黒猫のクロ

可憐

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1話

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 私の名前は、クロ。
 女の子。
 元々野良猫の母親から生まれたから、生まれたときから野良猫だ。
 だから本当は名前なんてなかったんだけど、ある日、道を歩いて道路を渡ろうとして車とぶつかっちゃった事あるんだけど、すぐに車の持ち主が病院に連れていってくれたから私は今、こうして生きている。
 その時の車の持ち主から毛色も目の色も黒い私を見て[クロ]って名前を付けてくれたんだ。
 
 だから私の名前は、クロ。
 
 実はいつも通ってるあのお婆ちゃんが名付け親なんだ。
 怪我をして私は二人の家にいたとき、お爺ちゃんもいたんだけど、いつの間にかいなくなってたんだよね……どこに行っちゃったのかは私は分からなかった。
 なんだか数日は人がゾロゾロ来ていて私みたいな色の黒い服を着た人達がたくさん来たのは覚えてる。
 
 人がいなくなり落ち着いた頃、お婆ちゃんから私に話しかけるように言ってきた。
 
「クロ、お爺ちゃんは遠い遠い所に行っちゃったんだ……でもお空の上で私らを見守ってくれてる」
 
 そう言って私を撫でながら泣いていた。
 (泣かないで、お婆ちゃん。私がついてるよ)
 
 それでも怪我が治るまで家にいてお婆ちゃんの膝の上で休んでたからお婆ちゃんの膝の上は大好き。
 だから今日もお婆ちゃんの家に行った。
 私の大好きな膝の上で今日はいい天気だったから気持ちよくてお婆ちゃんの膝の上で寝ちゃった。
 
 怪我が治った時、お婆ちゃんの家にずっといようかと思ったけど、生まれたときから野良猫の私は外に出たくてたまらなくなってしまった。
 それを感じたのかお婆ちゃんが私を外に出してくれた。
 久々の外でやっぱり私は野良猫なんだなって思った。
 お婆ちゃんの側にはいたいけど、どうしても本能に逆らえずに私はその場から離れた。
 離れた時、お婆ちゃんの顔が悲しそうだった。
 
 でもお婆ちゃんの膝の上が忘れられなくて、毎日昼から夕方にかけて私はお婆ちゃんの所に通う。
 今日もまたいつものように大好きなお婆ちゃんと膝の上でポカポカ陽気に当たる。
 
「クロ、毎日来てくれてありがとうね。お婆ちゃん、嬉しいよ」
 
 (私も嬉しいよ。大好きよ、お婆ちゃん……)
 
 こうして今日も私は夕方までお婆ちゃんの膝の上で過ごした。
 
「また、おいで」
 
 ニャー、と私は返事をすると仲間の所へと帰っていく。
 仲間の所へと帰るといつものように言ってくることがある。
 
 (お前、あのお婆ちゃんが大好きなら、その家の飼い猫になればいいじゃないか? )
 (そうね……でも、どうしても私は野良猫のような自由気ままが止められないの)
 
 そうやっていつものように仲間達に言って仲間はやれやれと呆れた感じになってそれ以上何も言わなくなる。
 そう……私はお婆ちゃんが大好きだけど今のままの生活も止められない。
 だから明日もお婆ちゃんの所に行っちゃうんだろうな。
 そう思いながら私は眠りにつく。
 
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