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微睡みの中で
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闇の中を真っ直ぐに続く道をゼロは歩いていた。
ゼロの進む先には様々な人々が立ちはだかっている。
男もいれば女もいる、兵士や魔術師もいれば猟師のような者もいる。
皆一様に無言でゼロの行く道を遮り、ゼロを止めようとするが、ゼロは歩みを止めない。
ゼロを止めようとする人々も、ゼロが目の前を通り過ぎるとゼロに付き従って歩き出す。
その数は数十、数百に及ぶ。
ゼロの進む先に3人の騎士と5人の魔術師が立っていた。
「どうか、お戻り下さい」
その中の隻眼の騎士がゼロに声を掛ける。
ゼロは立ち止まって8人を見渡すが、再び歩き始めてその横を通過すると他の人々同様に8人もゼロに付き従って歩き出す。
更にその先には若い男女が立っていた。
細身に金髪の若者と黒髪に黒い瞳の美しい女性だ。
金髪の若者が膝をついて頭を垂れる。
「マスター、この先には進んではいけません。まだその時ではありません」
黒髪の女性も口を開く。
「主様、この先は貴方様の行くべき場所ではありません。まだ逝かないでください。私達をお導きください」
両の手を組み、祈るように懇願する女性を歩みを止めて見ていたゼロだが、再び前を向いて歩き出す。
「主様っ!」
女性が縋ろうとするが、ゼロが通り過ぎた途端に表情を無くしてゼロに続いて歩き出す。
その瞳は燃える炎のように赤く染まっていた。
金髪の若者も同様に歩き出す。
ゼロの背後には無数のアンデッド達が付き従って歩く。
もうゼロの前に彼を遮ろうとする者はいない。
その時
「未熟者!」
ゼロの脳裏に聞き覚えのない、懐かしい声が響いた。
治療院に運び込まれて5日、ゼロの意識は戻らず、昏睡状態が続いていた。
その5日目、ギルドでの仕事を片付けたシーナがゼロの見舞いにやってきた。
シーナ自身レナ達からゼロの状況を聞いていたため、治療院に入院しているゼロは今までのゼロではないと、ある程度の覚悟はしていた。
しかし、病室に入り、ベッドの上で微動だにしない上、左目を失い、顔の殆どが包帯に包まれたゼロの姿を見て流石に言葉を失ったが、涙を流すようなことはなかった。
シーナは自分が強くなろうと決めた。
その上でゼロが無事ならばどんな状況でも受け入れる覚悟を決めていたのだ。
一方で密かな期待の気持ちを抱いていた。
これほどの怪我だ、冒険者として復帰するのは困難なのではないかという思い。
ゼロがネクロマンサーを辞めることは無いだろうが、冒険者を引退し、魔導院にでも所属して死霊術の研究に取り組むのではないか?
そうなれば、ゼロはネクロマンサーでありながら今までのような命の危険は無くなるだろう。
そんなゼロを支えていくこともできるのではないかという淡い期待だった。
その日、シーナは時間が許す限りゼロの傍らでその手を握り続けた。
闇の中を歩き続けていたゼロは足を止めた。
「未熟者め!あの程度のトカゲを御し得ずして何が死霊術師か!」
「・・・師匠」
「死霊術師とは生と死を究める者。生と死は表裏一体、今貴様の背後には何がいる?何を背負っているのか?そして、貴様の手は何を握っているのだ?」
ゼロが振り返ればそこには無数のアンデッドが跪いている。
自分の手に視線を落とす、その手には何も握られていないが、ほのかな温かみを感じる。
優しい何かに包まれているような温かさ、そしてその温もりからは生きる力のようなものを感じた。
「今、貴様に付き従う者、貴様を待つ者、その全てが貴様の生を望んでいる。それなのに貴様だけが死に向かって歩くとは何事だ。それこそ未熟者の証しだ」
「・・・」
「不肖の弟子よ、戻るのだ。貴様に死の領域はまだ贅沢過ぎる。死者の声を聞き、死者と共に生き、生を全うしてみせろ!死ぬのはそれからだ・・・」
脳裏に響く言葉が消える。
ゼロはその場に立ち尽くしていた。
ゼロの意識は戻りつつあった。
ベッドの上で身動き1つ出来ず、それどこか、未だ意識ははっきりせず、微かな微睡みの中にいた。
「・・く・・戻ってき・・・」
周囲の音もよく聞こえない。
耳に入る声は近くもあり、遠くにも聞こえる。
妙に身体が冷えるが、その右手だけは温もりに包まれていた。
ゼロは微睡みの中、その温もりを心地良く感じていた。
ゼロの進む先には様々な人々が立ちはだかっている。
男もいれば女もいる、兵士や魔術師もいれば猟師のような者もいる。
皆一様に無言でゼロの行く道を遮り、ゼロを止めようとするが、ゼロは歩みを止めない。
ゼロを止めようとする人々も、ゼロが目の前を通り過ぎるとゼロに付き従って歩き出す。
その数は数十、数百に及ぶ。
ゼロの進む先に3人の騎士と5人の魔術師が立っていた。
「どうか、お戻り下さい」
その中の隻眼の騎士がゼロに声を掛ける。
ゼロは立ち止まって8人を見渡すが、再び歩き始めてその横を通過すると他の人々同様に8人もゼロに付き従って歩き出す。
更にその先には若い男女が立っていた。
細身に金髪の若者と黒髪に黒い瞳の美しい女性だ。
金髪の若者が膝をついて頭を垂れる。
「マスター、この先には進んではいけません。まだその時ではありません」
黒髪の女性も口を開く。
「主様、この先は貴方様の行くべき場所ではありません。まだ逝かないでください。私達をお導きください」
両の手を組み、祈るように懇願する女性を歩みを止めて見ていたゼロだが、再び前を向いて歩き出す。
「主様っ!」
女性が縋ろうとするが、ゼロが通り過ぎた途端に表情を無くしてゼロに続いて歩き出す。
その瞳は燃える炎のように赤く染まっていた。
金髪の若者も同様に歩き出す。
ゼロの背後には無数のアンデッド達が付き従って歩く。
もうゼロの前に彼を遮ろうとする者はいない。
その時
「未熟者!」
ゼロの脳裏に聞き覚えのない、懐かしい声が響いた。
治療院に運び込まれて5日、ゼロの意識は戻らず、昏睡状態が続いていた。
その5日目、ギルドでの仕事を片付けたシーナがゼロの見舞いにやってきた。
シーナ自身レナ達からゼロの状況を聞いていたため、治療院に入院しているゼロは今までのゼロではないと、ある程度の覚悟はしていた。
しかし、病室に入り、ベッドの上で微動だにしない上、左目を失い、顔の殆どが包帯に包まれたゼロの姿を見て流石に言葉を失ったが、涙を流すようなことはなかった。
シーナは自分が強くなろうと決めた。
その上でゼロが無事ならばどんな状況でも受け入れる覚悟を決めていたのだ。
一方で密かな期待の気持ちを抱いていた。
これほどの怪我だ、冒険者として復帰するのは困難なのではないかという思い。
ゼロがネクロマンサーを辞めることは無いだろうが、冒険者を引退し、魔導院にでも所属して死霊術の研究に取り組むのではないか?
そうなれば、ゼロはネクロマンサーでありながら今までのような命の危険は無くなるだろう。
そんなゼロを支えていくこともできるのではないかという淡い期待だった。
その日、シーナは時間が許す限りゼロの傍らでその手を握り続けた。
闇の中を歩き続けていたゼロは足を止めた。
「未熟者め!あの程度のトカゲを御し得ずして何が死霊術師か!」
「・・・師匠」
「死霊術師とは生と死を究める者。生と死は表裏一体、今貴様の背後には何がいる?何を背負っているのか?そして、貴様の手は何を握っているのだ?」
ゼロが振り返ればそこには無数のアンデッドが跪いている。
自分の手に視線を落とす、その手には何も握られていないが、ほのかな温かみを感じる。
優しい何かに包まれているような温かさ、そしてその温もりからは生きる力のようなものを感じた。
「今、貴様に付き従う者、貴様を待つ者、その全てが貴様の生を望んでいる。それなのに貴様だけが死に向かって歩くとは何事だ。それこそ未熟者の証しだ」
「・・・」
「不肖の弟子よ、戻るのだ。貴様に死の領域はまだ贅沢過ぎる。死者の声を聞き、死者と共に生き、生を全うしてみせろ!死ぬのはそれからだ・・・」
脳裏に響く言葉が消える。
ゼロはその場に立ち尽くしていた。
ゼロの意識は戻りつつあった。
ベッドの上で身動き1つ出来ず、それどこか、未だ意識ははっきりせず、微かな微睡みの中にいた。
「・・く・・戻ってき・・・」
周囲の音もよく聞こえない。
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ゼロは微睡みの中、その温もりを心地良く感じていた。
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