冬馬君の秋と冬

だかずお

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『冬馬家のクリスマスパーティ』

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時刻は夕方過ぎ
遂に冬馬家のクリスマスパーティが開催される。
今日は激しい夜になりそうな予感。
三人の男は格好つけまくっていた。
七三分け、ジェルべったり多網
オールバック大喜
真ん中分け冬馬君だ。
バァァァーンッ 決まってる!!

ああ、これからみんなが家に来る。
もう、ワクワクが止まらない。
一体どんなパーティになると言うのだろうか?

ピンポーン 
遂に鐘、いやベル?鈴?(ちょっとしたクリスマスサプライズ的表現)玄関のチャイムが鳴る。

ドキッ まさか清香っ?
玄関に向かい一目散に走る冬馬君、心臓はばくばく鳴っている。
すぐに後ろから大喜、多網もついて来た。
ガチャ

一瞬ギョッとする
何故なら玄関の外にゴリラと、蛇と鰐の集合体、それに虎と鮫が合体した生き物が立っていたからだ。
それは、よく見ると、きみ子と蛇鰐美ちゃん、虎鮫代ちゃんだった。
やはり三人揃うと物凄いインパクトである。
「やっほーみんなお誘いありがとう」

「よっ、元気でやっとるか?」

「アパパネ パネ パネ パネ」

一気にアガル子供達
「今日は最高のクリスマスパーティにしよう」

「オーーーーーーーーーーーーーーーーッ」

するとすぐにまた、ピンポーン

再び胸の鼓動が高まる、ドキドキ ドキドキ
冬馬君は少し格好つけた表情になる。

「どうぞ」

ガチャ

「どうも」
外に立つのはなんと、多網の父事、通称サーに多網母、そして多美であった。

「どうぞ、あがって」

すると彼らの背後から ニョキッと顔を出したのはなんと、サーの親友のスー。
「あっ、スーがいる」
スーが来る事を知らなかった子供達は更にあがった。
「僕まで呼んでいただいてありがとう、そしてこないだはどうも」

これは本当に冬馬オールスターズ集合の会。
冬馬ファンにはたまらない豪華な話となる。

みんなは家にあがりリビングに入った。すかさず突っ込んだのはきみ子だった「どうしてゴミを部屋中に置いてあるの?」

それは冬馬君達が作った、折り紙をグチャグチャに丸めただけの変なオブジェであった。

すると虎鮫代ちゃんが「きみ子分かってないな、あれは芸術よんっ」

「ほっほー最近の芸術は知恵を使うのぅ」
これの何処に知恵を使ったのだ蛇鰐美ちゃんよ。

「そう言えば、清香ちゃん達は来るの?」

「うん、もうすぐ来るよ」ものすっごく嬉しそうな顔をした冬馬君。

「その清香ってのは冬馬、お前の許嫁か?」

蛇鰐美ちゃんの発言に顔を真っ赤にした冬馬君。
「ちっ ちがうよっ」

「清香ちゃんにアミちゃん久しぶりに会う」花火大会で食べたイカ焼きでも思い出したのか?虎鮫代ちゃんの舌がよー 回っている。

ペロリンチョ

大人達はさっそく乾杯を始めている。
「皆さんさっそくやりましょう」ビールを注ぐ隆

「きょっ、今日は見ず知らずの僕をお誘い頂きありがとうございました」なんだか凄い緊張してるスー。

「こちらこそ、いつも子供達を泊めさせて頂いてお世話になってます」

そこに大喜のお母さんとお父さんも合流。
(今までこれと言って目立ってないが、一応出演)
「お邪魔しまーす」
料理などを沢山作って持って来てくれた。

冬馬君は清香達が本当に来るか、少し心配になる。
遅いなぁ、まさか来ないんじゃ。
ああなんと言う事だろう、これ程のメンバーが揃えばいつもはその時点でテンションアゲアゲウルトラMAXなのだが、清香が来ると思ってたのが来なくなるだけで舟は沈みかけてしまう。

その時だった。
ピンポーン

「清香だっ」冬馬君は玄関に猛ダッシュ
とても分かりやすい男、冬馬。

この時、大喜の母がつぶやく
「あの喜び様、好きな人でも来るみたい」見事的中である。

「よっぽど清香ちゅーもんが好きなんやな。じゃあ、この蛇鰐美が一肌脱いでやるかのぅ」
脱がん方が良さそうな。

このクリスマスパーティ冬馬恋愛の行く末も楽しみである。
もちろん大喜も緊張していた。アミが来るっ。
二人の恋愛は一体どうなる?

ガチャ

冬馬君は泣きそうになった、何故なら玄関先に大好きな清香が立っていたからだ。

「メリークリスマス 冬馬君」清香が微笑む

ズギュウウウウウウウンッーーーーーーッ
ありがとうサンタクロース様、あなたはきっと僕のクリスマスプレゼントに清香と会わせてくれたんですね。

清香のあまりの可愛さと、その言葉の美しさ(ただメリークリスマスと言っただけ)に冬馬君は失神しかけた。やっぱり清香は可愛いすぎる。
しかも髪の毛がベリーショートになっとるやんけー
ズギュウウウンッ これまた冬馬君の胸ははちきれんほどバクバクしてしもうた。
可愛いすぎる、また恋に落ちてしまった。
惚れた者の弱さであろうか?気に入られようと必死に良く見られようと演じてしまう。

「あっ、あっメリークリスマス」冬馬君も頑張って必死にキメ顔をつくる。はたから見たら不気味であろう顔となる。
しかし、少しでも清香の素晴らしさに近づこうと必死だったのだ。
本当に清香は魅力的だ、それに比べて自分は。
なんだか自分がとても小さな人間に思えた。
アミも「久しぶり冬馬君」

「あっ、久しぶり さあ あがって」

「うんっ」
これにて冬馬君はスーパーウルトラ上機嫌となる。
リビングに清香とアミが来ると大喜も嬉しそうにワロウタそうな。

状況を知ってるみんなはニタニタ笑っていたそたそうな。
多網は透かしっ屁をしたそうな。

「あっ、きみ子さん久しぶり」

「やだー、私達の仲じゃない、もうきみちゃんって呼んでよ」

「分かりました」

「あっ虎鮫代さんも久しぶり」

「やだ、私達の関係じゃないの、虎で良いペロー」
それは結構微妙なあだ名だった。

「じゃあ虎鮫代ちゃんにします」

「おすっ、初めてやのぅあたいは蛇鰐美じゃ、いっちょよろしく頼むで」ドスの効いた低き声が辺りに響いた。

清香とアミは思ふ、一般人かな?と。
「よろしくお願いします」

こうしてクリスマスパーティは開催日される。

「あなた、なんかはじまりの挨拶くらいして」と正子に突っ込まれる隆は緊張しながら声を出す。
「みっ、皆さん今日は、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。みんな楽しんで下さい、メリークリスマス」

「乾杯っ」こうして冬馬家クリスマスパーティは幕を開ける。

かなり濃厚なメンツで始まるこのパーティ、タダでは済まないのは間違いない。

「おばちゃん達、今日はカマーン正子とウェルカムウィメンに変身しないの?」

「しません」正子と多網母の即答であった。
(カマーン正子とウェルカムウィメンを知りたい方は『冬馬君の夏』のスペイン旅行変より、彼女達が泥酔して生まれた怪物である)笑。

「あのこれ作って来たので食べて下さい」清香とアミがケーキを作ってくれて持って来てくれた。

「あらぁ、さすが女の子ねぇーケーキを作るなんて」大喜の母が言った。

「まっ、スーさん飲んで下さい」遠慮気味のスーに隆がビールを注ぐ。

「あっ、どっ どうも」

「そう言えば清香ちゃん髪切った?」ときみ子

「短く切ったんです」

冬馬君はチラチラずっと見ていた。
鼻の下は伸びている。

「凄く似合う」

「私も短く切ろうかな?そしたら6倍美しくなるパネパネ」虎鮫代ちゃんが唐揚げを口にほうばり言う。

冬馬君はこんな様な事を思う。虎鮫代ちゃんが髪を短くしたら、より虎と鮫が色濃く強調される顔になるだろうと。
それに何故6倍なのだろうと。

「ガハハハ心配するな虎鮫、お主はもう充分ベッピンじゃあ、これ以上になったらバレンタインの返しがきつくなるけぇ」 バレンタインの返しがか、凄い発想だ蛇鰐美ちゃん。

するとアミが大喜に話かける「最近どう?」

「あっ、まあ楽しくやってるよ、みんなで良く冬馬家に泊まりに来てる」大喜も緊張している様だったが、問題は彼であった。

チラッ 清香が冬馬君を見る
「冬馬君は?」

「あっ、えっ そっ そうそう そんなような感じ」
見てる誰もが思う、相当緊張してるな。

そのやりとりに気づいたスーまでも思った。
なんだか僕に似てるな、あのテンパり具合。
あの子が前に冬馬君が言ってた好きな子だな。
全く気づかない鈍感男の名はサーである。

多網が誰にも気づかれない様にそっと冬馬君の肩を叩く、そして小声で「あのプレゼントの絵あげれば」

冬馬君は思った、絶対に嫌だ。
あんなの恥ずかし過ぎてあげれない。

清香達が離れたところで姉御三人衆が話す
「なんとか、冬馬や大喜の恋を成就させてやりたいのぅ」

「そうだね、時間たてば少しは緊張取れるんだけど最初いつもあんな感じ」さすが、きみ子も二人を良く知ってる。

「アパパネ ペロ パネ パネ ネパ」
出た~~虎鮫代語。

「それは良いのう」 「そうしよう」
何故二人は理解出来る。

虎鮫代ちゃんはこう言っていた、冬馬君と大喜の為に三肌脱ごうと。虎鮫代語恐るべし。

こうして姉御衆が動く。
背後から多網も「手伝う」

「良いとこあるけーのぅ多網、やるで」

大人達のところでは「そう言えばスー、あれから小夜さんとはどう?」サーが聞く。

「お互い忙しくて会ってはいないんだけど、やりとりはしてる。中々良い感じだよ」

「そうか、良かった。結婚式には呼んでよ」

「なに言ってるんだよ、まだ早過ぎだよ」

隆が食いつく「スーさん結婚するんですか?」

「えっ、そっ その」

その話が耳に入ったきみ子
「えースー結婚するの?」

みんなは驚く「あの小夜さんと」大喜も興奮気味だ。

「凄いなぁスーは、さすが」冬馬君も大喜び

多網が「スーはやる男」

すっかり気を良くした男は胸を張りこう言ってしまった。「まあね」
あれからデートすらしてないのが現状なのだが。

すると正子が「そう言えばきみちゃん、これ貰ったけど今使う?」

きみ子の目が輝きだす。
それは自宅で出来る、カラオケのマイク。これを使うと自宅でカラオケが出来るカラオケ好きにはたまらない商品だった。

「やるやるー」
クリスマスソングみんなで歌おう

「オーッ」

と言いつつ、きみ子は何故か、川の流れのようにを入れた。 ピッ
「ちょっとこれだけ」
この、きみ子の物怖じしない性格は素晴らしくもある。
拍手が起こる。
きみ子は両手を広げ言う「今日はきみライブにお越しいただきありがとうございます」

「いいぞー 美空きみ子~~」
みんなもノリノリである。

「知らずー知らず あるいーて来たー」歌はまぁ、変わらずジャイアンだった。

拍手喝采 いいぞーきみ子。

「じゃあ歌った人が次歌う人を指名するのね」
クリスマスソング歌うのはどこいった?

この発言に急に緊張しだす者達もいる。
サーとスーの膝はガクガク震えていた。
たっ、頼む指名しないで。
実は隆も心臓バクバクである、言わずと知れた冬馬君もであった。
とりあえず隆、サー、スーはビールを飲んだ。
酔いでごまかせる様に。

「じゃあ次は、蛇鰐美ちゃん」

「ヌオッ」変な声をあげた蛇鰐美ちゃん
さすがの彼女もこの人数の中、ビビってるのか?

スクッと立ち上がり言い放つ
「裕次郎ならなんでも良い いれてくれ」

ピピピッ

マイクを逆さにもちーの、ポーズを決めーの
「おいらはドラマー」低い声が妙にマッチしてうまかったのだ。
「この野郎 フックだ ジョブだ」

皆は拍手喝采「すごいー、上手」

「へへっ、じゃあ次は」
顔を下に向け、当てられない様にする隆、サー、スー、冬馬君。

「じゃあ、多網」

多網はマイクを取り ピピピッ

「どぶネズミーみたいに」出たー多網の好きなブルーハーツ

「リンダ リンダー」男は全身を揺らし、特に凄かったのは首であった、とにかく首を振りまくっている。
首が取れてしまうんではないかと心配するほどに。
これには首振り名人の鳩や赤ベコも真っ青であろう。
普段白い肌の多網が終わった頃には真っ赤っかであった。首は抜けていない(当たり前だ)

「次は虎鮫代ちゃん」

虎鮫代ちゃんは舌を出し高速回転させる
ペロ ペロ ペロ ペロ~~ッ

「私はオケ要らない」

「すごいーアカペラだ」

奴はポーズを決め言い放つ
「月に代わって おっしおきよ」

棒読みでセーラームーンの歌を歌い出した。
何故か歌い終わるのに10分もかかったそうな。
そして終わった後こう言ったそうな。
「月に代わってお仕置き完了」
確かにである。

「次は」

この時、今までなりを潜めていた多美は突如思う。
あたちが全然目立ってない、ここでもしあたちがサザエさんのテーマソングを歌ったら一気にスターダムにのし上がれる。
彼女は必死にアピールした、サザエさんの歌を歌いたいと。

「チャー チャー チャー」
その声虚しく誰も理解出来なかったと言われている。

「次は冬馬君のお父さん」
ビクッ 隆は失神しそうになる。
まじかー 歌いたくない。
とりあえずビールを飲み干す。
落ち着け隆よ、これは笑いを取りに行った方が良いのか?それともガチか?

ぬおおおおおおおおっ、恥ずかしい。
「おっ、おじさんはちょっと」

急に場の空気がシラけたのを感じ取った、おじさんは焦り、必死に曲を選ぶ。
なんだ?このシーンとした空気は。頼むっ誰か喋ってくれ。選ぶ時くらいホットさせてくれ。
俺にそんな注目しないでくれっ

グビッ ビールだけは良く進む。
選んだ曲は古い曲で子供達はもちろん、大人もあまり知らないマイナーな曲。
しまったーなんて曲を選んでしまったんだ隆よー自分を責めた。
この空気の中、これを歌うのか?これは夢か?現実か?隆 私は隆だったよなぁー テンパり過ぎる男、その名は隆っっ。

何とか歌い終わり、拍手は普通な感じで起こる。
反応も特に薄く普通だった。
ははは、そんなもんさ俺の人生。
苦笑いの隆、とりあえず無事に終わって良かった。
「おじちゃん次は?」

「そうだなー」チラッとスーを見た隆は思う、あっこの人俺以上に選ばれたくないんだと、顔は引きつり、やつれている様にも見えた。さすがに彼は選べない。
チラッ サーを見たが彼も同じだった。
似ているこの二人。
ヌオッ誰を選べば良いんだ、誰も歌いたくなさそうに見えてきた。
しょうがない、ここは我が妻「正子」

その時だった ザーッ

「あっ、雨」

「そう言えば今日台風来てるみたいだよ」
出たー冬馬君名物 台風 奴もまた出演したらしい。
これにてカラオケの流れは途絶えた。
胸を撫で下ろした冬馬君。
この後、冬馬家クリスマスパーティは更に白熱、過激さを増していく。


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