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最終章 故郷
◇32 side.ヴィンス
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背筋が凍るかと思った。
俺の腕の中で眠っていたナオは、顔を赤くし、呼吸も荒くしていた。
額に手を当てると、とても熱く感じた。
苦しむナオを目の前に、らしくなく困惑してしまった。
まずは落ち着け、ここにはシャロンと俺しかいないんだ。俺が冷静でなくてどうする。
こんなに熱いんだ、まずは冷やした方がいいな。そう思いつつキッチンに急いだ。
風邪か、持病か。だが、ナオから持病の話は聞いたことがないな。
もし仮に持病でないとしたら、船の上での寒暖差で体調を崩す恐れもあった。昼間は気温が高くても、夜になればたちまち気温が急に下がる。船内の温度調整はできていても甲板は違うから、そのせいかもしれない。
見たところ、ナオは【魔力持ち】というわけではなさそうだ。俺は魔力を持っているため身体が丈夫だ。体調不良はよほどの事がない限り起こさない。
この世界では、魔力を持っている者と持っていない者に分かれる。魔力を持っていない者が大半で、魔力持ちは少ない。
魔力持ちは、身体能力が他より高く、身体が丈夫だ。俺がこの船まで流れついても生きていたのも、ラモストエリス王国で衛兵を何人も前にしてナオを守りつつ逃げられたのもそれが理由だ。
そして、シャロンも魔力を持っている。だから、大人二人を引っ張り上げられるほどのパワーを持っている。
「……結構熱いな」
とはいえ、身体が他より強いだけであって、他人の風邪を治す事なんて出来ない。ナオの額をもう一度触れたけれど、だいぶ熱い。これは、すぐに処置をした方がいいな。
となると、やはり近くの国に寄り医者を見つける必要がある。
本当は、ナオもこの状態だから厄介なことに巻き込まれるのを避けるため寄りたくはないが、このままにしておけない。ナオの為だ。
ここから近い国となると……と頭を動かしつつ、船橋に急いだ。
だが、来てはみたものの船長権限というものがあるため俺が船を動かせられるか分からない。ナオがあの状態だから本人から許可は貰えないしな。
どうしたものが……
______________
船長が体調不良の為、代理として権限が副船長に移ります。
______________
いきなり目の前に現れた、システムウィンドウ。
……マジか。
その後、近くの国に入国。ラモストエリス王国同様、そのまま港を管理している貴族の屋敷に案内された。医者を船に上げさせるわけにはいかなかったため、そのままナオを抱き上げ船から降りた。もちろん、シャロンは船でお留守番だ。
ナオを診た医者によると、少し酷い風邪だという。何か重い病気を持っているのではと心配しているところはあったが、持病でなかったことが幸いだな。
「いやぁ、あんなに立派な船は生まれて初めて見ました。この世にあんな素晴らしい船があったとは、いやはや信じられませんな」
「お褒めいただき光栄です」
この貴族のご夫婦は、この国で名のある医者を呼んでくれた。感謝するところではあるが……しきりに、船長と顔を合わせたい、他の船員や避難民をこちらに呼びたい、船を一度見学させてほしいと言ってくる。
ナオにはちゃんと風邪を治してもらうために安静にしてもらいたいところではあるが……面倒ごとになる前にここを去りたいところだな。
このまま、この国の王室に話が行くことは分かっている。ラモストエリス王国のように遣いがやってくることもあるだろう。とにかく、気は抜けないな。
俺の腕の中で眠っていたナオは、顔を赤くし、呼吸も荒くしていた。
額に手を当てると、とても熱く感じた。
苦しむナオを目の前に、らしくなく困惑してしまった。
まずは落ち着け、ここにはシャロンと俺しかいないんだ。俺が冷静でなくてどうする。
こんなに熱いんだ、まずは冷やした方がいいな。そう思いつつキッチンに急いだ。
風邪か、持病か。だが、ナオから持病の話は聞いたことがないな。
もし仮に持病でないとしたら、船の上での寒暖差で体調を崩す恐れもあった。昼間は気温が高くても、夜になればたちまち気温が急に下がる。船内の温度調整はできていても甲板は違うから、そのせいかもしれない。
見たところ、ナオは【魔力持ち】というわけではなさそうだ。俺は魔力を持っているため身体が丈夫だ。体調不良はよほどの事がない限り起こさない。
この世界では、魔力を持っている者と持っていない者に分かれる。魔力を持っていない者が大半で、魔力持ちは少ない。
魔力持ちは、身体能力が他より高く、身体が丈夫だ。俺がこの船まで流れついても生きていたのも、ラモストエリス王国で衛兵を何人も前にしてナオを守りつつ逃げられたのもそれが理由だ。
そして、シャロンも魔力を持っている。だから、大人二人を引っ張り上げられるほどのパワーを持っている。
「……結構熱いな」
とはいえ、身体が他より強いだけであって、他人の風邪を治す事なんて出来ない。ナオの額をもう一度触れたけれど、だいぶ熱い。これは、すぐに処置をした方がいいな。
となると、やはり近くの国に寄り医者を見つける必要がある。
本当は、ナオもこの状態だから厄介なことに巻き込まれるのを避けるため寄りたくはないが、このままにしておけない。ナオの為だ。
ここから近い国となると……と頭を動かしつつ、船橋に急いだ。
だが、来てはみたものの船長権限というものがあるため俺が船を動かせられるか分からない。ナオがあの状態だから本人から許可は貰えないしな。
どうしたものが……
______________
船長が体調不良の為、代理として権限が副船長に移ります。
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いきなり目の前に現れた、システムウィンドウ。
……マジか。
その後、近くの国に入国。ラモストエリス王国同様、そのまま港を管理している貴族の屋敷に案内された。医者を船に上げさせるわけにはいかなかったため、そのままナオを抱き上げ船から降りた。もちろん、シャロンは船でお留守番だ。
ナオを診た医者によると、少し酷い風邪だという。何か重い病気を持っているのではと心配しているところはあったが、持病でなかったことが幸いだな。
「いやぁ、あんなに立派な船は生まれて初めて見ました。この世にあんな素晴らしい船があったとは、いやはや信じられませんな」
「お褒めいただき光栄です」
この貴族のご夫婦は、この国で名のある医者を呼んでくれた。感謝するところではあるが……しきりに、船長と顔を合わせたい、他の船員や避難民をこちらに呼びたい、船を一度見学させてほしいと言ってくる。
ナオにはちゃんと風邪を治してもらうために安静にしてもらいたいところではあるが……面倒ごとになる前にここを去りたいところだな。
このまま、この国の王室に話が行くことは分かっている。ラモストエリス王国のように遣いがやってくることもあるだろう。とにかく、気は抜けないな。
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