美しきモノの目覚め

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「…おやおや、兄上たちは一体何をされているのですか?」





アディリナを腕に抱き、今にも飛び掛からんという殺気を向けるカール。そして笑みを決して崩さずそれを見据えるセドリック。

そしてカールの腕に抱かれたまま2人の感情に押され固まっているアディリナ。




傍にいた従者たちが一切口を挟むことができないその部屋にたった一人の声が響きわたった。





その声にセドリックとカールは咄嗟に声の主の方に顔を向ける


「…アディリナっ!」

そして、自身の名を呼ぶ声が聞こえたアディリナも反射的にそちらを振り向いた。

自身の名を呼ぶ者の姿を捉えた、アディリナはカールの腕を抜け出し、その者の方に飛び込んだ。


「…ヨハンお兄様っ…」

そう言って自身の腕に飛び込んできたアディリナをヨハンはその身を守るように抱き留めた。












しかし、セドリックとカールが目を向けているのはヨハンではない。
ヨハンの隣にいる人物だ。




「…ロドリク」

そう口にしたセドリックを見てその者は笑みを浮かべる。


「お久しぶりです。セドリック兄上、カール兄上」

それに答えるこの男こそイヴァノフ王国第三王子であるロドリク・ル・イヴァノフだ。
色素の薄い茶髪に、父と同じ青い瞳を持つ。人好きのするような笑みを浮かべている。




「なぜお前が城にいる」

カールがいまだ殺気を収めることなく声をかけるが、それでもロドリクの態度は変わらない。


「サンチェス国と我が国の親睦会のために帰国したのです。移動の日程が早まり、少し予定より早く帰国できたのです」

そうロドリクが答えるが、セドリックもカールもその言葉に何か返事をすることはなかった。



「それよりも、兄上たちはの部屋で一体何をされていたのですか?」



セドリックは浮かべていた笑みを一瞬消し去り、ロドリクを睨みつけた。
そしてまた再び笑みを作り直す。

「…いや、何でもないよ」

そう言って、セドリックはこれ以上言葉をかけることを許さないという風にそのまま部屋から出ていった。

「セドリック!……っ!」

カールはそのまま自身に背を向け立ち去るセドリックの名を叫ぶが、セドリックが振り返ることはなかった。


そして、カールはアディリナの方を見やる。
ヨハンがその視線からアディリナを守るように立ちふさがった。

それに苛立ったカールはヨハンを厳しく睨みつけた後、何も口にすることなく部屋を出ていった。








2人が出て言った後、ヨハンは軽く息を吐いた。

「…アディリナ大丈夫か?」

自身の腕の中にいるアディリナをヨハンは案じる。


「…はい」


アディリナはヨハンの言葉に、少し眉を下げ答えた。

ヨハンはそんなしおらしいアディリナに愛おしさが募った。
そうして、自身の腕にいるアディリナの髪を撫でる。





そんなヨハンとアディリナ2人の姿を、すぐ傍で見つめるのは2人の兄であるロドリク

2人には決して聞こえない微かな声で言葉にする





「…ああ、まるでフェリシナ様ではないか」







































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