炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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58 ラン大陸封鎖

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 翌日。
 ラン大陸の閉鎖が臨時政府の名目で、北西カラン、北東コラン、南西キラン、南東ケランに正式に告知された。
 閉鎖までの猶予は10日。
 出国を希望する者は、その期間にカランの港から外へと移動することになった。

 ただし、実際は、すでに出国したい者達はイルエスタの侵攻の際に移動済みであり、ほとんどの者は国内に残る選択をした。
 まあ、出国したくても費用が無い者や、出国しても受け入れ先が無いなどの理由の者も多数いるのだが。
 各国に説明員を多く派遣したことも功を奏し、特に混乱なく移動と閉鎖準備が進んだ。

 コンコンコン キンキンキン カンカンカン ガンガンガン。
 金属を打つ音、組み立てる音、運搬する音など、いろいろな音が響く。
 チャクミの作業員が指揮を執り、爆撃砲の製造をラン大陸にいる技師達と一緒に進めた。
 そのための部品も各国から集まってくる。
 爆撃砲の他にもラン大陸をイルエスタから守るための兵器を開発し、それをラン大陸各地へと配備していく。

 すでに4か国の国境は撤廃され、往来は自由になっている。
 元から、そこまで国境について厳しく管理をしているわけではなく、形式的なものであったが。

 ラン大陸に住む者達は、イルエスタの軍艦が去った後に知った。
 ミクシアというチャクミから来た青年が命をかけて大陸を守った勇者であることを。
 チャクミの作業員が防衛に尽力し、その発明品がイルエスタ撃退に効果絶大であったことを。
 そして、レンという赤竜の犠牲が伴ったことを。

 チャクミ作業員の最高齢であるキーンや、その友人であるコラン国王の側近ジーンの指示により、ラン大陸中にその情報が広まっていった。
 ラン大陸のコラン以外の国王や各国の重臣がすでに出国済みであることから弱まっていた指揮系統を補完するためにも、混乱を落ち着かせるためにも、ミクシアを勇者に奉ったのもジーンであった。

 閉鎖までの10日は驚くほど速く過ぎた。
 幸い、イルエスタからの侵攻はなく、守りを固める時間に費やすことができた。
 ラン大陸から出国したいという者は結局皆無であり、カランの港は特に何事もなく閉鎖された。
 その港をイルエスタから守るように、急ごしらえの爆撃砲や他の兵器が並べられた。

「さてと、じゃあ、いくぞ。準備ができたところから撒くように伝えてくれ!」
 ジーンが兵士達に伝えると、自らもチャクミからミクシア達が持ってきた腐食の藻をカランの港から海にばら撒いた。
 綺麗な緑色の藻類がラン大陸独特の潮流に流されていく。

「これはなに?」
 ディアルトも撒くのを手伝いながらジーンに尋ねた。

「これは腐食の藻といってな。金属でも木材でも、この藻に住む微生物によってすべてを腐らせるという、チャクミのバブ様秘伝の生物だそうだ。強い繁殖力で、まあ、計算では数日後にはこの大陸全体を覆うらしい。」

「ふーん。なんでこんなことするの?」
 ディアルトが首を傾げる。

「この大陸にイルエスタの船が近づいても、その船を使えないようにするためだ。この腐敗の藻の情報をイルエスタへよーく流しておいた。船が腐食して戻れなくなったら嫌だろうな。」

 急に、ディアルトの背後からミクシアが答えた。

「そして念のため、爆撃砲も全海域に砲撃できるようすでに配置したし、なんかリヴァイアサンがこの大陸を守っているという噂もイルエスタで広まっている。まずはこれでラン大陸の安全はひとまず守れるだろう。」

 ミクシアに続けて、ジーンがさらに言った。

「このラン大陸付近の海流は特殊で、周囲を覆うように流れている。他国への影響はほぼ無いといっていいだろう。魚や他の植物や生物に影響が無いというのも、この腐敗の藻のすごいところだ。」

「ん?じゃあ、この国から出られなくなるじゃん。」
 ディアルトが腕を組んで困った顔をする。

「まあ、当分はそうなるな。」
 ミクシアがうなずく。

「それは困るよ。僕、父さんたちを助けに行きたいんだ。そのためには早くイルエスタに行きたい。」

「まあ待て。今行っても、どこにおまえの父さんたちが居るかわからないだろ?」
 素直にディアルトがうなずく。

「イルエスタについて色々探ってもらっている。原石に関わる者達がどこに収容されているかも調べてもらっているから、それを待って動いてもいいと思うがどうだ?」

「わかった。」
 悩む表情でディアルトが再びミクシアにうなずく。

「でもさ、すぐにどこにいるかわかっても、行けないじゃん。」

 ミクシアとジーンは目を合わせ、少し笑った。

「まあ、どうにかなるさ。」

「どうやって?」

「そこから先は内緒だ。」

 この海流には切れ目があり、その藻が流れ出ない場所が数箇所存在する。
 だが、この場所を特定されることを恐れ、トップシークレットとして扱われた。
 そのことをディアルトが知るのは、まだ先の話となる。

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