未だ分からず《人間らしくない人間と人間らしい怪物》

甘党でやる気ないおおかみ

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シトシト嫉妬oh shit

第六話 魔人の足跡

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 クラゲ大量発生の翌日 十月十日

「・・・・・・なんだ?」

 時刻は午後三時半。戸黒睡蓮は同僚の馬鹿が調子に乗って氷付けにした貨物船と海の破砕処理に朝から駆り出され、散々、能力を何度も行使したり、重い重機をえっちらおっちらと運んだりやら六時間以上・・・やっとこさ仕事を終えて帰宅し、遅めの昼飯にありつこうとしているところだった。

「あの二人はなんでこっち見て笑ってんだ?」

 一番混み合う時間帯も過ぎ、まばらに席が空いている食堂の最奥。日当たりの良い窓辺で景色も悪くは無いため人気が高いテーブル席。
 注文したかけうどんをスタッフから食券と交換で受け取り、運良く空いていれば座ろうと思って、その人気テーブル席を伺うと・・・

 見知った同僚の顔が二つ。

 一人は今日、極寒の中、海上で氷を割る労働を戸黒がしなければならなくなった元凶にして、腐れ縁の親友、ルーン・スライゴー。
 トレードマークの三角帽子は机の脇に置いてあった。本来はまだ中部支部に出張中のはずであったが、仕事が早期に終わって予定を早めたらしい。
 もう一人は昨日の事件で負傷して仕事を休んでいた新入り・・・三藤玄。
 身体のあちこちに包帯やら湿布を貼っていた。

 ルーンがこちらを指差して三藤に何か耳打ちする・・・三藤がそれを聞いて、感心したような表情をして大げさに驚く・・・こちらを見てニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる二人。

「よく分からんけど超ウゼェ・・・」

 無視するわけにもいかないので・・・というか、無視して奴らのにやけ顔を咎めないのも癪なので彼らの席に歩みを進める戸黒。

「・・・学生時代の時の話だけどさ。あいつ、勉強出来る上にお節介だからよく女子に告られんの!」

「モテたんですねぇ、あの人。」

「そうそう!でも女子達の告白、全部断ってたんだよねぇー」

「へぇ、紳士なんですね。」

「アハハハハ・・・違う違う!甲斐性も気概も無いだけだよ!」

「あぁ・・・なるほど。ヘタレなんですね。」

「・・・・・・おい。」

「そう!ヘタレなんだよあいつ!」

「おい・・・聞いてんのか?他人の陰口なんて性質たち悪いことしやがって・・・少なくとも、本人に聞こえる場所ですることじゃないだろ・・・」

 なんなのこいつら?ていうかこいつ、何で俺が学生時代に女子からの告白を断ったこと知ってんの?誰にも教えた覚えがないんだけど・・・

 何処まで把握してやがるんだこいつ?・・・と、戸黒は半ば恐怖しながら魔女を睨んだ。

「わざとに決まってんだろぉー。アホかお前は?そんなことも分からんのか?私、心配になっちゃうなぁ!お前の頭がなー!」

「もっと性質が悪いわ!俺はお前の人間性が心配だよ!」

「万年黒コートのヘタレは女子トークに入ってくるんじゃねぇ!大人しくうどん啜っとけぇ!」

「そうだそうだー!ヘタレゴ○ブリはどっか行けぇ!」

「三藤は俺の格好を虫に例えるのをやめろ!ていうか食事処でその単語を使うんじゃねえ!お前ら揃うとウザさが五割増しだよ!」

 会って一日も経ってないのに意気投合して、しょうの悪い子供じみた悪口を憎たらしい笑顔で喋り散らす二人に、戸黒は大きくため息をついて落胆した。

 そもそも、三藤は中身男である。

 この会話は女子トークと言えるのだろうか?

「ハァ・・・三藤、怪我は大丈夫か?」

 変に怒ったために仕事の疲れがどっと疲れが押し寄せて来たのか、戸黒は疲れ気味にルーンの隣の席に腰を下ろす。
 食堂机の上にはティーカップと食べかけのケーキが二つずつ。どうやら、二人で優雅なお茶会と洒落込んでいたらしい・・・

 会話の内容は泥水みたいに淀んだ物であったが。
 
「えぇ。軽い捻挫と打ち身で済みました・・・ルーンさんのおかげで。」

「・・・・・・」

 それを聞いて性悪魔女が、万年黒コートに向かって思わず殴りたくなるほどウザいどや顔で椅子にふんぞり返った。

「チッ・・・死ねば良いのに。」

「お前も本人に聞こえないように悪口は言おうな?」

「わざとに決まってんだろ。そんなことも察しが付かないのかこのポンコツ魔女は?頭沸いてんじゃねえの?」

「三藤君、そこの調味料全部取って?中身全部こいつのうどんにぶちまけるから。」

「面白そうですけど、食堂の人に迷惑だから駄目です。」

「・・・お前、ズバズバと他人に皮肉を言う割に、何故か一定以上他人に迷惑を掛けないよう努めるよな。」

 相変わらず、三藤の行動原理は戸黒にはよく分からないままだった。
 三藤は急に冷めたかと思ったら、白皿の上のミルフィーユをフォークでつつき始めた。

「まぁ、大事じゃ無くて良かったよ。」

「心配して下さってありがとうございます・・・そういえば、戸黒さんも今、口にしていましたけれど、ルーンさんが魔女って呼ばれているのは何故ですか?別に魔女の格好をしているから魔女って呼んであげているわけではないでしょう?もしそうだったらルーンさんが可哀想ですよ。イジメですよ。先生に言わなくちゃ。」

「・・・・・・今、可哀想って言った?言ったよね?イジメってどう言う意味!?」

「あぁ、まだ聞いていなかったか。魔法使いの世界じゃ有名な話だけどな・・・昨日、こいつが魔法を使っているのを見ただろ?」

 ルーンが何か喚いていたが、戸黒はガン無視した。

「えぇ。」

「あれを見てどう思った?」

「・・・綺麗でした。」

「いや、そういう感想を聞いたわけじゃ無いんだよ・・・今まで見た魔法と比べてどう思った?」

「えっと、ファンタジーらしい・・・いや、魔法らしかったですね。童話に登場するような、昔ながらの魔女みたいでした。」

「そういうことだ。こいつの魔法は遙か昔に活躍した伝説の魔法使い達と同じモノなんだよ。」

「・・・・・・?」

「つまり、こいつは魔法の始祖の血を濃く引き継いでいるってことだ。」

「・・・はあ。」

 三週間程前まで一般人であった三藤には理解しにくかったのか、あまり腑に落ちない顔をしていた。

「魔法使いの世界では家柄や血統が大事にされてるって話は知っているでしょ?その最たる・・・というより、極端な例が私ってわけ。」

 戸黒の要領を得ない説明に呆れたのか、ルーン本人が説明役を変わった。

「私みたいに、太古から活躍してきた魔法を受け継いだ人間・・・いや、その血族、血統を『原初の魔法使いオリジナル』って言うんだ。誰か特定の個人や血族を指す言葉じゃないから注意ね。私はその中でも、ヨーロッパで有名な魔女の家系の端くれ。私や私の父親、祖母も『原初の魔女』って呼ばれてるよ。この帽子はそれを証明する・・・シンボルみたいなものだね。」

「なるほど・・・血統種ってことですか。」

「さすがにその言い方は傷付くよ?私、犬猫じゃないよ?」

「フッ・・・間違ってねえな。帽子は血統書と同じようなもんだとも言える・・・なあ?ゴールデンレトリバー。」

「誰がゴールデンレトリバーだ!犬じゃねえっての!」

「ということは・・・この帽子も割と大事な物なんですか?割と雑に扱われてますけど。」

 血統書、もとい彼女が『原初の魔女』であることを証明する三角帽子が、上下逆様でグシャグシャに潰されてテーブルの端に追いやられていた。
 しかも、その中にレシートやらペットボトルやらのゴミが突っ込まれている。

 帽子の価値がゴミ入れ並に低くなっていた。

 ていうかこの魔女、ゴミ入れにしてる物を頭に被ってるの?

 戸黒は心の中で「うわあ・・・」と、本気で引いたが、顔には出さずに飲み込んだ。

「これ、正直邪魔なんだよね。何の役にも立ったことないし。ほいパス。」

 ルーンがゴミを抜き取り、乱雑に帽子を三藤に投げ渡す。

(そんな軽く扱っていい代物じゃあないんだけどなあ・・・この帽子があれば、血統を重視する右派の連中の多くが無条件で言いなりになる危険な代物だぞ?)

「おぉ・・・意外と手触りが良い。被ってみてもいいですか?」

「いいよー。気に入ったら借りちゃってもOKだよー。」

「・・・・・・」

 戸黒が、人目を気にせずはしゃいでいる二人の代わりに周囲を見回してみると案の定、話を耳にした近くの職員達が、帽子の雑な扱いに目を白黒させていた。

 申し訳ない・・・と、一人気まずくお辞儀をして謝罪する、真面目な戸黒だった。

「他にも原初の魔法使いオリジナルっているんですか?」

「ん?あぁ。世界中に散らばっているな。処理班にもまだいるぞ。京都に陰陽師が一人と、あと鬼打さんも・・・いや、鬼打家は排斥されてたな。」

「え?」

 バキンッ

「何でもない・・・っておい?」

 いきなり三藤が食べていたミルフィーユの乗っていた皿が、甲高い破砕音と共に真っ二つに割れた。

「あらら。まだ魔法の制御が不安定だねぇ・・・いや、昨日の事件で不安定になっているのかな?」

 三藤が使っていたフォークが、真っ二つに割れた皿の中心に立っていた。立っていると言うより、刺さっていた。
 皿を突き破ってプラスチック製のテーブルを綺麗に貫いている。フォークに誤って魔法を使用してしまったのだろう。

「あっちゃあ・・・申し訳ありません。久しぶりにやらかした。食堂の人に謝ってきます。」

 慌てること無く、落ち着いた様子で立ち上がり、食堂のカウンターに走る三藤・・・痛々しい包帯が巻き付いているからか、その後ろ姿は一段と弱々しく見えた。

「大丈夫かな・・・?」

 ルーンがティーカップを口に近づけ、真面目なトーンで戸黒に聞いた。

「あぁ。 。」

「・・・本当に、残酷な世の中だこと。」

「・・・そうだな。」

 話に集中していたため食べ損ねていたうどんを啜った。

「ぬるくなってるし・・・」




 協会関東支部 会議室より

「・・・では研究課の水馬みずまさん、昨日のクラゲ大量発生の調査報告をお願いします。」

 寝不足で上手く回らない舌をなんとか動かして会議資料を読み上げる。
 研究課の調査員にマイクを渡し、自分の席に戻る・・・静かに座ろうとしたが、貧血で目眩がして、ドスンと乱暴な音を立ててしまった・・・恥ずかしい。

「なんで葬式で忙しい日に災害レベルの事案が発生すんだよ。おかげで目の下がまた隈だらけだよ。またエナジードリンク頼みの生活が始まるよ・・・」

 鈴城は誰にも聞こえないよう口の中で呟いた。

 人猿の事件の爪痕が完全に消えたわけでも無いというのに・・・

「研究課、超常海洋生物研究所所属研究員、水間真澄みずま ますみです。現時点で判明している調査結果を報告いたします・・・」

 今回の対策会議では、クラゲの大量発生の原因を解明するため、その道の専門家・・・今回の場合で言えば、水生生物の専門家に協力を仰ぐことになった。
 他の機関、または協会の下部組織である研究所に協会が協力を仰ぐのは、今回だけの特例措置というわけでもなく、大きな事件が起こるたびにこのような専門家からアドバイスを貰うことがかなり多かった。
 国会の公聴会みたいなものである。

(水馬真澄・・・戸黒さんとルーンさんの同級生・・・G組出身の天才研究員だとは聞いていたけど、予想通りの変人っぷりだな・・・)

 瞳が隠れてしまうほど長い黒髪、飾り気の無い丸眼鏡に白衣の下に除く無地のTシャツとヨレヨレのズボン。オシャレなど全く気にしていないように見えた。

(何というか・・・G組にしては、よくある「天才像」なような・・・「ありふれた天才」のような気が、しなくもない。)

 予想通りの変人だけれど

 予想外に普通の変人だ

 自分で言ってて意味が分からなくなって来た

 けれど、鈴城は彼女が自分とは似て非なる気質を持った人間であることにすぐに気付いた。

 彼女は多分、「クソ真面目」だ。

 私の、「怠惰な真面目」とは違う。

 研究課には自分のようにただ食いっぱぐれない為だけに働く、真面目なようで怠惰な者も多いが、研究に人生を捧げる勢いで打ち込む人間も・・・いる。
 この研究員は後者。
 多分、心の底から研究が好きで、子供の頃から研究を夢に見て、研究のために本気で努力した人間。

 私を含む不真面目な大多数の人間からすれば、彼らの努力は「馬鹿らしく」思えてしまう。つまらない人間に見えてしまう。

 努力する人間を非難する方が馬鹿なんだって理解はしている。けれど、普通の不真面目人間からしたら、彼らの真面目さは引け目を感じる・・・いや、ムカつくのだ。
 だから彼らは「クソ真面目」なんて影で蔑まれてしまう・・・本人は何も悪いことなんてしていないのにね。人間の醜い部分だ。

昨日さくじつ、大量発生したクラゲの正式名称は『船傘ふながさ』。『自身の分泌液を混ぜた液体を操作する』能力を持っています。しかし、操作出来ると言ってもせいぜい波の勢いに少し抗うことが出来る程度。別段、死人が出るような大きな被害を出す魔獣では本来無いです。強いて言えば船幽霊に間違われるぐらい。知性も確認されていませんでした。」

「アァ?おいおい水馬・・・俺は最前線で奴らと戦ったが、普通に人を殺せるぐらいの強さを持ってたぞあのクラゲ。現に俺の部下が負傷してる。」

 不機嫌な鬼打さんが水馬研究員の説明を遮る。彼女の言う通り、『船傘』がその程度の存在であれば、東京湾が霧に飲み込まれるような大事に発展することなど有り得ない。死人が出る被害とならなかったはずだ。

「我々もあなたの説明が間違っているように感じます。奴らはまるで軍隊のように・・・とまでは行きませんが、理性を感じさせる、統率された行動を取っていたように思えます。」

 鬼打さんと同じく、直接『船傘』と対峙した対策課の職員が鬼打さんの意見に賛同する。
 今回の『船傘』は船上の獲物を逃がさないために船を沖に流したり仲間を集めたりと、悪意を秘めた理性が感じられたそうだ。
 その証言の正しさは貨物船に気持ち悪いほど群がるクラゲの氷付けを見れば明らかだ。

「えぇ。その通りです。クラゲに本来あるはずの無い凶暴性と理性・・・私も不自然に感じ、まさかと思ってクラゲの死骸を解剖し、詳しく調べました。結果・・・」

「・・・・・・え?」

 鈴城は、水馬研究員が何かを言い淀み、言葉が途切れたことを不思議に思い顔を上げ・・・水馬研究員の顔色を見て、驚いた。

 『人の感情が色のついたオーラとして見える』鈴城には、言葉に詰まる水馬研究員が赤いオーラ・・・

 怒りの感情が見えた。

 他の会議の参加者も彼女が言葉に詰まったのを見てただならない事実がこれから述べられることを予感し、身構える。


「今回駆除された『船傘』の身体には、『船傘』以外の魔獣の物と思われる脳細胞が埋め込まれていたことが判明しました。」


「・・・・・・」

 ズシリと、室内の空気が重くなる。彼女の報告を耳にした全員の表情が険しくなる・・・
 彼女の報告が意味するところを理解出来たからだ。
 魔物同士の混合・・・それが魔法使いにとって何を意味するのか。
 様々な悪感情が室内に滲み出す。
 怒り、恨み、落胆、悲しみ、憎悪・・・

 その中でも一際強い、赤黒い殺意。

「・・・・・・オイ?」

 今にも周囲を焼き尽くしてしまいそうなほど巨大に膨れ上がった殺意の持ち主・・・鬼打千華が静かに告げる。


「また禁忌を犯す馬鹿が湧いたのか?」


 彼女の鬼の形相に皆が戦慄する。怒りが抑え切れないのか、拳に力が入り、彼女の握りしめる椅子の肘掛けがミシミシと悲鳴を上げる。

「明らかに、人猿の封印が破られたことと関係してやがんなぁ・・・が裏にいるとこまで簡単に想像が着くぜぇ?」

 禁忌に最も近い環境で育ったからこそ、彼女は憎悪する。

 その存在を。

 ・・・・・・『

 誰かが禁忌の名を口にした。

 どうやら、今年は魔法使いにとって史上類を見ない、凄惨な一年になりそうであった。








 薄暗い研究室より


 ブブブブブ・・・ブブブブブ・・・


 コートの内ポケットが振動する。実験結果をパソコンでまとめる作業を中断して、マナーモードにしたままの携帯を取り出し、着信に出た。

「もしもし鬼打さん?彼の居場所が絞り込めたよ。」

「おお!やるねぇミロ・・・これでまた一歩前進だ!」

 彼を手に入れれば、今まで夢物語だった人間から完全な魔人への昇華が現実的な話になる・・・

「手塩に掛けて育てたクラゲ達が役に立って本当に良かった。努力が報われるって本当に楽しい・・・」

「そうかい。それは良かった・・・でも、あれほど頑張って増やした『船傘』を全部消費するなんてもったいない。わざわざ本部のある関東で使わなければ、もっと効率的に協会にダメージを与えられたというのに・・・」

「私はあんたみたいに、協会への復讐を一番に考えているわけじゃあないんでね。」

「ふむ・・・でも、君も今の能力主義に満ちた魔法使いの社会を良く思ってはいないのだろう?」

「まあそうだけどね・・・私の目的はそんな、社会を変革させたいなんて大それた物じゃないんだよ。」

 魔人研究の発展という目的では利害が一致するから協力関係にあるものの、電話に出た相手・・・魔人ミロはその力を協会の打倒に使用することに何故か消極的だった。
 禁忌にまで手を出しておきながら、どうでもいい些細なことだけに執着する魔人の思考は、自分からしたら不愉快に感じなくもない。

「それは残念だ・・・でも、ちゃんと約束は守ってくれよ?」

「もちろんだ。協力して貰っているのに、恩返しもせず立ち去るなんてことしないよ・・・私の目的が果たされた後はあんたの計画に参加しよう。」

「ありがとう、ミロ・・・それで、彼、『人猿の被害者』を入手するのに何か必要な物はあるかい?」

「あぁ・・・ちょっと人手が必要かな。それも、最強レベルの魔法使いを足止め出来るレベルの。」

「難しい注文を軽々と口にするね君は・・・まあでも、了解した。すぐに手配しよう。」

「あぁ・・・よろしく頼む。こっちもまだ忙しいから切るぞ。さようなら。」

 ブツッ

 一方的に電話を切られてしまった。こちらがまだ別れの挨拶を返していないというのに。せっかちな人だ。

「有能であれば性格や思想なんてどうだっていいけれどね。そんなことより、楽しみだなあ・・・」

 携帯の待ち受け画面に映った幼い少女の頭を人差し指で優しくなぞる。

「協会を踏み潰すのもそうだけど・・・君をバラバラにして部屋に飾れる日も近いよ・・・千華?」

 犬、猫、蛇、魚、鼠、百足、果てには人間・・・様々な動物のホルマリン漬けが飾られた薄暗い部屋で、一人不気味に笑って携帯画面に頬擦りを始めた赤髪の男の名は千夜せんや

 


第六話終
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