加害者X=被害者K/s

Laki

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第二章 傷跡をなぞって。

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カラ「お前は俺だが。俺はお前だ。お前は被害者でもあったのは確かだ。理不尽なこの世の地獄をある程度見て生きてきた。その上で構築された環境はお前のせいだった。だからお前は被害者でもあると同時に加害者でもあったというわけだ。」

ソラ「自分の見ている世界が壊れていくのを感じる…。」

カラ「それは半分正しくて、半分間違ってる。今までお前が夢見ていた世界は理想郷で、現実は地獄のような日々。崩れているのは前者であって今日も明日も明後日も変わらず世界は進んでいく。立ち止まって後ろや下ばかりみて自ら傷をつけては抉り出すお前には現実が見えちゃいなかった。」

ソラ「自殺衝動とリスカ欲が毎日毎晩毎秒続くのは確かだった。」

カラ「精神安定剤なんかじゃ頭の思考を止めることで精一杯だ。」

カラが立ち上がりソラの左腕を腰につけていたナイフで切り込む。

ソラ「…何も感じない。」

カラ「人間が人間じゃなくなればそうなんだ。痛くもねえ。ただ傷跡が増える毎日だ。それでまた家族を悲しませ、友人を怖がらせてしまうから厄介な中毒だよな?リスカの依存性は高い。お前に根性があれば1ヶ月、2ヶ月、やがては、1年と止められるかもしれねえがまず無理だ。お前は性根も考えも腐ってる。いつも感情に流されてばっかだろ。そういうお前みたいなやつをな、消えた方がいい人間、社会不適合者と言うんだよ。」

ソラ「分かってる。努力なんてしても足りないし、誰にも受け入れられない。いつもコミュニケーションは最後に失敗する。」

カラ「お前さえいなければよかったのになあ。なんで大切な友人が死んでお前が生きてんだ。いっつも考えるだろうがな。僕が死ねばよかったって。今のお前に何も出来ない。代わりにもなれない。鬱で休んで金借りて、社会のお荷物だ。」

ソラ「ああ。今さら空いた時間を努力に使っても無駄だと思ってしまう。癒えない傷はすべて自分がつけたことに気付かないふりをしていた。」

ソラの腕や顔にゆっくりと切り傷がのびていく。

ソラ「誰かに気付いて欲しかったのかもしれない。心の傷を。誰かにそばにいて欲しかった。ただそれだけだった。」

カラ「お前が拒んだんだよ。お前が心を閉ざした。過去に引きずり回され、傷をひけらかして命を証明してようやく自分が死んでないことに気がついている。誰か傍にいてくれれば?勘違いすんな。誰もこんなお前の傍にいたくはない。関わりたくもない。いつだって重い感情が溢れ出てるそんなお前の傍になんていたくない。とんだわがままだ。お前は独りだ。家族だって分かり合えはしなかったんだからな。独りぼっちなんだよお前は。」

カラの言葉が響くとドっと心が痛んでいく。

孤独感からくる虚しさが物理的に胸と椅子に大きな穴をあけるが、体に痛みはない。

カラ「お前がその深くて暗い底のない穴もうずく傷跡も見て見ぬふりをすればするほど、大きくなっていくもんなんだよ。」

ソラ「もういいだろ、早く首を切って殺してくれ。」

カラ「また逃げてばかりだなお前。そんなお前が死ねない理由がわかるか?恐怖だ。死んだ先、悲しんでくれる人はどのくらいいる?その時間はどれほど短い?残して消えたことの責任は?そんな恐怖のせいで死にきれないでいるんだろ。」

ソラ「恐怖に縛られて生きてきた。この鎖も手錠もその一部だろう。ずっと怖かった。他人も自分自身も、その自他の言動、その未来すらも。」

カラ「はっきりしようぜ。お前は恐怖から逃げてんじゃねえ。俺自身から逃げて、逃げ切った先で恐怖を拾って向き合えなくなるんだ。それをずっと何かに依存してきて騙してきてのこれだろ。」

ソラ「何度も酒に溺れた。理由をつけてお前と向き合うことから逃げてきた。何度も腕を切った。無意識に赤信号を渡りかけたり階段から落ちたりもした。全てが嫌になって、投げだして、ずっと自分を騙して、傷をつけることだけが、自分の証明だと思ってたんだ。」

カラ「その結果また迷惑かけちまったよなぁ。色んな人によ。お前はもう、壊れた。だがそれはお前のせいだ。」

ソラ「僕のせいだ。」

カラ「この感情や現実がその傷の原因だろ。痛み、哀しみ、怒り、憂い、恐怖、逃避、それらがすべてお前に降かかる。一度に全てだ。それも毎日。タイミングもバラついてな。それの原因もお前のせいだ。」

ソラ「僕のせいだ。」

カラ「夢を失って、理不尽なことされて、他人のせいにばかりすんなよ。お前のせいだ。この現実は。」

ソラ「ぼくのせいだ」

カラ「いつも自己中心的、被害妄想のせいで迷惑してる人間がどれだけいるかもわからない。それはお前の存在のせいだ。」

ソラ「ぼくの、せいだ」



現実で暗闇の中、僕はそっとまた腕を切る。1回じゃたりない。切るだけじゃ足りない。刻むように。素早く、力を込めて。

いずれは過去のようにカサブタをはりながらも残して抱えていく。

傷跡をなぞって。
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