炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

文字の大きさ
60 / 62

57 光の道標

しおりを挟む
「ねえ、とりあえずそっちに行っていい? この潜水艇、大きな穴を応急処置で塞いでいるだけだから、そのうち沈むの。想定外の水圧にもさらされちゃったし。」

 三人でも狭い船内に、ララが素早く乗り込むと船が大きく揺れた。
 その後を追うように、アンラもミクシアたちの船へと移動する。
 まだ潜水艇は、ミシミシと軋む音を立てながらも、かろうじて海面に浮いていた。

「……はぁ、やっと一息だ。」

 アンラが両目を閉じて空を見上げると、大きく息を吐いた。
 それからミクシア達に視線を戻し、改めて深く頭を下げる。

「救助、ありがとうございます。」

 ぎゅうぎゅう詰めの船内。

「で、何があった? ……あ、先に修理しながら聞いていこう。」

 器用にミクシアとララが潜水艇から必要な部品を外し、高速艇を補強していく。
 その作業だけで、高い波にも耐えられる程度の安定を船は取り戻した。

「イルエスタの旗艦を、この潜水艇に備えていた弾丸で撃ち抜いたあと、何かに強く引っ張られて、この海域まで連れてこられました。」
 アンラも手を動かしながら信じられない顔をして説明する。  

「引っ張られた? イルエスタか? それとも大きな生き物か?」
 ミクシアが本当かどうか疑いながら、色々手を動かし続ける。

「それが、なんというか。」

「なんというか?」

「レンに少し似てるんですが、もっと長くて、ぬるっとしてて別物なんですが。深青の竜だったと思います。」
 アンラが大きく手を広げて説明する。

「竜? クジラとかイルカじゃなく?」
 ミクシアも手を止める。その横でディアルトが目を大きくして息をのむ。

「今となっては自信がありません。海中でしたし、視界も良くなかったので。」

「竜か、レンの例もあるし、完全に否定はできんな。」

 ミクシアが腕を組み、考え込む。

「推進機は修理できるか?」

 クロタクが船尾を指差すと、ミクシアとララが破損箇所を急ぎながら診断する。
 配線を入れ替え、パーツを交換し、削って調整し、別の部品と入れ替え二人の手は流れるように動き続けた。

 しかし。

「無理だ。ここじゃ沈没だけ防ぐのが精一杯だ。動力は復旧できない。救助要請だ。」

「そうか。」

 ミクシアが短く頷くと、クロタクが船に備え付けられていた緊急救助用の袋から信号弾を取り出し、夜空に向けて撃ち上げた。

 音もなく、真っ白い照明弾が夜空に浮かび、長く滞空したあと、ゆっくり海に落ちていく。
 先程ララが撃った信号よりも高度も光量も大きい。

「なかなか高性能だね。」

 ララが残骸を受け取り、ナイフで削りながら技術を観察する。

「後は待つだけだ。おそらく救助は明朝だ。流されないよう固定して、夜が明けたらもう一度信号弾。回収してもらおう。」

 その予測通り。

 救助は夜明けと同時に到着した。
 カランの大型軍艦が姿を見せ、波で揺れたララの潜水艇は、そのまま沈んだ。

「あー……沈んだ。もったいない……」

 ララが恨めしそうに救助兵へ手を振る。
 軍艦の右舷から縄梯子が降ろされ、ララ、ディアルト、クロタク、アンラ、ミクシアの順で上へと登る。

 甲板の中央には兵士が整列していた。
 クロタクが手を挙げて応じ、ミクシア達は頭を下げる。

「ご無事で何よりです。では、帰還します。」

 艦長の号令とともに汽笛が響き、軍艦は動き出した。
 瓦礫を押し分け進む様子は、どこか爽快ですらあった。

 よく晴れた空。本来なら心地よい朝。
 しかし濡れた服が冷え、疲労が身体に重く残る。

 港に戻ると、宿泊所で着替え、食事が用意された。

「ミクシア、悪いが、この前の話の続きをしたい。」

 ジーンとキーンが真剣な顔で声をかける。

「ん? 任せるって。俺らはそれに従う。行く当てもないし、船でも兵器でも農業でもなんでもするさ。」

「まあ、お前が『うん』と言えば全部動くところまで準備はできてる。」

「チャクミの作業員の生活が保証されるなら、何も文句はない。」

「それはもう約束済みだ。」

「じゃあ、それでいいよ。本当に任せる。」

「少し来てくれ。」

「わかった。」

 ミクシアは二人に連れられて歩き出す。

「ここって、まさかずっと待ってたのか?」

 苦笑しながら呟くミクシア。

 案内された先はカランの王宮。
 中へ入ると、円卓の十四人が疲れた顔で待っていた。

「いや俺、偉い人たちをずっと待たせるのって、すっげぇ罪深いことしてない?」

 逃げようとするミクシアを、キーンとジーンが引き戻す。

「まあまあ。まず話を聞け。」

「わかったよ。」

 そしてしばらくミクシアと円卓の十四人、そしてキーンとジーンとの話し合いが続いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界ランドへようこそ

来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。 中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。 26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。 勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。 同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。 ――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。 「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。 だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった! 経営者は魔族、同僚はガチの魔物。 魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活! やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。 笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。 現代×異世界×職場コメディ、開園!

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...