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55 潜む潮流
しおりを挟む港では、クロタクが一艇の高速艇を、複数人でタイヤのついたキャリアに載せて陸地を移動させ、できるだけ破片や残骸の少ない場所から海に着水させていた。
せいぜい3人乗るのがやっとの小さな船で、大きい推進機が後部に設置されている。
ミクシアとディアルトが走りながら大きく手を振ると、それに気づいたクロタクは海面に浮く破片を避けながら港に船をゆっくりと近づけ、停船した。
「じゃあ行くぞ。乗ってくれ。」
クロタクが大きく手招きすると、ミクシアとディアルトがそれに飛び移る。
「運転までしていただけるのですね。ありがとうございます。」
ミクシアが礼をすると、すぐさま海面の瓦礫の散乱状況と、進むべき方向を確認する。
「どこに向かうか指示をくれ。趣味レベルだが、一通り操作はできる。」
クロタクがボタンをポチポチと慣れた手つきで操作すると、推進部が大きな音を出して進み出した。
「とりあえず、この先の瓦礫がない場所まで進んでください。」
「わかっていると思うが、この瓦礫の中を進むだけでも難しいからな。何かあったらごめんな。」
クロタクがゆっくりと丁寧に前方で操船しながら、さらに慎重に進んでいく。
その手さばきは外見に合った熟練した技巧で、破片のぎりぎり横を船が通り抜けていく。
ミクシアとディアルトが左右から長い棒で横たわる丸太を突っつき、進路を開き、前方に浮く漁業用の網を木の棒で引き上げながら進む。
その度に船が揺れてバランスを崩す。
戻っては進み、さらに迂回して進むと、ようやく普通に進める瓦礫のない海域に到達する。
クロタクは疲れた表情で、大きく安堵の息を吐いた。
「さあ、ここから先は大丈夫だ。自由に動けるぞ。」
「はい。」
ミクシアが応えると、目を瞑り神経を集中しているディアルトをじっと見つめる。
その険しい顔から、原石の場所を掴むのが難しいことが容易に想像できる。
「とりあえず、風の流れに逆らわずにゆっくりと、この方向へ進んでください。」
差し出されたのは、マスモがあらかじめ風向きや経過時間、潮流から算出したアンラの乗る潜水艇の予想地点。
何か予期せぬトラブルで操縦不能になった場合の想定だ。
「わかった。結構先だな。」
クロタクが地図と周囲の地形、持っていた方位磁石を確認し、進むべき方向を定める。
「はい。これが一番可能性の高い方法ですので。」
ディアルトはそのままじっと目を瞑って周囲を探った。
「ララが作った潜水艇には昼用と夜用の信号弾が設置されている。ララが朝に移動したということは、その昼用の信号弾を確認した可能性が高い。ララとアンラがうまく合流できているといいのだが。」
「え、じゃあ原石の力を感じなくてもどうにかなるかもしれないの?」
少しホッとして力を抜くディアルト。
「潜水艇にまだ信号弾が残っていれば、それを使ってくれるだろう。まあ、原石を使って合図をする可能性もある。どちらにしても潮に流されている前提で移動しながら様子を探ろう。少しの合図も見逃さないようにしていく。」
ディアルトとクロタクがうなずくと、三人で分担して晴れた海面をじっと眺めた。
波が動くたびに、高い位置、ちょうど真上にある太陽のギラギラが波に反射してキラキラと光り、目に痛い。
風が止み、うるさい波音が不気味なほど静かになる。
「ここらへんが、その地図の場所だな。」
クロタクが停船させる。近くには何もない。
「ありがとうございます。」
ミクシアが立ち上がり、大きく周囲を見回す。
ディアルトとクロタクも海面付近をじっと眺めるが、晴れた太陽の影響でキラキラ光る波が邪魔をして、見えにくい。
「何もなさそうだな。」
「そうですね。合図を送って、応答を待ってみます。」
ミクシアが小さな筒を取り出し、空に向けて導火線に火をつける。
シュルシュルっと音を立てて導火線に火が走ると、小さな破裂音と共に上空に一筋の白い線が描かれる。
雲一つない眩しい空では少し見えにくい。
黙ったまま周囲を注意深く見回し、何かが起こるのを待った。
しばらくそのまま時間が過ぎる。何も起きない。
「まあ、気付かなかったか、近くにいないか、応答できる材料がないかってところか。波に流された想定で移動をお願いします。」
「それはかまわんが、大丈夫か?」
「他に手がないですから。」
それから3回同じことを繰り返すが、結果は同じ。
徐々に太陽が傾き、オレンジ色の雲一つない空。
ただ時間が流れる。
心の底が重くなるようにイライラが襲う。
それでも緊張を切らさないように、じっと周囲を見つめ続けた。
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