マシュマロ系令嬢は悪役令嬢にはなれない

きみいち

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マシュマロ系令嬢と婚約者

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「マリアベル様ったら、まーたおっぱいが大きくなっていましてよ。あら、でもウエストは5センチほど減っていますのね。あこがれのボンッキュッボンッも夢ではないのでは?」
「きゃールゴット夫人、しーっ! しーっ!」

 採寸にやってきた服飾専門店オーナーのルゴット夫人は、基本おしゃべりである。いつもならそのままにさせておくけれど、今日はとなりのリビングに婚約者がいるのだ。

「ほほ。マリアベル様ったら、あいかわらずお可愛いらしいですわ」
「からかうにもほどがあります」

 涙目で恨みがましく見上げると、ルゴット夫人がにこりと笑った。

「では、お着替えが終わったら、モンテイエの若様といっしょにドレス生地を選びましょうね」
「……はい」

 エマの手を借り、ワンピースに着替える。

 学園の寮は爵位によって決められており、侯爵位であるマリアベルの部屋は、最上階の見晴らしのいい角部屋を割り当てられていた。
 寝室のほかに簡易キッチンやリビングが付いているのも、侯爵位以上の部屋である。

「シモン様、お待たせいたしました」
「マリアベル嬢、お疲れ様」

 だいぶ待たせたというのに機嫌がよさそうな婚約者の様子に、マリアベルはほっと胸を撫で下ろす。

 普段着姿の婚約者もひどく麗しい。
 ソファに腰をかける婚約者がとなりを示すので、マリアベルははにかみながらも素直に従った。

 テーブルの上には何冊もの生地やドレスの見本帳があった。
 それらを広げ、ルゴット夫人が婚約者に向けて説明する。

「マリアベル様でしたら、シンプルなAラインのドレスにいたしましょう。裾が広がっているので、メリハリも出てスタイルよく見えますわ」
「それなら、胸元から腰にかけて、このような刺繍を入れられないだろうか?」

 婚約者がスケッチブックをルゴット夫人へと手渡す。
 マリアベルがのぞきこむと、画用紙には可愛らしい花々が描かれている。マリアベルの婚約者は絵心もあるらしい。

「あら、ステキですわね。若様がお描きになられたんですか?」
「手なぐさみだ」
「まあ、うふふ。マリアベル様は愛されてますねえ」
「ふえっ!?」

 そうなんだろうか? ちらりととなりをうかがうと、婚約者がにこりと笑んだ。

 周囲には冷血漢と恐れられているのに、マリアベルの前ではその怜悧な表情を崩す。というか、にこにこしていない顔以外など見たこともない。

 ――愛されているんだろうか?

 恥ずかしくていたたまれない。
 マリアベルを見つめる婚約者以外の目線が、なにやらぬるく感じた。

 ドレスの色や生地を選び終わり、話はまとまったようだ。
 婚約者がマリアベルのために、ドレスを何着求めたのかはわからないけれど、ご機嫌なルゴット夫人を見れば想像がついた。
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