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アンデッド
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駆け寄るオレに気付いてヤムトが怪訝な顔をした。
「気を付けろ」
何と言えばいいのか分からず中途半端な声をかけてしまった。
「何を……」
言いかけたところでヤムトはその尖った耳をピクリと振るわせた。直後、弾かれたように背後を振り返る。
その額に振り下ろされた剣を咄嗟にあげた左腕が止めた。刃は身を裂き中心近くまで到達するが、発達した筋肉に妨げられて骨を断つまでにはいたらなかったようだ。
悲鳴ひとつあげることなく、ヤムトは敵に掴みかかった。
体当たりを食らわせると、そのまま流れるような動作でショートソードを抜いて袈裟懸けに斬りつけた。こちらは背骨すら両断しそうなほどの苛烈な攻撃だ。
敵は声もなく崩れ落ちた。
「おい、そいつ」
オレは思わず声を上げた。
ヤムトに斬りかかったのは、つい今しがたルシッドが止めを刺したといった敵だった。
「死んでなかったのか」
そう続けたオレに答えたのはヨールだった。
「いや違う。そいつは間違いなく死んでいた。というか今も死んでる」
その言葉でオレは気付いた。ヨールは生命感知を使っているのだ。
「アンデッドか」
アンデッド──ゾンビとか骸骨のやつとか、人間の死体が動いて襲い掛かってくる系のモンスターで、ファンタジーの世界では割とメジャーな存在だ。
もちろんオレが転生したこの世界にもいる。いるのだが知名度のわりにどこにでもいるというわけでもなく、まだ遭ったことはなかった。
というか、死んだ人間が動き出して襲い掛かってくるなんて怖すぎないか? そもそもオレはゾンビ映画を観れないタイプだ。だがこの世界の奴らは割と平気(というわけでもないのだろうけど)にアンデッドと戦ったりする。
エンカウントこそしてないが、オレも冒険者をやっている以上は一般常識としてアンデッドに関しての知識もある。
この世界には死んだ人間を蘇らせることができる魔法がある。
もちろん誰でも使えるわけではない。ものすごい高位で徳の高い神官だけが使える神聖魔法で、それも死体にほとんど欠損がないとか腐敗していないとか他の一切の魔力の干渉を受けないとかの幾つかある条件を満たしたうえでようやく使える魔法だ。
それでも成功率は100パーセントではない。
けっこうな割合で失敗して、しかも失敗のしかたによっては対象者をアンデッドにしてしまうことがあるのだ。
超高額の費用(豪邸が二、三軒建てれるぐらいの金額らしい)を支払い、それでもアンデッドになってしまうリスクを冒してまで復活魔法をかけてもらおうなんて者はあまりおらず、復活魔法の失敗によって生み出されるアンデッドというのはほとんどいない。
問題なのは失敗復活魔法を応用してわざとアンデッドを生み出そうとする、いわゆる死霊魔術師と呼ばれる変態が存在することだ。
死霊魔術師が使う死霊魔術は体系だった魔術ではない。術者それぞれの研究によって生み出された死体を操る魔術をひとまとめに死霊魔術と呼んでいるので、中には薬物を使用するものや人間以外の動物や魔物を対象にするものもある。
その中で主流となっているのが失敗復活魔法を改変した死霊魔術だ。
いくらアンデッドに対しての忌避感が薄いこの世界でも、死体を操り人形として使役すれば便利だと考える神経がオレには分からないが、こういったことを好む人種も存在する。
そして世間では暗黙の了解というか、表立って口にすることはないが、死霊魔術師になるのはほぼ100パーセント識人の奴らだ。
というわけで、この事件の背景もなんとなく見えてきた気がする。
「ルシッド、ヤバいぞ!」
ヨールが叫んだ。
だが少し遅かった。
ルシッドたちのすぐそばにあった岩陰から五体の人影が飛び出し、ルシッドたちに向かって一斉に武器を振り下ろした。
血しぶきが上がった。予想もしていなかったルシッドとヤムトに躱す術はなかった。
ゾンビたちの刃はどれも致命傷になるものではなかったが、二人は咄嗟に腕を上げて頭部や首筋を庇うのが精一杯だった。
だけどオレにはあいつらを助けに行くことはできなかった。
振り返って剣を構え、今来た道を睨みつける。
敵に死霊魔術師がいて死んだ者を操ることができるのなら、洞窟の外で倒したやつらがゾンビとなって背後から襲いかかってくるかも知れないのだ。
咆哮と雄叫び。
ヤムトとルシッドが軽くはない手傷を追いながらもゾンビたちを片付けているのだ。
いや、これは──
「力が漲る」
腹の底に暖かい物を感じる。腕や手足に活力が満ちる。
この咆哮は、それを聞く仲間たちを鼓舞しそのステータスを一時的に上げるヤムトのスキル、咆哮だ。
「気を付けろ」
何と言えばいいのか分からず中途半端な声をかけてしまった。
「何を……」
言いかけたところでヤムトはその尖った耳をピクリと振るわせた。直後、弾かれたように背後を振り返る。
その額に振り下ろされた剣を咄嗟にあげた左腕が止めた。刃は身を裂き中心近くまで到達するが、発達した筋肉に妨げられて骨を断つまでにはいたらなかったようだ。
悲鳴ひとつあげることなく、ヤムトは敵に掴みかかった。
体当たりを食らわせると、そのまま流れるような動作でショートソードを抜いて袈裟懸けに斬りつけた。こちらは背骨すら両断しそうなほどの苛烈な攻撃だ。
敵は声もなく崩れ落ちた。
「おい、そいつ」
オレは思わず声を上げた。
ヤムトに斬りかかったのは、つい今しがたルシッドが止めを刺したといった敵だった。
「死んでなかったのか」
そう続けたオレに答えたのはヨールだった。
「いや違う。そいつは間違いなく死んでいた。というか今も死んでる」
その言葉でオレは気付いた。ヨールは生命感知を使っているのだ。
「アンデッドか」
アンデッド──ゾンビとか骸骨のやつとか、人間の死体が動いて襲い掛かってくる系のモンスターで、ファンタジーの世界では割とメジャーな存在だ。
もちろんオレが転生したこの世界にもいる。いるのだが知名度のわりにどこにでもいるというわけでもなく、まだ遭ったことはなかった。
というか、死んだ人間が動き出して襲い掛かってくるなんて怖すぎないか? そもそもオレはゾンビ映画を観れないタイプだ。だがこの世界の奴らは割と平気(というわけでもないのだろうけど)にアンデッドと戦ったりする。
エンカウントこそしてないが、オレも冒険者をやっている以上は一般常識としてアンデッドに関しての知識もある。
この世界には死んだ人間を蘇らせることができる魔法がある。
もちろん誰でも使えるわけではない。ものすごい高位で徳の高い神官だけが使える神聖魔法で、それも死体にほとんど欠損がないとか腐敗していないとか他の一切の魔力の干渉を受けないとかの幾つかある条件を満たしたうえでようやく使える魔法だ。
それでも成功率は100パーセントではない。
けっこうな割合で失敗して、しかも失敗のしかたによっては対象者をアンデッドにしてしまうことがあるのだ。
超高額の費用(豪邸が二、三軒建てれるぐらいの金額らしい)を支払い、それでもアンデッドになってしまうリスクを冒してまで復活魔法をかけてもらおうなんて者はあまりおらず、復活魔法の失敗によって生み出されるアンデッドというのはほとんどいない。
問題なのは失敗復活魔法を応用してわざとアンデッドを生み出そうとする、いわゆる死霊魔術師と呼ばれる変態が存在することだ。
死霊魔術師が使う死霊魔術は体系だった魔術ではない。術者それぞれの研究によって生み出された死体を操る魔術をひとまとめに死霊魔術と呼んでいるので、中には薬物を使用するものや人間以外の動物や魔物を対象にするものもある。
その中で主流となっているのが失敗復活魔法を改変した死霊魔術だ。
いくらアンデッドに対しての忌避感が薄いこの世界でも、死体を操り人形として使役すれば便利だと考える神経がオレには分からないが、こういったことを好む人種も存在する。
そして世間では暗黙の了解というか、表立って口にすることはないが、死霊魔術師になるのはほぼ100パーセント識人の奴らだ。
というわけで、この事件の背景もなんとなく見えてきた気がする。
「ルシッド、ヤバいぞ!」
ヨールが叫んだ。
だが少し遅かった。
ルシッドたちのすぐそばにあった岩陰から五体の人影が飛び出し、ルシッドたちに向かって一斉に武器を振り下ろした。
血しぶきが上がった。予想もしていなかったルシッドとヤムトに躱す術はなかった。
ゾンビたちの刃はどれも致命傷になるものではなかったが、二人は咄嗟に腕を上げて頭部や首筋を庇うのが精一杯だった。
だけどオレにはあいつらを助けに行くことはできなかった。
振り返って剣を構え、今来た道を睨みつける。
敵に死霊魔術師がいて死んだ者を操ることができるのなら、洞窟の外で倒したやつらがゾンビとなって背後から襲いかかってくるかも知れないのだ。
咆哮と雄叫び。
ヤムトとルシッドが軽くはない手傷を追いながらもゾンビたちを片付けているのだ。
いや、これは──
「力が漲る」
腹の底に暖かい物を感じる。腕や手足に活力が満ちる。
この咆哮は、それを聞く仲間たちを鼓舞しそのステータスを一時的に上げるヤムトのスキル、咆哮だ。
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