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フィオからの回復を受けたグラドは即座に盾を打ち鳴らしながらドラゴンの元へ行き、剣で攻撃をしながら自身へ注意を向けさせる。
「さっきはよくもやってくれたなぁ!」

怒鳴りながら剣を叩き付けてくるグラドにドラゴンは、今度こそ叩き潰してくれるわ!とばかりに向き直る

ハロルもグラドの様子を確認し、再度矢に毒液を付け放つ。

レティもグラドが作る隙を見逃さず攻撃を加え、片目を潰したこともあり徐々にグラド達がドラゴンを追い詰めてゆく。


2時間ほど戦闘が続き、ついに矢の毒がドラゴンの全身へと回り、動きが緩慢となった所へグラドの渾身の突きが喉元へと深々と食い込む。


グラドは返り血を浴びながらも剣を捻り、さらに押し込み剣をそのままに距離を取る。

全員が肩を揺らしながら荒い呼吸をし、グラドたちはドラゴンの様子を見つめる。

「...やったのか?」

息を呑みつつそう言い、盾を構えながら右手に予備の小剣を握りドラゴンへと近付く。
5人も警戒しながらゆっくりと距離を詰める。


グラドが仲間を見渡し、ひとつ頷き小剣をドラゴンの額へ振り下ろす直前、ドラゴンの目がカッ!と見開き、頭を持ち上げ血を吐きながらも声なき咆哮を上げる。

その姿は、己がこんな小さな人間たちに敗れてなるものかという傲慢さと、自身の持つ強さがこんなものであってたまるかというプライドが全身へと溢れていた。

グラド達もその姿に自身達の体力を振り絞り、盾で受け流し時には弾き、矢と短刀で注意を引き、強化魔法が掛けられたハンマーを喉元へ残った剣の柄に渾身の一撃を加え、柄が埋まり剣先が喉を突き抜け今度こそドラゴンは動きを止め、地響きを響かせ頭を落とす。

しばしの静寂があり6人の探索者は今度こそゆっくり身体から力を抜き、勝利への実感を込み上げさせた。


ダンジョンではしばらく時間が経つとモンスターが消えてしまうため、探索者達は鱗や皮・牙などの素材を剥ぎ取る。

そうしてドラゴンの死体が消えるまで休憩をしていると、奥の方壁に扉が現れる。

「階段ではなく今度は扉か...」

グラドが呟き、リグが早速扉の周囲と扉に罠が無いかを調べ始めた。
そうして調べ終わり、罠が無かったことを告げる。

「さて、扉の安全は分かった訳だが、どうする?」
とニヤリとしながらグラドが問いかけると、
全員が顔を見合わせ笑いながら
「何を今更仰っているのですか、行きましょう!」

とフィオが答え、4人が頷く。


「よし!」とグラドも笑いながら返し、
「扉へは入るが、身体も万全ではない。扉の周囲や環境を確認次第引き上げる」
と伝え、全員が同意する。


リグを先頭に6人が扉へ入ると、そこはダンジョンの入り口の様であったが、自分たちの潜っていたダンジョンの入り口とは違っていた。

警戒しながらゆっくり明かりの見える方へ出ると周りは森に囲まれながら、ポッカリと開けた入り口へ空から月明かりが降り注いでいた。


「リグ、周囲はどうだ?」

「多少空気は悪いが特に問題はないだろう。
ただ...」

草や木など周囲を確認しているリグは手を止め、空を見上げながら

「ただ、月が1つしかない。」

と、あるはずのない親子月が見えない空を見上げ答えた。

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