元に、殺される前にアルフィリオンが来た時、一言だけ意味深な事言ったのだ。私はいずれ殺される。きっと、それは私に課せられた宿命なのだろう。贖う気はないさ。いずれ、この地に勇者が来る時まで。そう言ったんだよ。だから、俺は約束したさ。アルフィリオンよ。然るべき時、新たな勇者が現れたら私が色々特訓してやる。だから、私を頼れ。とな。オーロラ殿の導きこそがその印だとアルフィリオンは言った。そう言うことなのだろ?来たのは。オーロラよ。誰もいない空間に視線が行った。マゴルダグニアは、うむ。分かった。ならば、その子を預かろう。特訓はかなり厳しいだろうが、お主ならきっとやり遂げると信じてる。そう言った。更に続けてこう言った。アルジェリア殿、そういやライセルが私の元へ来た。ミヤギユウキという男の正体について尋ねに来たんだが、世は知らなくてな。世が知るのは、セブンヘッズドラゴンを結成させたと言うタナベという男くらい。それも、名前だけだ。タナベという男がセブンヘッズドラゴンを結成させた。何者か知らんが、不思議なくらいセブンヘッズドラゴンの7人と違いほとんど噂も情報も出てこない怪しいヤツであることは確かだ。

ただ、ロッシュフォール卿が凄い奇妙な話をしてたな。タナベ様はある崇高な目的の為にこの地と別の世界をあらゆる姿に変身して行き来してるという話をな。だから、今は別の世界にいてタナベ様は助けてくれそうにないって話をしてたのは覚えてる。お前は、タナベってやつを知ってるか?知ってれば、また来ると言ってたから、伝えておくが。とアルジェリアは、いや、私も知らないぞ。と言うと、マゴルダグニアは、そうか。分からぬか。やむを得ないな。と、言うとアルジェリアがそういや来た最大の目的はそれだけじゃないんだ。知ってるか?アイアンメイデンとローゼンメイデンの事。今、ランス殿が持ってるのだがそのひとつを。と起きたことを全部言うと、マゴルダグニアは随分と懐かしい名前だ。知ってるよ。アイアンメイデンとローゼンメイデンはそもそも別の世界の魔女だ。彼女達が未来を呪う為に作った剣だ。なんでも、その世界では魔女狩りと言うのが流行ったらしいんだ。結構社会問題にもなったりして、人間の愚かさが露呈するほどに魔女狩りは偏見と差別で行われた。2人はそうなることを予知していた。だから、2人は魔女狩りによって殺された女性や異教徒の人達の怨念を剣に封じ込めて作ったんだ。その剣の存在を隠そうとしたが結局2人も異教徒の魔女として火あぶりにされた。だが、それも見越して彼女達の強い意思がもうひとつの剣に入り込んだわけよ。
それで、完成したのがアイアンメイデンとローゼンメイデンだ。だが、実体のあるものは切れないなまくらな剣だ。だから、結局全くの使い物にならないと判断した異教徒の連中はアイアンメイデンとローゼンメイデンを捨てた。それを拾い、管理したのがエアリローゼだ。だが、エアリローゼは、そのふたつの剣が同じ場所にある事に身の危険を感じてな。それは、強い視線。突然訪れる寒気。まぁ、そういうことが起きてな。片一方の剣をこの世界に持ち込んだわけだ。二度とこのふたつの剣が交わらないように。だが、アルジェリアも分かっているだろうが、もし本当にマーリンがそう言ったなら、どこかのタイミングでランスは既に取り込まれてると思った方が早い。ローゼンメイデンがランス殿の手元から離れればもしくは。と考えこんだ。可能性は低いが正気に戻るかもしれないな。だが、万が一ギデオン殿を殺したことは思い出したら彼はぶっ壊れるかもな。ギデオンとランスは同じ施設出身の言わば幼なじみ。カリュール山脈は霊も沢山彷徨う地だ。行くならば、ランスとローゼンメイデンを切り離さないとカリュール山脈にいることが筒抜けになるかもしれぬ。ローゼンメイデンは本来普通の人間が持てる代物ではない。呪物だからな。だから、ローゼンメイデンをランスから奪うところから始めないといけない。そこでだ。私の体の一部で作ったこの布を使え。素手で触るのは危険だから、手をこの布で覆って触るように。そしたら、ローゼンメイデンは私の元に来る。私が厳重に保管するからな。いいか。ローゼンメイデンのような呪物は人を侵食させる可能性が高い。くれぐれも素手で触ろうとするな。そう言ったマゴルダグニアは、おっと。訪問者がまた来たようだと言った。そうすると、誰かが降りて来る音がするでは無いか。そして、姿を現した。なんと、魔王ゴル・エデノアだった。魔王ゴル・エデノアは、ん?先客か?ほほぅ、誰かと思えばアルジェリアではないか。久しいな。それに、子供か?後、ん?オーロラ殿もおられるとは。そうか。なるほど。じゃあ、マゴルがこの子を育てるのか。と全てを悟ったように言ってきた。何を思ったのか、魔王ゴル・エデノアは、もしや大人になれば使いこなせるかもしれん。見た目は悪いが剣だ。かなり錆びついてて使い物にならないように見えるが、みたところこれが本来の姿だ。かつて、アルフィリオンが使ったとされる剣だ。マゴル、よろしくな。そう、エデノアは言うとノアの頭に手を置いて撫でた。そのエデノア表情はノアにとって印象に残った。
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