女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有

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第21話 一級神官の服を着た見習い神官(2)

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「ロルカって、奴隷商人のことか?」

「それそれ。詳しいことは知らないけど、『東方大陸出身の小僧に思知らせてやる』って息巻いているらしいぞ。俺は身に覚えがないからお前だろ?」

「逆恨みだ」

 嫌なことを思いだした、とげんなりする図南に拓光が聞く。

「何があったんだ?」

「詳しく説明するのも面倒なんだが――――」

 捕らえた盗賊たちの護送を代わりにするという名目で格安で買い叩かれそうになったこと。
 もう、承諾するしかない状況に追い込まれて言葉に詰まっているところに、神聖教会の馬車隊が来て商談そのものがなくなったことを告げた。

「ご愁傷さま」

 苦笑する拓光とは反対の方向から紗良のが話しかけた。

「図南、先手を打ってルードヴィッヒのお爺ちゃんに相談する?」

「些末なことで爺さんを煩わせるのもなー」

 しばし考えこむと、図南は拓光に向かって言う。

「こっちでも気を付けるけど、拓光の方でも何か掴んだら教えてくれ」

「自分で対処するのか?」

「俺とお前とで対処する」

「あたしもー」

 紗良が間髪容れずに名乗り出た。

「よし! じゃあ、三人で対処しよう」

 慣れない手綱さばきで紗良が図南の馬と自分の馬を並走させる様子を見ながら拓光が聞く。

「なあ、二人とも神官になるんだって?」

 神聖教会の神官や騎士たちの間でささやかれてるだけでなく、隊商や冒険者たちの間でも噂になっているのだという。

(まあ、聖教教会の天幕で寝かせてもらった上、神官服まで貸してもらったんだもんな。そりゃ、噂にもなるか)

「取り敢えず、な」

「現時点では仮採用です。正式に神官になるかは、神殿で半年間の試用期間を過ごしてからの結論になります」

 曖昧に答える図南ときっぱりと否定する紗良の言葉が同時に拓光の耳に届いた。
 拓光はもう一つの噂についても聞くことにした。

「隊商の人たちの噂だと、高位の神官として採用された、ってことになってるぞ」

 本当のところはどうなのだ、と視線で問う。

「高位? そんな話は聞いていないぞ」

「あたしも図南も見習い神官のはずです、けど……」

 そう言って紗良が自身の神官服を見下ろし、次いで図南と視線を交わした。
 その様子に何かあると感じた拓光が別の噂を口にする。

「隊商の人たちや冒険者さんたちの態度が違うんだけど。この世界の神官ってそんなに尊敬されているのか?」

 拓光が図南や紗良のことを話題にすると、途端に隊商の人たちや冒険者たちが恐縮して口を閉ざしてしまうのだ、と伝えた。
 
「いや、この神官服が割と上の階級の神官服らしいんだ」

 図南が答えた。

「服の問題なのか?」

「服の問題だ」

「あたしたちは何の階級もないんですよ。ただの見習い神官です」

 神官には階級と役職がある。
 図南と紗良が着ている神官服は上級神官の位にある者だけがまとうことを許されたものだった。

「そんな凄い神官服をよく貸してくれたな」

 驚く拓光に紗良が軽く返す。

「これもルードヴィッヒおじいちゃんのお陰です」

「誰?」

「この馬車隊の責任者の大司教。カッセル市の神殿の神殿長に就任するんだと」

「偉いのか?」

「一級神官の大司教だ」

 教えられたルードヴィッヒ・フューラー大司教の階級と役職を告げた。

「よく分からないけど、偉いんだと言うことは分かった。で、その偉い人がお前ら二人の力を見込んだ、ってことか」

 図南自身、階級と役職を十分に理解していないため、フューラー大司教がどの程度地位にあるのか分かっていなかった。
 当然、説明する方が理解していない階級と役職の重みなど伝わるはずもない。

「神聖魔法が使えたから、らしい」

 フューラー大司教の思惑や図南自身が神聖騎士団に所属するかもしれない、と言うことはこの場では伏せることにした。

 そして、詳しいことは今夜にでも三人で話し合おうと告げた。
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