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第6章 もう君を離さない

6 誰にも渡さない

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 その後、車に乗せられ〝時の祈り〟のアジトへ向かった。車を運転するコンツェットは本部を出てからずっと無言だった。
 身柄をキャリーに引き渡される。
 キャリーとは何者なのだろう。
 当然、ファンローゼに知るすべはない。けれど、コンツェットの緊張した面持ちからして、事態はいっそう悪い方向へと転がっていくのは想像できた。
 今度こそ殺されるかもしれない。
 父や母のように。
 死という恐怖に怯え、ファンローゼは知らず知らず自分の肩を抱き身を震わせた。
 いよいよ、車は見慣れた風景へとさしかかり、アジトから少し離れたところで車は停止する。
 ファンローゼは膝の上に置いた手をきつく握りしめた。
「行け」
 コンツェットの一言に、ファンローゼは車のドアを開けた。
 もう一度コンツェットをかえりみるが、彼はハンドルを握ったまま視線を真っ直ぐに向けているだけ。こちらを振り返ろうともしない。
 俺に何も期待するな。
 まるでそう言っているような気がした。
「コンツェット、あなたと再会できて本当に嬉しかった。生きていてくれて、それだけで私はじゅうぶん」
 さようなら。
 車から降り、アジトだったアパートへと歩き出す。
 もうすぐアジトに辿り着く。
 あと数歩。
 ここで別れたら、二度とコンツェットに会うことはできないかもしれない。そう思った途端、こらえていた涙がこぼれた。
 流れる涙を手の甲で拭う。

「くそっ、くそっ!!」
 コンツェットはハンドルを思いっきり両手で叩きつけ、声を張り上げ叫ぶ。
 車から飛び出し、ファンローゼの元に向かって全速力で走った。
「ファンローゼ!」
 今まさに、アジトの中に入って行こうとするファンローゼの右腕を、コンツェットは掴んで引き寄せる。
 倒れ込んだファンローゼの身体を、背後から抱きすくめた。
 強く、きつく。
「行かせはしない! ファンローゼは誰にも渡さない!」
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