32 / 85
牙をむくメガロポリス
5.メガロポリス昇格、そしてヨッシーが消えた
しおりを挟む
翌朝、リョウはスマホの着信音で目覚めた。午前七時五分だった。LINEの発信者は、思った通りヨッシーだった。
<メガロポリス一番乗り。だが、ゲームのルールが変わった。恐ろしい。だが、俺はやらねばならなかった>
リョウは眠い目をこすりながら、何度もヨッシーのLINEを読んだ。念願の「メガロポリス」に辿り着いたのに、メッセージからは高揚感が全く伝わってこない。逆に悲壮感が漂っている。「恐ろしい」とはどういう意味だ。「やらねばならなかった」という言葉のニュアンスも理解できなかった。この時間に送ってきたということは、また徹夜をしたのだ。文面も何かしらおかしい。リョウは嫌な予感がした。
「とにかくヨッシーに会わねば」
リョウは寝起きですっきりしない頭に鞭打って、すぐに着替えた。そして、部屋を飛び出し、ヨッシーの部屋に急いだ。あまりに一生懸命走ったので、登校途中の小学生が怪訝な顔つきで、リョウを見た。のんびり歩いたら20分ほどかかる道のりを、10分と掛からずに駆け抜け、リョウはヨッシーの学生アパートに辿り着いた。息を切らしながら、リョウはノックもせずにドアを開けた。
「ヨッシー、もうゲームは止めろ」
リョウの声は、薄暗い部屋に吸収され、宙を漂った。ヨッシーの部屋には誰もいなかった。
6畳1間のワンルームは、足の踏み場もないほどに散らかり放題だった。コンビニ弁当の殻やスナック菓子の空き袋、ジュースやお茶のペットボトル、雑誌、新聞、チラシ、そして埃をかぶった教科書―それらが全て床の上に散らばっていた。ヨッシーはもともときれい好きなタイプではなかったが、これほど荒れた状態は見たことがなかった。このゲームを始めてからの、すさんだ生活が偲ばれた。
リョウは部屋全体に充満した饐えたような匂いにも閉口した。煙草とごみ、汗の匂いなどが入り混じった悪臭。ヨッシーはヘビースモーカーなのだ。山になった灰皿が置かれたテーブルの上には、そこだけ別の世界のようにパソコンが鎮座していた。パソコンは起動されたままだった。
リョウが恐る恐る中を覗くと、ヨッシーが丹精込めて作り上げた「ヨシダ・シティ」は無残な姿に荒れ果てていた。リョウが不自然に感じたのは、その荒れ方だった。リョウも何度か街を破綻させたことがあるが、破綻した街からは人が消え、抜け殻のようになるのだ。しかし、今の「ヨシダ・シティ」は、ひどく破壊されていたのだ。ビルは崩れ落ち、道路は寸断され、橋があちらこちらで落ちていた。驚いたのは、街の大半が破壊されていたことだけではない。街の名前が「プレミアム・シティ」に変わっていたのだ。
ヨッシーは「メガロポリス一番乗り」と言っていたではないか。最初に「メガロポリス」になった「ヨシダ・シティ」がなぜ「プレミアム・シティ」に変わってしまったのか。一体、街に何が起こったのか。そして、ヨッシーはどこに行った。
<メガロポリス一番乗り。だが、ゲームのルールが変わった。恐ろしい。だが、俺はやらねばならなかった>
リョウは眠い目をこすりながら、何度もヨッシーのLINEを読んだ。念願の「メガロポリス」に辿り着いたのに、メッセージからは高揚感が全く伝わってこない。逆に悲壮感が漂っている。「恐ろしい」とはどういう意味だ。「やらねばならなかった」という言葉のニュアンスも理解できなかった。この時間に送ってきたということは、また徹夜をしたのだ。文面も何かしらおかしい。リョウは嫌な予感がした。
「とにかくヨッシーに会わねば」
リョウは寝起きですっきりしない頭に鞭打って、すぐに着替えた。そして、部屋を飛び出し、ヨッシーの部屋に急いだ。あまりに一生懸命走ったので、登校途中の小学生が怪訝な顔つきで、リョウを見た。のんびり歩いたら20分ほどかかる道のりを、10分と掛からずに駆け抜け、リョウはヨッシーの学生アパートに辿り着いた。息を切らしながら、リョウはノックもせずにドアを開けた。
「ヨッシー、もうゲームは止めろ」
リョウの声は、薄暗い部屋に吸収され、宙を漂った。ヨッシーの部屋には誰もいなかった。
6畳1間のワンルームは、足の踏み場もないほどに散らかり放題だった。コンビニ弁当の殻やスナック菓子の空き袋、ジュースやお茶のペットボトル、雑誌、新聞、チラシ、そして埃をかぶった教科書―それらが全て床の上に散らばっていた。ヨッシーはもともときれい好きなタイプではなかったが、これほど荒れた状態は見たことがなかった。このゲームを始めてからの、すさんだ生活が偲ばれた。
リョウは部屋全体に充満した饐えたような匂いにも閉口した。煙草とごみ、汗の匂いなどが入り混じった悪臭。ヨッシーはヘビースモーカーなのだ。山になった灰皿が置かれたテーブルの上には、そこだけ別の世界のようにパソコンが鎮座していた。パソコンは起動されたままだった。
リョウが恐る恐る中を覗くと、ヨッシーが丹精込めて作り上げた「ヨシダ・シティ」は無残な姿に荒れ果てていた。リョウが不自然に感じたのは、その荒れ方だった。リョウも何度か街を破綻させたことがあるが、破綻した街からは人が消え、抜け殻のようになるのだ。しかし、今の「ヨシダ・シティ」は、ひどく破壊されていたのだ。ビルは崩れ落ち、道路は寸断され、橋があちらこちらで落ちていた。驚いたのは、街の大半が破壊されていたことだけではない。街の名前が「プレミアム・シティ」に変わっていたのだ。
ヨッシーは「メガロポリス一番乗り」と言っていたではないか。最初に「メガロポリス」になった「ヨシダ・シティ」がなぜ「プレミアム・シティ」に変わってしまったのか。一体、街に何が起こったのか。そして、ヨッシーはどこに行った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる