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57 光の道標
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「ねえ、とりあえずそっちに行っていい? この潜水艇、大きな穴を応急処置で塞いでいるだけだから、そのうち沈むの。想定外の水圧にもさらされちゃったし。」
三人でも狭い船内に、ララが素早く乗り込むと船が大きく揺れた。
その後を追うように、アンラもミクシアたちの船へと移動する。
まだ潜水艇は、ミシミシと軋む音を立てながらも、かろうじて海面に浮いていた。
「……はぁ、やっと一息だ。」
アンラが両目を閉じて空を見上げると、大きく息を吐いた。
それからミクシア達に視線を戻し、改めて深く頭を下げる。
「救助、ありがとうございます。」
ぎゅうぎゅう詰めの船内。
「で、何があった? ……あ、先に修理しながら聞いていこう。」
器用にミクシアとララが潜水艇から必要な部品を外し、高速艇を補強していく。
その作業だけで、高い波にも耐えられる程度の安定を船は取り戻した。
「イルエスタの旗艦を、この潜水艇に備えていた弾丸で撃ち抜いたあと、何かに強く引っ張られて、この海域まで連れてこられました。」
アンラも手を動かしながら信じられない顔をして説明する。
「引っ張られた? イルエスタか? それとも大きな生き物か?」
ミクシアが本当かどうか疑いながら、色々手を動かし続ける。
「それが、なんというか。」
「なんというか?」
「レンに少し似てるんですが、もっと長くて、ぬるっとしてて別物なんですが。深青の竜だったと思います。」
アンラが大きく手を広げて説明する。
「竜? クジラとかイルカじゃなく?」
ミクシアも手を止める。その横でディアルトが目を大きくして息をのむ。
「今となっては自信がありません。海中でしたし、視界も良くなかったので。」
「竜か、レンの例もあるし、完全に否定はできんな。」
ミクシアが腕を組み、考え込む。
「推進機は修理できるか?」
クロタクが船尾を指差すと、ミクシアとララが破損箇所を急ぎながら診断する。
配線を入れ替え、パーツを交換し、削って調整し、別の部品と入れ替え二人の手は流れるように動き続けた。
しかし。
「無理だ。ここじゃ沈没だけ防ぐのが精一杯だ。動力は復旧できない。救助要請だ。」
「そうか。」
ミクシアが短く頷くと、クロタクが船に備え付けられていた緊急救助用の袋から信号弾を取り出し、夜空に向けて撃ち上げた。
音もなく、真っ白い照明弾が夜空に浮かび、長く滞空したあと、ゆっくり海に落ちていく。
先程ララが撃った信号よりも高度も光量も大きい。
「なかなか高性能だね。」
ララが残骸を受け取り、ナイフで削りながら技術を観察する。
「後は待つだけだ。おそらく救助は明朝だ。流されないよう固定して、夜が明けたらもう一度信号弾。回収してもらおう。」
その予測通り。
救助は夜明けと同時に到着した。
カランの大型軍艦が姿を見せ、波で揺れたララの潜水艇は、そのまま沈んだ。
「あー……沈んだ。もったいない……」
ララが恨めしそうに救助兵へ手を振る。
軍艦の右舷から縄梯子が降ろされ、ララ、ディアルト、クロタク、アンラ、ミクシアの順で上へと登る。
甲板の中央には兵士が整列していた。
クロタクが手を挙げて応じ、ミクシア達は頭を下げる。
「ご無事で何よりです。では、帰還します。」
艦長の号令とともに汽笛が響き、軍艦は動き出した。
瓦礫を押し分け進む様子は、どこか爽快ですらあった。
よく晴れた空。本来なら心地よい朝。
しかし濡れた服が冷え、疲労が身体に重く残る。
港に戻ると、宿泊所で着替え、食事が用意された。
「ミクシア、悪いが、この前の話の続きをしたい。」
ジーンとキーンが真剣な顔で声をかける。
「ん? 任せるって。俺らはそれに従う。行く当てもないし、船でも兵器でも農業でもなんでもするさ。」
「まあ、お前が『うん』と言えば全部動くところまで準備はできてる。」
「チャクミの作業員の生活が保証されるなら、何も文句はない。」
「それはもう約束済みだ。」
「じゃあ、それでいいよ。本当に任せる。」
「少し来てくれ。」
「わかった。」
ミクシアは二人に連れられて歩き出す。
「ここって、まさかずっと待ってたのか?」
苦笑しながら呟くミクシア。
案内された先はカランの王宮。
中へ入ると、円卓の十四人が疲れた顔で待っていた。
「いや俺、偉い人たちをずっと待たせるのって、すっげぇ罪深いことしてない?」
逃げようとするミクシアを、キーンとジーンが引き戻す。
「まあまあ。まず話を聞け。」
「わかったよ。」
そしてしばらくミクシアと円卓の十四人、そしてキーンとジーンとの話し合いが続いた。
三人でも狭い船内に、ララが素早く乗り込むと船が大きく揺れた。
その後を追うように、アンラもミクシアたちの船へと移動する。
まだ潜水艇は、ミシミシと軋む音を立てながらも、かろうじて海面に浮いていた。
「……はぁ、やっと一息だ。」
アンラが両目を閉じて空を見上げると、大きく息を吐いた。
それからミクシア達に視線を戻し、改めて深く頭を下げる。
「救助、ありがとうございます。」
ぎゅうぎゅう詰めの船内。
「で、何があった? ……あ、先に修理しながら聞いていこう。」
器用にミクシアとララが潜水艇から必要な部品を外し、高速艇を補強していく。
その作業だけで、高い波にも耐えられる程度の安定を船は取り戻した。
「イルエスタの旗艦を、この潜水艇に備えていた弾丸で撃ち抜いたあと、何かに強く引っ張られて、この海域まで連れてこられました。」
アンラも手を動かしながら信じられない顔をして説明する。
「引っ張られた? イルエスタか? それとも大きな生き物か?」
ミクシアが本当かどうか疑いながら、色々手を動かし続ける。
「それが、なんというか。」
「なんというか?」
「レンに少し似てるんですが、もっと長くて、ぬるっとしてて別物なんですが。深青の竜だったと思います。」
アンラが大きく手を広げて説明する。
「竜? クジラとかイルカじゃなく?」
ミクシアも手を止める。その横でディアルトが目を大きくして息をのむ。
「今となっては自信がありません。海中でしたし、視界も良くなかったので。」
「竜か、レンの例もあるし、完全に否定はできんな。」
ミクシアが腕を組み、考え込む。
「推進機は修理できるか?」
クロタクが船尾を指差すと、ミクシアとララが破損箇所を急ぎながら診断する。
配線を入れ替え、パーツを交換し、削って調整し、別の部品と入れ替え二人の手は流れるように動き続けた。
しかし。
「無理だ。ここじゃ沈没だけ防ぐのが精一杯だ。動力は復旧できない。救助要請だ。」
「そうか。」
ミクシアが短く頷くと、クロタクが船に備え付けられていた緊急救助用の袋から信号弾を取り出し、夜空に向けて撃ち上げた。
音もなく、真っ白い照明弾が夜空に浮かび、長く滞空したあと、ゆっくり海に落ちていく。
先程ララが撃った信号よりも高度も光量も大きい。
「なかなか高性能だね。」
ララが残骸を受け取り、ナイフで削りながら技術を観察する。
「後は待つだけだ。おそらく救助は明朝だ。流されないよう固定して、夜が明けたらもう一度信号弾。回収してもらおう。」
その予測通り。
救助は夜明けと同時に到着した。
カランの大型軍艦が姿を見せ、波で揺れたララの潜水艇は、そのまま沈んだ。
「あー……沈んだ。もったいない……」
ララが恨めしそうに救助兵へ手を振る。
軍艦の右舷から縄梯子が降ろされ、ララ、ディアルト、クロタク、アンラ、ミクシアの順で上へと登る。
甲板の中央には兵士が整列していた。
クロタクが手を挙げて応じ、ミクシア達は頭を下げる。
「ご無事で何よりです。では、帰還します。」
艦長の号令とともに汽笛が響き、軍艦は動き出した。
瓦礫を押し分け進む様子は、どこか爽快ですらあった。
よく晴れた空。本来なら心地よい朝。
しかし濡れた服が冷え、疲労が身体に重く残る。
港に戻ると、宿泊所で着替え、食事が用意された。
「ミクシア、悪いが、この前の話の続きをしたい。」
ジーンとキーンが真剣な顔で声をかける。
「ん? 任せるって。俺らはそれに従う。行く当てもないし、船でも兵器でも農業でもなんでもするさ。」
「まあ、お前が『うん』と言えば全部動くところまで準備はできてる。」
「チャクミの作業員の生活が保証されるなら、何も文句はない。」
「それはもう約束済みだ。」
「じゃあ、それでいいよ。本当に任せる。」
「少し来てくれ。」
「わかった。」
ミクシアは二人に連れられて歩き出す。
「ここって、まさかずっと待ってたのか?」
苦笑しながら呟くミクシア。
案内された先はカランの王宮。
中へ入ると、円卓の十四人が疲れた顔で待っていた。
「いや俺、偉い人たちをずっと待たせるのって、すっげぇ罪深いことしてない?」
逃げようとするミクシアを、キーンとジーンが引き戻す。
「まあまあ。まず話を聞け。」
「わかったよ。」
そしてしばらくミクシアと円卓の十四人、そしてキーンとジーンとの話し合いが続いた。
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