新撰組の想い人 ~幕末にタイムスリップしたオメガの行方~

萩の椿

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第46話

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その頃、土方は脱衣所で他の隊士が入ってこないように見張っていた。

今宵は宴会。

ほとんどの隊士が酒に潰れて、風呂どころではなくなるだろう。しかし万が一という事もありえる。

土方は腕を組み、慧が上がってくるのをじっと待っていた。

 慧の体の傷を見た瞬間、土方は何故か怒りが湧いた。体にある無数の噛み痕はどれも痛々しく、見ていられなかった。

 自分がうなじに嚙みついた痕も、きっと今でも消えていないだろう、まだ痛みも残っているかもしれない。

 なんてことをしてしまったのだろうと、土方は自分を責めた。

 慧のうなじを噛んだあの日から、土方の中で異変が起きていた。慧に対する意識が少しづつ変わり始め、慧を大切にしなければいけない相手だと思うようになっていたのだ。

 土方自身、理由は良く分からなかった。それでも、離れていても慧の事を思っているし、食事はとったのだろうかなど気になってしまう。

 今日土方が、慧の元へ赴いたのも宴会のごちそうを食べさせてやろうと思ったからであった。考えて行動するというよりも、体が勝手に慧の元へと向かおうとするのだ。

 この不思議な感覚に疑問を抱きながらも、どうすることもできない。

 土方はなすすべもなく、本能に従うしかなかった。









 十分間ほど湯につかり、慧は脱衣所へと向かった。

「お、お待たせしてすみませんでした……」

 待ってくれていた土方に一応お礼を言ってから、体を拭き着物に着替える。

「よし、戻ろう。お前も今日はまともに飯を食ってないんじゃないか?」

 慧が丁度着物を着終わったところで、土方が腰を上げた。

 確かにそう言われると、夜ご飯もまともに食べていないのでお腹が空いていた。

 慧は短く返事をして、土方の後ろについて地下室へと戻った。

「お前の分だ、食え」

 土方から皿を押し付けられて慌てて受け取る。焼き鳥の様なものや焼き魚、おにぎりや漬物などが乱雑に皿に盛られてあった。

「ありがとうございます……」

 机もないので、床に直に皿を置く。正座して手を合わせようとしたところ、土方が慧の目の前に自分の皿を置いて座った。

「……土方さんも一緒に食べられるんですか?」

「悪いか」

「いや……、悪くは、ないです」

 悪くはないが、とてつもなく気まずい。話す内容も全くと言ってないし、くつろげない。

 土方は慧の様子を気にも留めず、食事を口に運んでいる。

 慧もとりあえず焼き魚を口に含んでみたが、緊張のせいか全く味がしなかった。やはり、この場を和ますためにも、何か話題を振った方が良いのだろうか。

 それとも、土方が何か言って来るまで待った方が良いのか。
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