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実戦指導2
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ゼロは実戦指導にあたる冒険者達の前に立った。
ゼロの前には5人の冒険者、4人組のパーティーと他に1人。
4人組のパーティーは全員が登録したばかりの白等級で今回が初めての冒険だとのこと。
リーダーの若者は槍を持った戦士レオン、魔術師の少年カイルに武闘僧侶の少女ルシア、斥候を勤めるホビットの少女マッキだった。
聞けば冒険者登録し、右も左も分からないまま依頼を受けたところにギルドから今回の提案を受けたらしい。
レオンの
「黒等級のネクロマンサーの方だと聞いて戸惑いましたが、ギルド職員に真面目で優しい人だと聞いてお願いしました」
との話しにゼロの脳裏に1人のギルド職員が浮かんだ。
レオンに続いてルシアが口を開く。
「私達はパーティーを組んだばかりで全員が実戦の経験がありません。これから冒険者として長く生き延びるためにできることは何でもやってみようと思ったんです」
その言葉にパーティー全員が頷く。
駆け出しの冒険者にありがちな無謀さが無い慎重なパーティーだ。
パーティーのバランスも良い、無事に生き延びれば高みを目指すことができるだろうと思う。
そしてゼロはもう1人の冒険者に目を向ける。
「で、なぜ貴女がここにいるのですか?」
もう1人の冒険者は女性魔術師、首から下げた認識票は紫。
レナ・ルファードだった。
「私も実戦指導を受けたくて彼等に頼んで今回の依頼に同行させてもらうことにしました」
ゼロは呆れ顔だ。
「実戦指導も何も、貴女はどちらかといえば指導する側じゃないんですか?」
「いえ、今回は私は魔法抜きでの戦い方を学びたいのです。魔法を使えない事態に陥ったときの対処について考えているときにギルドから今回の提案を受けて彼等に頼んで同行させてもらうことにしたんです」
レナの言葉にルシアが続く。
「私達もゼロさんだけでなくレナさんが同行してくれるならば心強いのでお願いしました。今回はギルドと私達とレナさん、みんなの利害が一致したんです」
1人だけ利害が一致していないゼロの脳裏に笑顔が素敵なギルド職員が暗躍している姿が浮かび、肩を落とした。
早速都市を出発した一行は依頼の出された町の近くに到着した。
レオン達が受けた依頼はある町の近くにある洞窟に住み着いた魔物退治だった。
人的な被害は出ていないが家畜や農作物に被害が出ているとのことで、住民から依頼が出されていた。
「さて、近くまで到着しましたが、次にどうしますか?」
ゼロの質問にレオン達は互いに話し合う。
その結果レオンが方針を示す。
「一度町に行って情報を集めてみます。洞窟の規模や構造も聞きたいし、魔物の具体的な情報も欲しいところです」
ゼロは頷く。
冒険者としては情報収集は当然のことだが、血気に逸る新人冒険者だと疎かにしがちなことでもある。
とりあえずレオン達に任せても問題なさそうである。
元々はレオン達が受けた依頼にゼロは同行しているだけであり、よほどの問題がない限りは口出しをするつもりも必要もないのである。
「分かりました。情報収集はレオンさん達でお願いします。黒等級の私が一緒に行くと情報収集の難易度も無駄に上がりますから。私は件の洞窟の手前で様子を見ながら待機しています」
ここで一行は町に立ち寄って情報収集するレオン達パーティーと洞窟に先行するゼロとレナの二手に分かれて行動することにした。
洞窟に先行したゼロ達は洞窟から少し離れた場所で様子を窺った。
あまり接近して住み着いている魔物に気付かれては元も子もないのでそうならないように細心の注意を払う。
「ゼロ、この洞窟、どう見ますか?」
ゼロは洞窟の外観を観察する。
入口が石材で補強してあるところを見ると古い坑道のようだ。
「坑道跡か、結構深いかもしれませんね。住み着いているのはゴブリンかオークあたりでしょうか?ただ、他の魔物も定着しているかも。だとしたら少し手間かもしれませんね」
「彼等には荷が重いですか?」
「いや、被害の規模から見て対象となる魔物はそれ程の数ではないでしょう。ただ、元々定着していた魔物がどの程度になるか」
そこで思い出したように振り返ったゼロはレナを見た。
「ところでレナさん、前から気になっていましたけど、私に対してそんなに丁寧な話し方をしなくてもいいですよ?」
「なっ!それを言うならばゼロもではないですか?」
「私はこれが素です。物心ついたときから話し相手といえば死霊術の師匠しかいませんでしたから。それにレナさんは私より年長者なんですから遠慮は無用ですよ」
「・・・」
ゼロの言葉にレナは一気に不機嫌になる。
「分かりました!もう気を使わないで話し・・すから!」
「?なんだか、怒ってますか?」
「怒ってないっ!」
2人の間に微妙な空気が流れたその時、情報収集に当たっていたレオン達が合流してきた。
ルシアとマッキは異様な雰囲気を察知したが、レオンとカイルは気づいていない。
「町で情報を仕入れてきました。この洞窟は古い採石場で奥行きは深いですが、横道等の分岐は無いそうです。住み着いているのはゴブリンで数は分からないようです。他に元々住み着いていた低級の魔物もいるようです」
概ねゼロが睨んだとおりである。
機嫌を損ねていたレナも頭を切り替える。
「そうなると、あとは洞窟内に入って確認するしかないわね」
ゼロも頷く。
「レオンさん達が来るまでの間に洞窟に出入りする魔物はいませんでしたので、現在は中にいるとみて良いでしょう。さて、レオンさん達は中に入るに当たって何か考えはありますか?」
「入る前に方針を決めておこうと思います。隊列は俺が先頭、次にルシア、カイル、マッキの順番でどうですか?」
レオンの案にゼロは首を振る。
「一見するとその隊列ならば前方からの敵には有効に感じるかもしれませんが、問題があります」
「やはり、後方への備えですか?」
レオンも気がついていたようだが、ゼロは更に続ける。
「それも問題の1つですが、他にもあります。レオンさんの武器は槍、狭い坑道内で槍を持つレオンさんの背後で格闘戦のルシアさんが連携をとれますか?」
「確かに、レオンが槍を振り回していたら私は前に飛び出せないわ」
ルシアも頷く。
「そうです。このような場合に正解というものはありませんが、レオンさんが前衛、短弓や投げナイフを持つマッキさんが少し離れて続き、後衛にカイルさんで、カイルさんの護衛を兼ねてルシアさんが控えるのが無難だと思いますよ。あと、今回はレナさんの近接戦闘の経験稼ぎも兼ねていますので、マッキさんの位置にレナさんに入ってもらいましょう。私は最後尾の更に後ろにいます」
一行は改めて隊列を確認する。
ゼロとレナは夜目の魔法を自らにかけるが、レオン達は照明具を使用する。
松明をマッキが持ち、他にレオンが腰にランタンを吊す。
洞窟に侵入する前にゼロは火をつけた松明を洞窟内に投げ込んだ。
「松明は洞窟内では照明だけの役割ではありません。洞窟内に空気が無いと火が消えてしまいますし、引火性の物質が充満していたら爆発します」
洞窟内で松明は燃え続けている。
「魔物が住み着いたからといって洞窟内の環境が安全だとは限りません。このような安全確認方法は魔物に察知される可能性はありますが、洞窟内で倒れるよりはマシですね」
レオン達は頷く。
「更に洞窟内に入って少し進んだら目を慣らすために少し立ち止まって待機したらいいですよ」
ゼロの注意点を聞いて準備を整えた一行はいよいよ洞窟内に足を踏み入れた。
ゼロの前には5人の冒険者、4人組のパーティーと他に1人。
4人組のパーティーは全員が登録したばかりの白等級で今回が初めての冒険だとのこと。
リーダーの若者は槍を持った戦士レオン、魔術師の少年カイルに武闘僧侶の少女ルシア、斥候を勤めるホビットの少女マッキだった。
聞けば冒険者登録し、右も左も分からないまま依頼を受けたところにギルドから今回の提案を受けたらしい。
レオンの
「黒等級のネクロマンサーの方だと聞いて戸惑いましたが、ギルド職員に真面目で優しい人だと聞いてお願いしました」
との話しにゼロの脳裏に1人のギルド職員が浮かんだ。
レオンに続いてルシアが口を開く。
「私達はパーティーを組んだばかりで全員が実戦の経験がありません。これから冒険者として長く生き延びるためにできることは何でもやってみようと思ったんです」
その言葉にパーティー全員が頷く。
駆け出しの冒険者にありがちな無謀さが無い慎重なパーティーだ。
パーティーのバランスも良い、無事に生き延びれば高みを目指すことができるだろうと思う。
そしてゼロはもう1人の冒険者に目を向ける。
「で、なぜ貴女がここにいるのですか?」
もう1人の冒険者は女性魔術師、首から下げた認識票は紫。
レナ・ルファードだった。
「私も実戦指導を受けたくて彼等に頼んで今回の依頼に同行させてもらうことにしました」
ゼロは呆れ顔だ。
「実戦指導も何も、貴女はどちらかといえば指導する側じゃないんですか?」
「いえ、今回は私は魔法抜きでの戦い方を学びたいのです。魔法を使えない事態に陥ったときの対処について考えているときにギルドから今回の提案を受けて彼等に頼んで同行させてもらうことにしたんです」
レナの言葉にルシアが続く。
「私達もゼロさんだけでなくレナさんが同行してくれるならば心強いのでお願いしました。今回はギルドと私達とレナさん、みんなの利害が一致したんです」
1人だけ利害が一致していないゼロの脳裏に笑顔が素敵なギルド職員が暗躍している姿が浮かび、肩を落とした。
早速都市を出発した一行は依頼の出された町の近くに到着した。
レオン達が受けた依頼はある町の近くにある洞窟に住み着いた魔物退治だった。
人的な被害は出ていないが家畜や農作物に被害が出ているとのことで、住民から依頼が出されていた。
「さて、近くまで到着しましたが、次にどうしますか?」
ゼロの質問にレオン達は互いに話し合う。
その結果レオンが方針を示す。
「一度町に行って情報を集めてみます。洞窟の規模や構造も聞きたいし、魔物の具体的な情報も欲しいところです」
ゼロは頷く。
冒険者としては情報収集は当然のことだが、血気に逸る新人冒険者だと疎かにしがちなことでもある。
とりあえずレオン達に任せても問題なさそうである。
元々はレオン達が受けた依頼にゼロは同行しているだけであり、よほどの問題がない限りは口出しをするつもりも必要もないのである。
「分かりました。情報収集はレオンさん達でお願いします。黒等級の私が一緒に行くと情報収集の難易度も無駄に上がりますから。私は件の洞窟の手前で様子を見ながら待機しています」
ここで一行は町に立ち寄って情報収集するレオン達パーティーと洞窟に先行するゼロとレナの二手に分かれて行動することにした。
洞窟に先行したゼロ達は洞窟から少し離れた場所で様子を窺った。
あまり接近して住み着いている魔物に気付かれては元も子もないのでそうならないように細心の注意を払う。
「ゼロ、この洞窟、どう見ますか?」
ゼロは洞窟の外観を観察する。
入口が石材で補強してあるところを見ると古い坑道のようだ。
「坑道跡か、結構深いかもしれませんね。住み着いているのはゴブリンかオークあたりでしょうか?ただ、他の魔物も定着しているかも。だとしたら少し手間かもしれませんね」
「彼等には荷が重いですか?」
「いや、被害の規模から見て対象となる魔物はそれ程の数ではないでしょう。ただ、元々定着していた魔物がどの程度になるか」
そこで思い出したように振り返ったゼロはレナを見た。
「ところでレナさん、前から気になっていましたけど、私に対してそんなに丁寧な話し方をしなくてもいいですよ?」
「なっ!それを言うならばゼロもではないですか?」
「私はこれが素です。物心ついたときから話し相手といえば死霊術の師匠しかいませんでしたから。それにレナさんは私より年長者なんですから遠慮は無用ですよ」
「・・・」
ゼロの言葉にレナは一気に不機嫌になる。
「分かりました!もう気を使わないで話し・・すから!」
「?なんだか、怒ってますか?」
「怒ってないっ!」
2人の間に微妙な空気が流れたその時、情報収集に当たっていたレオン達が合流してきた。
ルシアとマッキは異様な雰囲気を察知したが、レオンとカイルは気づいていない。
「町で情報を仕入れてきました。この洞窟は古い採石場で奥行きは深いですが、横道等の分岐は無いそうです。住み着いているのはゴブリンで数は分からないようです。他に元々住み着いていた低級の魔物もいるようです」
概ねゼロが睨んだとおりである。
機嫌を損ねていたレナも頭を切り替える。
「そうなると、あとは洞窟内に入って確認するしかないわね」
ゼロも頷く。
「レオンさん達が来るまでの間に洞窟に出入りする魔物はいませんでしたので、現在は中にいるとみて良いでしょう。さて、レオンさん達は中に入るに当たって何か考えはありますか?」
「入る前に方針を決めておこうと思います。隊列は俺が先頭、次にルシア、カイル、マッキの順番でどうですか?」
レオンの案にゼロは首を振る。
「一見するとその隊列ならば前方からの敵には有効に感じるかもしれませんが、問題があります」
「やはり、後方への備えですか?」
レオンも気がついていたようだが、ゼロは更に続ける。
「それも問題の1つですが、他にもあります。レオンさんの武器は槍、狭い坑道内で槍を持つレオンさんの背後で格闘戦のルシアさんが連携をとれますか?」
「確かに、レオンが槍を振り回していたら私は前に飛び出せないわ」
ルシアも頷く。
「そうです。このような場合に正解というものはありませんが、レオンさんが前衛、短弓や投げナイフを持つマッキさんが少し離れて続き、後衛にカイルさんで、カイルさんの護衛を兼ねてルシアさんが控えるのが無難だと思いますよ。あと、今回はレナさんの近接戦闘の経験稼ぎも兼ねていますので、マッキさんの位置にレナさんに入ってもらいましょう。私は最後尾の更に後ろにいます」
一行は改めて隊列を確認する。
ゼロとレナは夜目の魔法を自らにかけるが、レオン達は照明具を使用する。
松明をマッキが持ち、他にレオンが腰にランタンを吊す。
洞窟に侵入する前にゼロは火をつけた松明を洞窟内に投げ込んだ。
「松明は洞窟内では照明だけの役割ではありません。洞窟内に空気が無いと火が消えてしまいますし、引火性の物質が充満していたら爆発します」
洞窟内で松明は燃え続けている。
「魔物が住み着いたからといって洞窟内の環境が安全だとは限りません。このような安全確認方法は魔物に察知される可能性はありますが、洞窟内で倒れるよりはマシですね」
レオン達は頷く。
「更に洞窟内に入って少し進んだら目を慣らすために少し立ち止まって待機したらいいですよ」
ゼロの注意点を聞いて準備を整えた一行はいよいよ洞窟内に足を踏み入れた。
応援ありがとうございます!
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