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第三章 幸運のしるし
◇22 ご令嬢達
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陛下方への謁見も終わり廊下を歩いている途中で、私達に駆け寄ってくる人物がいた。若い男性で、見た事のある騎士団の制服を着ていた。アルフレッドさんと同じ制服だ。という事は、彼は近衛騎士団の方なのではないだろうか。
彼はお父様に話があるらしい。となると、私邪魔になっちゃうかな。
そもそも、お父様は今お仕事中だし。
「お父様、私はもう大丈夫ですので、どうかお仕事に戻ってください」
「だが……」
「馬車までの戻り方は分かりますから、大丈夫ですよ」
ずっと渋っていたけれど、気をつけて帰りなさい、と言ってくれた。お父様は急いで騎士団の方と戻っていった。忙しそうだったから、戻ってくれてよかった。
さて、私も遅くなってしまうと馬車で待っているマリア達や屋敷にいるお母様に心配されちゃうから、早く戻ろう。
そう思った時だった。
「ご令嬢」
それは、私の事だろうか。声のした後ろに目を向けると、女性が三人いて私を見ていた。私の事だったらしい。
「初めまして、ご令嬢」
令嬢の3人はご丁寧に自己紹介をしてくれた。私も続けて、先程陛下達に向けてしたものと違った挨拶をした。
この国で公爵家はアドマンス家のみ。なのでこの中で一番階級の上の人物は私という事になる。なので、自分より下の者達にする挨拶となる。相手の身分によって挨拶の仕方が変わってくるのだ。
「わたくし達、ぜひご令嬢とお会いしたかったのです。まるであの貴重な黒曜石のような黒い瞳と、素敵な黒い髪をされていたので、すぐに分かりましたわ。この国にはなかなかいらっしゃらないですから」
確かに、この国にいる人達の容姿の色は様々だけれど黒い人はいないとお母様に教えてもらった。だから、この国にいる同じ色の人はタクミ君くらいだ。
「ご令嬢が立ち上げたあの装飾ブランドもとても素晴らしいものですわ。わたくし達、残念な事に手に入れられなかったのですが、友人に見せて頂いた時には感動してしまいました。とっても素敵なデザインですわ。さすが、異世界からいらっしゃった方ですね」
「次の販売は何時なのでしょう。次こそは手に入れたいものですわ」
そ、そこまで褒められてしまうとは……て、照れてしまいそうだ。
「そんな素晴らしい方とぜひお友達になりたいとわたくし達話していましたの。異世界からいらっしゃったとお聞きしています。まだ分からないこともあるでしょうから、お手伝いさせていただきたいですわ」
お友達……お友達になってくれるの!? しかも3人!! 同じくらいの歳のご令嬢と会うのも初めてなのに、お友達になってくれるなんて! う、嬉しい……!!
……と、思っていたのに。
私は、思い知ってしまった。
「わたくし達は産まれた時からこの国の貴族として生活してきましたの。見たところ、ご令嬢は今まで違った生活をしていらしたようですね。貴族になりたてという事ですから、貴族の礼儀作法からお教えしたほうがよろしいと思います」
「ご令嬢はあのアドマンス家のご令嬢ですわ。貴族社会のお手本となる方です。例え異世界からいらっしゃった方だとしても、注目の的となるのですからこれくらいは身に付けて下さらないと」
礼儀作法は、レッスンで一番最初に習うのが基本。もしかして、さっき挨拶とかしたけれど、全然ダメだった?
でも、これはどうしたらいいのだろう。教えてくれるって言っているけれど……
「あっ! こんな所にいらっしゃったのですね!」
悩んでいる時、そんな女性の声が聞こえてきて。誰の事だろうか、と思っていたら私達の所に駆け寄ってきた。
「初めまして、カリナ・メルトと申します。失礼ですが、アドマンス令嬢でしょうか?」
「は、はい。アヤメ・アドマンスです」
「良かった! お会いできて!」
とっても元気なご令嬢だ。でも、急いでいる様子。
「先程、アドマンス子息がご令嬢をお探しになっていたところをお見かけしたのです」
「え?」
「西棟に行く廊下の手前だったと思うのですが……王宮内は少し複雑な所がありますから、ご迷惑でなければご案内しましょうか?」
「わざわざありがとうございます。では、お願いします」
では、ご機嫌よう。と令嬢3人に挨拶をしてその場を離れたのだ。助かったぁ~。教えてくれるって言ってくれたけれど、今はマリアに教えてもらってるし、なんか話しててグサグサ刺さる感じ? 私を見てくる目があまりいい感じじゃなかったし。
「ご令嬢、大丈夫ですか?」
「え?」
「あの人達、あまりいい性格じゃないんですよ。だから気を付けたほうがいいですよ」
「え?」
き、気を付ける……?
「特にルセロ侯爵令嬢、あの人社交界の中で自分より下の身分の女性達を仲間に引き入れてるんですよ。従わなければどうなるか分かってるの? って自分の身分を利用して脅しかけてくるんですよ?」
「なる、ほど……」
ルセロ侯爵令嬢は、先程の令嬢達の中の赤い髪の扇子を持った方だって教えてくれた。
なるほど、社交界でもそういう女性社会が出来ちゃってるのね。学校とかでそういうのあった気がする。あまり行けなかったけど、グループがあった。
そしたら、この人は助けてくれたって事だよね。
「ご令嬢は、これからお帰りですか?」
「え?」
「あ、違いました? そしたらどこにお送りした方がよろしいですか?」
「え……?」
あれ? アルフレッドさんの所に連れてってくれるんじゃなかったっけ……?
「あぁ、あれは嘘ですよ。よく使う手なんです」
使い勝手がいいですから覚えたほうがいいですよ、と教えてくれた。なるほど、逃げる口実なのね。確かに使い勝手が良さそう。お手洗い、とは言えないし。
もう用事が済んだから帰る所です、と伝えると王宮の玄関に連れてってくれて、外にあるアドマンス家の馬車まで付いてきてくれた。
「ありがとうございました」
「いえいえ、困った時にはお互い様ですからね」
ではまた、と彼女と別れた。
心優しい人が近くにいてくれて本当に良かった。
「お友達、ですか?」
「ううん、助けてくれたの」
「なるほど、それは良かったですね」
「うん!」
カリナ・メルトさんかぁ。また会えるといいな。
その日の夜、今日の王様達との事を知ったお母様は頭を抱えていた。
「うちの娘を、だなんて……全く、相変わらず気が早いんだから」
「はぁ、本当に困ったものだな」
「もうっ、アヤメちゃんに婚約者だなんて早すぎるわ!」
明日王宮に行ってガツンと言ってやるんだから! と暴走寸前のお母様をお父様がなだめていた。こんなお母様初めて見たかも。
お母様のお兄様なんだっけ。だからよく知ってるって事だよね。
今日はだいぶ、怒涛の一日だった。
彼はお父様に話があるらしい。となると、私邪魔になっちゃうかな。
そもそも、お父様は今お仕事中だし。
「お父様、私はもう大丈夫ですので、どうかお仕事に戻ってください」
「だが……」
「馬車までの戻り方は分かりますから、大丈夫ですよ」
ずっと渋っていたけれど、気をつけて帰りなさい、と言ってくれた。お父様は急いで騎士団の方と戻っていった。忙しそうだったから、戻ってくれてよかった。
さて、私も遅くなってしまうと馬車で待っているマリア達や屋敷にいるお母様に心配されちゃうから、早く戻ろう。
そう思った時だった。
「ご令嬢」
それは、私の事だろうか。声のした後ろに目を向けると、女性が三人いて私を見ていた。私の事だったらしい。
「初めまして、ご令嬢」
令嬢の3人はご丁寧に自己紹介をしてくれた。私も続けて、先程陛下達に向けてしたものと違った挨拶をした。
この国で公爵家はアドマンス家のみ。なのでこの中で一番階級の上の人物は私という事になる。なので、自分より下の者達にする挨拶となる。相手の身分によって挨拶の仕方が変わってくるのだ。
「わたくし達、ぜひご令嬢とお会いしたかったのです。まるであの貴重な黒曜石のような黒い瞳と、素敵な黒い髪をされていたので、すぐに分かりましたわ。この国にはなかなかいらっしゃらないですから」
確かに、この国にいる人達の容姿の色は様々だけれど黒い人はいないとお母様に教えてもらった。だから、この国にいる同じ色の人はタクミ君くらいだ。
「ご令嬢が立ち上げたあの装飾ブランドもとても素晴らしいものですわ。わたくし達、残念な事に手に入れられなかったのですが、友人に見せて頂いた時には感動してしまいました。とっても素敵なデザインですわ。さすが、異世界からいらっしゃった方ですね」
「次の販売は何時なのでしょう。次こそは手に入れたいものですわ」
そ、そこまで褒められてしまうとは……て、照れてしまいそうだ。
「そんな素晴らしい方とぜひお友達になりたいとわたくし達話していましたの。異世界からいらっしゃったとお聞きしています。まだ分からないこともあるでしょうから、お手伝いさせていただきたいですわ」
お友達……お友達になってくれるの!? しかも3人!! 同じくらいの歳のご令嬢と会うのも初めてなのに、お友達になってくれるなんて! う、嬉しい……!!
……と、思っていたのに。
私は、思い知ってしまった。
「わたくし達は産まれた時からこの国の貴族として生活してきましたの。見たところ、ご令嬢は今まで違った生活をしていらしたようですね。貴族になりたてという事ですから、貴族の礼儀作法からお教えしたほうがよろしいと思います」
「ご令嬢はあのアドマンス家のご令嬢ですわ。貴族社会のお手本となる方です。例え異世界からいらっしゃった方だとしても、注目の的となるのですからこれくらいは身に付けて下さらないと」
礼儀作法は、レッスンで一番最初に習うのが基本。もしかして、さっき挨拶とかしたけれど、全然ダメだった?
でも、これはどうしたらいいのだろう。教えてくれるって言っているけれど……
「あっ! こんな所にいらっしゃったのですね!」
悩んでいる時、そんな女性の声が聞こえてきて。誰の事だろうか、と思っていたら私達の所に駆け寄ってきた。
「初めまして、カリナ・メルトと申します。失礼ですが、アドマンス令嬢でしょうか?」
「は、はい。アヤメ・アドマンスです」
「良かった! お会いできて!」
とっても元気なご令嬢だ。でも、急いでいる様子。
「先程、アドマンス子息がご令嬢をお探しになっていたところをお見かけしたのです」
「え?」
「西棟に行く廊下の手前だったと思うのですが……王宮内は少し複雑な所がありますから、ご迷惑でなければご案内しましょうか?」
「わざわざありがとうございます。では、お願いします」
では、ご機嫌よう。と令嬢3人に挨拶をしてその場を離れたのだ。助かったぁ~。教えてくれるって言ってくれたけれど、今はマリアに教えてもらってるし、なんか話しててグサグサ刺さる感じ? 私を見てくる目があまりいい感じじゃなかったし。
「ご令嬢、大丈夫ですか?」
「え?」
「あの人達、あまりいい性格じゃないんですよ。だから気を付けたほうがいいですよ」
「え?」
き、気を付ける……?
「特にルセロ侯爵令嬢、あの人社交界の中で自分より下の身分の女性達を仲間に引き入れてるんですよ。従わなければどうなるか分かってるの? って自分の身分を利用して脅しかけてくるんですよ?」
「なる、ほど……」
ルセロ侯爵令嬢は、先程の令嬢達の中の赤い髪の扇子を持った方だって教えてくれた。
なるほど、社交界でもそういう女性社会が出来ちゃってるのね。学校とかでそういうのあった気がする。あまり行けなかったけど、グループがあった。
そしたら、この人は助けてくれたって事だよね。
「ご令嬢は、これからお帰りですか?」
「え?」
「あ、違いました? そしたらどこにお送りした方がよろしいですか?」
「え……?」
あれ? アルフレッドさんの所に連れてってくれるんじゃなかったっけ……?
「あぁ、あれは嘘ですよ。よく使う手なんです」
使い勝手がいいですから覚えたほうがいいですよ、と教えてくれた。なるほど、逃げる口実なのね。確かに使い勝手が良さそう。お手洗い、とは言えないし。
もう用事が済んだから帰る所です、と伝えると王宮の玄関に連れてってくれて、外にあるアドマンス家の馬車まで付いてきてくれた。
「ありがとうございました」
「いえいえ、困った時にはお互い様ですからね」
ではまた、と彼女と別れた。
心優しい人が近くにいてくれて本当に良かった。
「お友達、ですか?」
「ううん、助けてくれたの」
「なるほど、それは良かったですね」
「うん!」
カリナ・メルトさんかぁ。また会えるといいな。
その日の夜、今日の王様達との事を知ったお母様は頭を抱えていた。
「うちの娘を、だなんて……全く、相変わらず気が早いんだから」
「はぁ、本当に困ったものだな」
「もうっ、アヤメちゃんに婚約者だなんて早すぎるわ!」
明日王宮に行ってガツンと言ってやるんだから! と暴走寸前のお母様をお父様がなだめていた。こんなお母様初めて見たかも。
お母様のお兄様なんだっけ。だからよく知ってるって事だよね。
今日はだいぶ、怒涛の一日だった。
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