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マシュマロ系令嬢と乙女ゲーヒロイン
1.
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申し訳ないけれど、最初は屍人かと思った。
おなじ学園の女子生徒だということは、制服姿からわかった。しかし、出で立ちがふつうじゃない。
黄金色の髪はぐちゃぐちゃに乱れ、顔色は青白くうつむき加減。
あーだのうーだの呻きながら歩く姿は、さながら怪奇小説に出てくる屍人のようである。
のどかだった午後のテラス席は、突如現れた屍人に阿鼻叫喚と化した。
気がついたときには、授業の課題である刺繍をしていたマリアベルとその侍女エマのみを残し、全員が逃げ去ったあとだった
屍人がゆっくりと首をめぐらし、マリアベルたちへと幽鬼のような顔を向けた。
ふくよかなマリアベルを獲物と定めたのか、乱れた髪の間から濁った深緑色の瞳がギラリと光ったのが見える。
エマがとっさにマリアベルを背中にかばった。
「エマ、刺激しちゃだめよ」
「おまかせください。にらめっこなら得意です」
「エマの顔、ほんと怖いものね」
「恐れ入ります」
夜中に不浄に立った時、暗い廊下の向こうから現れたエマの顔を見て、何度その場で粗相をしそうになったことか。
美人過ぎる侍女として領内では有名なエマではあったけれど、整いすぎてて逆に怖いのである。
屍人がマリアベルたちに向かって一直線に突進してきた。
マリアベルはとっさに十字を切る。
「シモン様、先立つ不孝を……」
「後追いされますよ!」
「死んでも生きる!!」
エマと手を取り合ってマリアベルは戦う覚悟を決める。
「――って、あら?」
屍人はマリアベルたちには目もくれず、テーブルに置いてあったマリアベルの紅茶をぐびぐびと飲み始めた。
カップが空になるとポットから次を注ぎ、マリアベルのおやつのビスケットまでむさぼり始める。
屍人はどうやらお腹を空かせていたらしい。
「はあ~よかった……わたしがお肉に見えたのではなかったのね」
そもそも、婚約者のシモンにもまだ美味しくいただかれていないマリアベルである。
屍人なんぞに食われてたまるか、という気持ちだ。
食べ物を口にしてようやくお腹が落ち着いたのか、屍人ががばっと顔を上げた。
「リリー復活!!」
「ひっ!!?」
屍人かと思っていたら、リリーティア・リクールだった。
やつれてはいるものの、陽光の下きらめく美少女っぷりは健在である。
「あら? おひさしぶりね、子豚ちゃん。相変わらず丸々してて、美味しそう」
「ごきげんよう、リリーティアさん。あなたこそ、さっきまで人間じゃなかったわよ」
「え、妖精にでも見えた? 見えちゃった? わかる」
そのメンタル、見習いたい。
「この7日間、リリーティアさんがいらっしゃらなくて、とっても平和でしたわ」
「わたしもホテルにカンヅメされる作家の気持ちがよーくわかったわ」
「はあ……?」
「あんたの彼ピ、前世は鬼か悪魔よ。断言する」
「彼ピ、とは?」
「あんたの婚約者のことじゃん」
あー……。
時々、わからない言葉をリリーティアは口にする。
――そういえば、『悪役令嬢』なんてことも言われてましたわね。
おなじ学園の女子生徒だということは、制服姿からわかった。しかし、出で立ちがふつうじゃない。
黄金色の髪はぐちゃぐちゃに乱れ、顔色は青白くうつむき加減。
あーだのうーだの呻きながら歩く姿は、さながら怪奇小説に出てくる屍人のようである。
のどかだった午後のテラス席は、突如現れた屍人に阿鼻叫喚と化した。
気がついたときには、授業の課題である刺繍をしていたマリアベルとその侍女エマのみを残し、全員が逃げ去ったあとだった
屍人がゆっくりと首をめぐらし、マリアベルたちへと幽鬼のような顔を向けた。
ふくよかなマリアベルを獲物と定めたのか、乱れた髪の間から濁った深緑色の瞳がギラリと光ったのが見える。
エマがとっさにマリアベルを背中にかばった。
「エマ、刺激しちゃだめよ」
「おまかせください。にらめっこなら得意です」
「エマの顔、ほんと怖いものね」
「恐れ入ります」
夜中に不浄に立った時、暗い廊下の向こうから現れたエマの顔を見て、何度その場で粗相をしそうになったことか。
美人過ぎる侍女として領内では有名なエマではあったけれど、整いすぎてて逆に怖いのである。
屍人がマリアベルたちに向かって一直線に突進してきた。
マリアベルはとっさに十字を切る。
「シモン様、先立つ不孝を……」
「後追いされますよ!」
「死んでも生きる!!」
エマと手を取り合ってマリアベルは戦う覚悟を決める。
「――って、あら?」
屍人はマリアベルたちには目もくれず、テーブルに置いてあったマリアベルの紅茶をぐびぐびと飲み始めた。
カップが空になるとポットから次を注ぎ、マリアベルのおやつのビスケットまでむさぼり始める。
屍人はどうやらお腹を空かせていたらしい。
「はあ~よかった……わたしがお肉に見えたのではなかったのね」
そもそも、婚約者のシモンにもまだ美味しくいただかれていないマリアベルである。
屍人なんぞに食われてたまるか、という気持ちだ。
食べ物を口にしてようやくお腹が落ち着いたのか、屍人ががばっと顔を上げた。
「リリー復活!!」
「ひっ!!?」
屍人かと思っていたら、リリーティア・リクールだった。
やつれてはいるものの、陽光の下きらめく美少女っぷりは健在である。
「あら? おひさしぶりね、子豚ちゃん。相変わらず丸々してて、美味しそう」
「ごきげんよう、リリーティアさん。あなたこそ、さっきまで人間じゃなかったわよ」
「え、妖精にでも見えた? 見えちゃった? わかる」
そのメンタル、見習いたい。
「この7日間、リリーティアさんがいらっしゃらなくて、とっても平和でしたわ」
「わたしもホテルにカンヅメされる作家の気持ちがよーくわかったわ」
「はあ……?」
「あんたの彼ピ、前世は鬼か悪魔よ。断言する」
「彼ピ、とは?」
「あんたの婚約者のことじゃん」
あー……。
時々、わからない言葉をリリーティアは口にする。
――そういえば、『悪役令嬢』なんてことも言われてましたわね。
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