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第四話 灯台でハートがとけるほど恋しちゃった話
§6 - 三月一日
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三月一日は高校の卒業式だ。
本来なら、クラスメイトから「卒業してもまた会おうね!」、後輩から「卒業おめでとうございます!」と言われるものだと思う。しかし、おれの場合は……。
「さっちん、元気出せや」
「磯上くん、人生はこれから始まるんだからね」
「磯上先輩、後期日程がんばって下さい。応援してます!」
兵頭さん以外の誰にも伝えていないのに、なぜか同級生のみならず後輩まで、おれがTH大の受験に失敗したことを知っていた。そして、朝の電車に乗った直後から、会った人みんなに慰められてしまった。
教室に入ると、なぜかクラス委員の雨宮さんしかいないし。
「あのさ、雨宮さん。なんで皆、おれがTH大の受験に失敗したことを知ってるんだろ?」
おそるおそる尋ねたところ、鏡を見ながらメイクを直していた雨宮さんはケロッとした感じで、
「ああ、前期試験の最終日だったかな? 舞花と拓也から、『磯上がK駅で死にそうな顔して歩いてる』ってラインが来てさ」
「ええ……おれの所には来てないけど」
「そりゃそうでしょ。クラスのじゃなくて、友達グループの方」
雨宮さんはメイク道具をしまった後、自分のスマホをおれに向けて履歴を見せてくれた。うう……みんな理由を好き勝手に予想してる……けど、さすがに「試験中に寝たんじゃね?」って言ってる人はいない。ふう、ギリギリセーフ。
おれが黙ってスマホを見つめていたら、雨宮さんは珍しくコホンと咳をして居住まいを正してからズイっと近づき、
「磯上さあ、インスタにTH大の写真アップしてたじゃない? だから『絶対なんかやらかしたよね』って話になって……やっぱり名前書き忘れたん?」
ニヤニヤ笑いでどうよどうよ、って言いながら、おれの肩をつついてきた。
「違いますっつ!」
「んじゃ、試験が難しかったんだ?」
「……聞かないで下さい……」
すると、雨宮さんは、カラカラ笑っておれの背中をばんと叩き、
「後期日程で本気出せや、磯上!! めげるんじゃないよ!!」
「うん、はい。そのつもりです」
元ヤンらしい激励をしてくれた。姐さんって感じでいい人なんだよな雨宮さん。ありがとうございます。気合が入りました。その時ふと、卒業式が始まる前に兵頭さんへ写真を送ろうか、と思いついた。
「あ、そうだ。雨宮さん、おれの写真を撮ってもらいたいんだけど」
「いいよ。どこで?」
「正門がいいかな」
「オッケー。せっかくだから皆で撮ろうよ。まだ式まで時間あるし」
雨宮さんが振り向いてそう言うなり、教室のドアが開いてクラスメイトがわらわら現れた。みんなでおれと雨宮さんの話を盗み聞きしていたのか……。
「あー良かった。皐月が平気そうで」
「なんか磯上ってダメな弟ポジションだから、心配だったんだよねー」
「誰だよ『卒業式の朝に屋上から飛び降りるかも』とか言ってた奴」
あんまり落ち込んでなさそうで良かった~と、全員がホッとした様子で笑っている。うう、ごめんね、心配かけちゃって。
(灯台で死ななくて本当に良かった……)
やっぱり兵頭さんはおれの天使だと痛感した。
本来なら、クラスメイトから「卒業してもまた会おうね!」、後輩から「卒業おめでとうございます!」と言われるものだと思う。しかし、おれの場合は……。
「さっちん、元気出せや」
「磯上くん、人生はこれから始まるんだからね」
「磯上先輩、後期日程がんばって下さい。応援してます!」
兵頭さん以外の誰にも伝えていないのに、なぜか同級生のみならず後輩まで、おれがTH大の受験に失敗したことを知っていた。そして、朝の電車に乗った直後から、会った人みんなに慰められてしまった。
教室に入ると、なぜかクラス委員の雨宮さんしかいないし。
「あのさ、雨宮さん。なんで皆、おれがTH大の受験に失敗したことを知ってるんだろ?」
おそるおそる尋ねたところ、鏡を見ながらメイクを直していた雨宮さんはケロッとした感じで、
「ああ、前期試験の最終日だったかな? 舞花と拓也から、『磯上がK駅で死にそうな顔して歩いてる』ってラインが来てさ」
「ええ……おれの所には来てないけど」
「そりゃそうでしょ。クラスのじゃなくて、友達グループの方」
雨宮さんはメイク道具をしまった後、自分のスマホをおれに向けて履歴を見せてくれた。うう……みんな理由を好き勝手に予想してる……けど、さすがに「試験中に寝たんじゃね?」って言ってる人はいない。ふう、ギリギリセーフ。
おれが黙ってスマホを見つめていたら、雨宮さんは珍しくコホンと咳をして居住まいを正してからズイっと近づき、
「磯上さあ、インスタにTH大の写真アップしてたじゃない? だから『絶対なんかやらかしたよね』って話になって……やっぱり名前書き忘れたん?」
ニヤニヤ笑いでどうよどうよ、って言いながら、おれの肩をつついてきた。
「違いますっつ!」
「んじゃ、試験が難しかったんだ?」
「……聞かないで下さい……」
すると、雨宮さんは、カラカラ笑っておれの背中をばんと叩き、
「後期日程で本気出せや、磯上!! めげるんじゃないよ!!」
「うん、はい。そのつもりです」
元ヤンらしい激励をしてくれた。姐さんって感じでいい人なんだよな雨宮さん。ありがとうございます。気合が入りました。その時ふと、卒業式が始まる前に兵頭さんへ写真を送ろうか、と思いついた。
「あ、そうだ。雨宮さん、おれの写真を撮ってもらいたいんだけど」
「いいよ。どこで?」
「正門がいいかな」
「オッケー。せっかくだから皆で撮ろうよ。まだ式まで時間あるし」
雨宮さんが振り向いてそう言うなり、教室のドアが開いてクラスメイトがわらわら現れた。みんなでおれと雨宮さんの話を盗み聞きしていたのか……。
「あー良かった。皐月が平気そうで」
「なんか磯上ってダメな弟ポジションだから、心配だったんだよねー」
「誰だよ『卒業式の朝に屋上から飛び降りるかも』とか言ってた奴」
あんまり落ち込んでなさそうで良かった~と、全員がホッとした様子で笑っている。うう、ごめんね、心配かけちゃって。
(灯台で死ななくて本当に良かった……)
やっぱり兵頭さんはおれの天使だと痛感した。
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