目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫

文字の大きさ
72 / 115
第八章 国際サミット

◇72 丸投げ

しおりを挟む
 サミットを終えた私は、【なかむら】に向かう事になった。王太子殿下とのお茶会の約束をしてしまった為である。スフェーンの事を知ってもらう為に【なかむら】の緑茶とお茶菓子を出してみたらどうだろうかと思ったのだけれど……


「……あれ?」


 もう昼営業が終了しているはずなのに、お店の前には馬車がある。中も何やら騒がしい。お取込み中かな、と思いつつお店のドアを開けてみたら……


「あ」

「アヤメちゃん!」


 いつものスタッフ4人の他に、スフェーンの王太子殿下に中村さん、ナカムラ夫人がいた。あれ、スフェーン王国の人達大集結ですか。

 私、違うタイミングで来ればよかったかな。


「とにかく俺はやらねぇからな」

「はぁ!? ふざけんなジジイ!! 俺らがやれって言うのかよ!!」

「100超えたジジイを働かせるつもりかよ、薄情なやつだな」

「王宮で毎日鍋振るってるだろーが!!」

「それは優秀な奴らとイズミがいるからだろ」

「ふざけんなジジイ!!」


 なんか、私場違いだった?

 一体何があってタクミと中村さんがこんな事になってるのかしら。それより、イズミさんって一番下の妹さんだよね。私と同い年だっけ。中村さんと一緒って事は……王城で一緒に鍋振るっちゃってるの!? えぇえ!?

 そう思っていたら、ナオさんがこっそり教えてくれた。


「サミットで来てるお偉いさんがお米を食べたいって言い出したんだって。だからこの国の王様からスフェーンの方に会食で作ってほしいって言われたみたいなんだけど、でもヒロタカ様が嫌だって駄々こねちゃってね」

「あらぁ」


 え、マジですか。確かに、会議ではお米と炊飯器の話は出たし、この後その件に関してルアニスト侯爵とナカムラ商会を交えて色々と話し合いもある。

 まさか、ここで米を食べたいと言い出すとは。となると、確かに米を知っているスフェーンの方が料理を作らなければならない。


「俺は嫌だからな。ただのお偉いさん達の我儘に俺らが付き合ってられるか」

「ふざけるな馬鹿孫が」

「こっちのセリフだクソジジイ!!」

「こらタクミ、殿下がいらっしゃるのよ」

「……大変失礼いたしました、殿下」

「気にするな、君の気持ちも分からなくもないからな」


 あらら、これはやばいな。でも、それって何時なんだろう。偉い方々に出すって事は時間かかっちゃうし、会場は王城だと思うから王城の厨房で作らなきゃいけないって事になるでしょ? 使った事のない場所で作るのは大変だと思う。


「何だ、ビビってんのか? これくらい男ならやってのけろ」

「じいさんがやればいいだけの話だろ!! 何でじいさんがいるのに俺らが作らなきゃいけねぇんだよ!!」

「俺は客人として来てんだ、ここに来てまで仕事なんてやってられっか」

「はぁ!? ここには仕事で来たんだろーが!!」

「嬢ちゃんの顔を見に付いて来ただけだ」


 タクミ、中村さんの前だとこんな感じなのね。見てて微笑ましい。いや、今はそんなこと思っちゃダメなんだけどさ。……あの、殿下。とっても微笑ましい顔でお二人見てません?


「タクミ、ナナミ、そういう事だから頑張ってちょうだい」

「母上!」

「ママぁ! 私達を見捨てる気!?」

「何言ってるのよ、人聞きの悪い。そんな訳ないでしょ」


 ……私、ここにいていいのだろうか。

 そういえば、あの場でお米の話を出してきたのは中村さんだよね。……言わないでおこう、うん。

 では頼んだぞ、と殿下方は帰っていってしまったのだ。

 タクミとナナミちゃんは……ズーン、と効果音が鳴りそうなくらい暗くなってる。


「ヒロタカ様の無茶振りは今に始まった事じゃないじゃない」

「本当に、丸投げはやめてほしい」

「どうしろってんだよ、本当に……」

「ただでさえサミットの影響で客が増えて、こっちは忙しいってのにさぁ……」


 で、アヤメは? と聞かれたので殿下とのお茶会の日の朝ようかんを買いたいとお願いした。用意してくれるみたいなんだけど、大変になっちゃうよね。なんかごめんなさい。

 頑張れ、ファイト。と応援エールも送ってから屋敷に帰ったのだった。

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

波間柏
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

処理中です...