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~ 傷つきゆく者達 ~
しおりを挟むあいつらは無事か?
助けに行けなかった
キィンッ
刀に生き、大切な仲間たちに出会い
刀に生き 大切な仲間たちを失った
思えば、ずっと 戦ってきた 俺は・・・・・・
キィンッ キンッ キィンッッ
殺らねば、殺られる 死ぬか生きるか
ああ この一太刀が首にあたれば首は跳ぶ、毎瞬がそんな瞬間の連続。そんな人生を生きて来た。
戦
今になってこんな事を思う、俺は今まで一体何と戦ってきたのだろうか?
この戦いの末、辿り着き得たものは。
何故だろう、こんな事を考えるのは?
ああ
身体が重い
その瞬間真堂丸の口元が緩む
ああ
道来
生きていたんだな
「真堂丸 大丈夫か?」
真堂丸は薄っすらと微笑む
「私はお前を文太に会わす、生きて帰るぞ」
真堂丸は薄っすら、強く頷いた。
キィンッ キィンッ
「二人は弱ってる、こいつらを殺せばたんまり報酬が貰えるぞ」
「殺せ~~ 名声と財宝は俺の者だぁ」
真堂丸達に加勢に来た人間が、倒れながら大帝国の兵の足にしがみ付き必死に叫んでいた。
「この人達は俺たち、この国の人間の為に戦ったんだ、せっかく終わる悲劇の時代を何故目の前の私欲で再び握りしめる、お前達は本当に愚かだ、本当に大切なものを疎かに、一時だけの欲に目がくらみ」グサッ
「うるせー、ようやく俺たちの家族が豊かに暮らせる機会を得れるんだ」
「こいつらを殺せば」
キィンッ キィンッ
「もらったあ」道来の死角から伸びる刀
キィンッ
「真堂丸っ 馬鹿野郎」
道来を守ったのは真堂丸の刀
ズバッ
真堂丸の肩は斬られ血が吹き出す。
「お前、これ以上傷を負えば本当に死ぬぞ。今更私の命を。文太に会いたいんだろ」
ああ
そうだ
文太に会いたい
俺は文太に会いたい
真堂丸はふらついていた片足をしっかり地面につける
「よしっ」まだ大丈夫だ、気力はある。
真堂丸 死ぬんじゃないぞ 絶対に。
道来がそんな事を思った時
バッ 一人の姿が目に飛び込む
キィンッ
「道来さん」
「太一、お前何故来た」
「俺が二人を置いて先に帰る訳ないでしょう」
真堂丸は自身の意識が限界な最中も、道来の表情に気づいていた。
酷く不安気で、少し後悔した様な表情
太一には戻らず、生きて欲しかった。そんな気持ちを汲み取れる表情をしていた。
「真堂丸、お前の死角のこっち側は私と太一で守る、そっちを任せて良いか?」
「ああ」
真堂丸。
私は知っていた、この戦が始まった時だって既にお前の身体は万全ではなかったんだろう。
一斎との決闘の傷は完治していなかったんだ。
お前は絶対にそんな素振りは見せない、どんな逆境にも弱音や言い訳はしない。
常に前を見ていた、出来る、を信じていた。
己を仲間を信頼していた。
私はお前の生き様から沢山の事を学んだ。
キィンッ
お前をもう一度 文太に会わせる
太一は本当に道来の事をなんでも理解していた。
些細な素振り、一瞬の表情や反応、手に取る様にまるで自分の事のように道来の気持ちを理解していた。
でも、その気持ち道来さん云々ではなく、自分の本心としても同じこと。
真の兄貴を生かし、文太の元に行かしてあげたい。
しかし、何故ここまで道来の気持ちを手に取る様に太一は分かっていたのか?
それはきっと、心よりこの人間を愛していたからかもしれない。きっと太一は道来にどんな事をされても、本当の意味で嫌う事は無いだろう。裏切る事はないだろう。
その根底にあるのは、口先だけの愛ではない。
利己的な愛ではない、自分だけ可愛さの愛ではない
本当に心の底から無条件に愛する心より道来を大切に想った愛
人は皆それを持っている。
だが時に自我がそれを濁らせる、欲がそれを惑わせる、大切な真の愛に気づき生きた人間は本当の愛を自身に見つける。
己を忘れ真の愛より人を愛した。
自分のいないそこに、他者など居なかった
目の前に居る者
そこに居たのは自分である 同じ命……
そして・・・
それは起こる
ザッ 大帝国の兵の刀が確実に道来の急所を捉えていた。
駄目だ 間に合わない
バッ
身体は勝手に動いていた
気づいたら自身の身を呈して愛する者の盾になっていたのだ
「太一いいいいいいいいいっ」
戦場の中、凛と千助も戦っていた。
駄目だ、このままじゃ俺たちは殺される
千助は幸運にも埋められ、塞がりかかる穴に気付く。それは大帝国精鋭部隊が道を抜ける時に掘り、入り口を他の者に気付かれぬように狼泊が埋めた穴
一人隠れられる
千助は微笑んだ
「凛、ここに立っていてくれ」千助は凛を穴の前に立たせ、己の身をかがめる。
「兄貴どうする、敵がこっちに来る、あたいらはもう」
「敵を見ていてくれ、敵がこっちに気づく前に教えてくれ」
「分かった」
千助はしゃがみ穴を除き込んでいた。
「兄貴、来たぞ もう助かりそうもない」
「兄貴?」
千助の姿が見当たらない
「兄貴?」
何処?
ドドドドドドドッ
近づいてくる大帝国の兵達
殺される
兄貴は何処?
えっ?
兄貴
次の瞬間
凛の視界は真っ暗になる
なに?
何が起こったの?
何も見えない
自身は真っ暗闇の中に居たのだ
外から聞こえる激しい音に耳を塞ぎ、怖がった。
兄貴
兄貴どこ?
ようやく音が止んだ時
聞き慣れた声がひとつ暗闇に浮かぶ
「凛大丈夫だったか?すまない、穴を見つけたから一人隠れられるか、覗いて確認していた」
「きっとお前に入れって言っても、言う事聞かないから、お前を穴にギリギリの所で引っ張り、押し込んで俺が外に出た」
「なんで兄貴も隠れなかったんだよ」
「穴を身体で塞ぎ、隠す奴が必要だろ」
「馬鹿野郎兄貴 大丈夫なんだろうな?あたいをまた一人ぼっちにするのか」
「なぁ凛 お前はもう一人ぼっちじゃない、仲間が居るじゃないか、それに俺もずっとお前を見守ってる、なぁ 凛」
「しんべえと結婚しろよ、あいつは良い奴だから兄貴は大賛成だ」
ああ
ああ
兄貴
どうしよう
どうしよう
涙が止まらない凛
大量の血が、穴の中にしたたり落ちていた
どうして人を簡単に殺せるの?
憎いから?
嘘
知らないじゃない 殺す相手の人間の事すら何も……
戦
本当にどんな人間が死んでいってるか分かってるの?
知らないじゃない、その者がどんな性格、どんな生い立ち、その人の家族、周りの人間の想いも……こんなの酷いよ……
一人殺す人間を裁くくせに、どうして戦なら許される?もっと沢山死んでるのよ、関係ない人達も、何より同じ人間じゃない…
凛の両目からこぼれ落ちる涙
可笑しすぎる、笑わせるほど滑稽
本当に馬鹿げてる いつになったら終わるの?
大切な者を失う、残された者の気持ちを想像しないから?
こんな事をするの?
兄貴 兄貴
うわああああん うわああああああああああんっ
しんべえとの式に兄貴が居ないでどうするの
ねぇ 兄貴 いっちゃやだよ
この時、太一に気を失わされたしんべえが目を覚ます。
ハッ 心臓が破裂する程の不安で目を覚ました。
「あいつらは?」
しんべえは立ち上がり、道来や太一が向かった真堂丸の方を見る
「あいつら」
もし立ち上がらなければ、気絶したままでいたのなら…
「こいつも敵じゃないか、さっき三國人と戦ってる連中と居たぞ」
しんべえはあっと言う間に10人程の人間に取り囲まれた。
「なら、こいつを殺せば報酬側のかなりもらえるかもな」
「死ね」ザンッ
キィンッ
しんべえを守るひとつの刀
それは洞海の刀だった。
「洞海」
ハァハァ 「大丈夫か?しんべえ」
「お前も真堂丸側の人間だったな、さっき戦ってるのを見た」
「なら、お前も殺せば」
ザッ 大帝国の兵士達の言葉に身構える洞海
「ちっ、俺たちも死にたくはねぇ、取り引きしようぜ。どっちかの命をとり、俺らはそれで賞金を貰えれば良い」
「どっちかの命を差し出せ」
「バキャローそんな事出来る訳」叫ぶしんべえ
洞海は思った、今の体力じゃあ、こいつらに勝てない。生き延びる為
「良いだろう、そうしよう」
「よしっ、助かったぜ 」笑い顔を見合わせる大帝国の兵達。
洞海はしんべえの方を向き、刀を構えた、
「そうだ、一人の首をくれりゃあ、お前は助かる」兵達は笑っている。
「しんべえ すまない俺の身勝手な選択を許してくれ」刀をふりかざす洞海
「やめろおおおおおおおおおおおーーーっ」
ズバッ
洞海は自身の首に刀を突き刺した。
「ひぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいっー」
「貴様ら約束は守れ、出なければ地獄に落ちても貴様らを追うぞ」
「うわああああああああ」あまりの気迫と凄み、衝撃に一目散に刀を捨てて逃げて行った。
「てめぇ、洞海 お前が自分を斬るのは分かってた 」
「すまない、嫌なものを見せたな。首にでも刀を刺してあいつらを驚かせなきゃ、必ずお前も殺されるだろうと思ってな」
「馬鹿野郎、どうして自分を生かさなかったんだ」
「分からない、理由なんて無いさ。ただそうしただけだ」
人生を生きた
毎瞬 迫り来る選択の連続に己は悩んだ。
どうすれば良い?
何が正しい? 何が正解? 何が答え?
正しいとは? なに? 正解?誰が判断する?
答え?いつになったら分かる?
ああ
正解なんてこの世にない
高得点だろうが、落第点だろうが興味はない
勝手に俺の人生を採点するがいい
俺は大失敗の落第者だろうが己の選択に後悔はない
それが俺の答え
「しんべえ 俺の分まで生きろ 約束だ」
「ああ ああっ、分かったよ 約束だ」
地面は、しんべえの瞳から落ちた雫達でぐしょぐしょに湿っていた。
俺の仲間は大馬鹿野郎達だ、どいつもこいつも自分の命を投げ出し人を守りやがる。
なぁ、自分の命も大事にしろよ。
お前が死んだら悲しむ人間が居るんだぜ。
残される人間が居るんだ。
戦場に居る人間をしんべえは見回し、歯を食いしばった。
そう、全ての人間にそんな者達がいる
どいつもこいつも 命を粗末にするな
命をなんだと思ってるんだ
しんべえが立ち上がり 叫ぶ
「ようやく、大帝国の怪物連中が居なくなり、首謀者も死んだ、今こそ大帝国の支配を終わらせられるじゃねーか。馬鹿野郎ども、ようやく掴める自由を前にいつまでビクついてんだ、変化を怖れてんだ。自分の足で立ってみやがれ、恐怖や不安からじゃない新しい道を創ってみやがれ」
命懸けで発した、しんべえのその言葉は大帝国の兵に届いたのだ。
「そうだよな、もう今なら大帝国に従う必要ないんじゃないか?」
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「そうだ 終わりだ」
「うわあああああああああー やったああああー」
小さな小さなさざ波は、どんどん広がり大きな波となり人々に伝わっていく
はははっ やった やった 戦が終わる
ハッ
「真堂丸、道来、太一は?」
伝わり広まり行く歓喜の波は、前線にはまだ届いていなかった。
そして
ズバアアアアアアアアアアアアッ
うっ
嘘だ
嘘だろ
・・・・・・・
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