マシュマロ系令嬢は悪役令嬢にはなれない

きみいち

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マシュマロ系令嬢と婚約者

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「マリィ!」

 甲高い声が教室に響いた。
 マリアベルは、はっと身体をこわばらせる。

 クラス中の視線を集めながら、マリアベルがいる場所までやって来たのは、おなじクラスの男爵令嬢リリーティア・リクールだ。

 陽光にきらめく黄金色の髪に、深緑の瞳を持つ美少女だけれども、いささか淑女の礼儀に欠ける。つまりは品がない。

 しかし、美少女にはちがいないので、いつも複数の男子生徒を侍らせている。
 とりまきたちの中には、婚約者がいる男子生徒もいるので、眉をひそめている生徒も多い。

 今日もそうだった。

「リリーティアさん、どうかしたの? 大きな声を出すなんて、はしたないのではないかしら?」
「うるさいわね。それよりもシモン様のこと、いつになったら紹介してくれるの?」
「ごめんなさい。声をかけようとしても、あなた、すぐに教室からいなくなってしまうのだもの」
「なによ、わたしが悪いっていうの? あなたって、意地悪よね」

 マリアベルは口をつぐむ。
 リリーティアの周囲にいた男子が、マリアベルを一斉に睨んだからなどではない。言っても理解出来ないと思ったからである。

「ああ、かわいそうなリリー。こんな太っちょのみにくい女の紹介など、必要ないじゃないか」
「でも、シモン様は肉まんマリィの婚約者なのよ?」
「それならボクが紹介してあげるよ。シモンはボクのクラスメートでもあるし」
「わあっ、嬉しい! 大好きよ、オリバー」

 マリアベルは、リリーティアと男子のやりとりを虚無の目で見つめる。
 この少女はいつもこうだ。クラスメートでさえなければ、避けたい相手であった。


 授業中はさすがにとりまきたちもそれぞれの教室に戻った。
 マリアベルのとなりの席を陣取ったリリーティアが頬杖をつきながら、マリアベルをじっと見つめている。

「シモン様も、なあんであんたみたいな豚まん悪役令嬢と婚約しているのかしら?」
「え?」

 ――悪役令嬢?

 聞き覚えのない言葉に、マリアベルは首をかしげる。

「あんたさあ、なんかシモン様の弱みでも握ってるの? あ、わかった。お金で言うことをきかせてるんだ」
「弱みって……シモン様には弱みなどないわ。お金にだって、お困りではないはずよ」
「そうよねえ。クール&パーフェクトが彼のキャラクターだものね。わたしってば、ゲームの途中で死んじゃったみたいで、攻略サイトもほとんど見てなかったのよねー。どうせあんたを地獄に堕とす方法なんて、わかりゃしないわよ!!」

 リリーティアがぞっとするようなことを言いつつ机に突っ伏した。

「でもね、クール系キャラのシモン様でも、その身には熱くたぎるものを持っていると思うの。わたしはそれを暴きたい!!」

 いや、それを暴くのは、婚約者であるわたしの役目なのでは――? マリアベルは呆れながら、リリーティアを見つめる。

「ま、そういうわけだから、豚足悪役令嬢は引っ込んでてね?」

 そう言ってにっこり笑う美少女は、同性のマリアベルから見てもとても可愛かった。
 性格最悪だけど――。
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