わたしの師匠になってください! ―お師匠さまは落ちこぼれ魔道士?―

島崎 紗都子

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第1章 わたしの師匠になってください!

嵐の日に 1

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 それから五日が過ぎようとしたが、ツェツイが姿を見せることはなかった。
 しつこくつきまとわれるだろうと思っていただけに、正直、拍子抜けだ。
 アリーセもあれ以来、特に何も言わない。
 けれど、無言で責められているようで、何とも居心地が悪かった。
 そして、六日目。
 その日は朝から風の強い日だった。
 双子たちは窓にへばりついて外を見る。
「ひゃーすげー風。家が揺れてるぞ」
「屋根、吹き飛ぶんじゃないのか?」
 風が砂埃を上げて吹き荒れ、大きく木々を揺らす。
 どこかの家の植木鉢が音をたてて家の前を転がっていった。
 その植木鉢を双子たちは揃って目で追っていく。
「ツェツイ、大丈夫かな。あれから家に来ないよな」
「俺、この間〝灯〟の裏庭で見かけたぞ」
「俺も見た」
「ぼんやり木の上を見てた。また遊びに来いって誘ったんだけど」
「俺も誘ったぞ。りんごのタルト食べに家に来いって。いくらでも焼いてやるぞって。焼くのは母ちゃんだけどな」
「なあ、こんな日に一人で心細そくないのかな」
「そりゃ……」
 ノイとアルトはソファーにふんぞり返って本を読んでいる兄を振り返り、じっと目を細めて見つめる。
 あきらかに、何かを訴える目つきだ。
「何だよ?」
「別に……」
 二人揃ってそう答えるが、どうみても、別にという目ではない。
 イェンは再び手元の本に視線を戻した。が、弟たちがまだこちらを見ているのがいやでも視界に入る。
 ち、と舌打ちを鳴らして弟たちに背を向ける。
 それでも、背中に突き刺さる弟たちの視線。
 くそっ、と吐き捨て、読んでいた本を乱暴にソファーに叩きつけイェンは立ち上がった。
「ツェツイの家は町の西の外れだぞ!」
「兄ちゃん、ちゃんと連れて来いよ!」
 扉に向かって歩くイェンの背に、弟たちの嬉しそうな声が投げかけられた。
「これで母ちゃんの機嫌も直るぞ!」
 と、声を揃えて言う弟たちの声がイェンの耳に入ったかどうか……。
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