新撰組の想い人 ~幕末にタイムスリップしたオメガの行方~

萩の椿

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第42話

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   沖田の律動が止まった。




 慧の言葉が沖田の脳内に繰り返される。

 僕もです、近藤さん。

 確かにそう言った。


 この男には自分の姿が近藤と重なって見えているのか。抱いているのは、快楽を与えてあげているのは紛れもなく自分なのに。

 慧の目に自分は映っていない。そう思うと、ふつふつと怒りが湧いてくる。




 パシッ




 左頬に走る痛みに慧の妄想が消えていく。

 見上げると、怒りをあらわにした沖田がいる。


「あっ……」


 その顔を見てようやく今までの記憶が蘇ってくる。自分は、近藤ではなく沖田に抱かれていたのだと。

 ズルっと沖田の欲望が引き抜かれる。


「来い」


 手首を掴まれ、力の抜けきった体を無理やり起こされる。千鳥足になりながらも沖田に手を引かれたままに慧はついて行った。

 
   はだけた着物を、片手で一生懸命整える。

 しかし、どこへ向かっているのだろうか? 

 沖田は料理場を抜け出して、廊下を進んで行く。

 そして何度か角を曲がった先にある部屋の前で沖田は足を止め、ふすまを開けた。



「いたっい」



 二の腕部分を掴まれて、部屋に無理やり投げ入れられる。

 畳に尻もちをついてしまった慧は、態勢を立て直そうとするも、すぐに沖田が馬乗りになってくる。

「何なんですかっ!」

 沖田に向かって慧は叫ぶ。

 すると、沖田は人差し指を唇に押し当てて口角を上げた。

「今、広間で宴会中なんですよ。そこにあなたの好きな近藤さんもいますよ」

「え……?」

「ほら、声が聞こえるでしょ?」

 耳を澄ませると、確かににぎやかな男性の声が聞こえてくる。

 その中に、近藤もいるのだろうか。声は聞こえないけれど、近くにいると思うと、鼓動が早くなってくる。

「貴方の望み通り、近藤さんに声を聞かせてあげましょう」

「え……?」


「行為の最中、名前を呼ぶくらい好きなんでしょ?」


意地悪く口角を上げて笑う沖田のその表情に、慧の血の気は引いていく。


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