高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん

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変わりゆく情勢

使い魔

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 火の精霊から託されたヒノトカゲという使い魔は、俺が顔で合図を送ると胴体を左右に曲げながら後ろをついてきた。その歩き方もイグアナそのものだ。

「ほら、こっちに来て」

 鍛冶場を出て裏門へ向かう。
 相変わらず無愛想な顔だが、イグアナってそんなもんかとも思う。

「それで、あのトカゲは何者なのですか? もしや精霊なのですか? 師匠にはヴルカの声が聞こえていたんでしょう!?」
「しーーッ!」

 まだ城内から出ていないにも関わらず、ウォーザリは俺を質問攻めにする。兵士に見つかったら面倒なことになるというのに。

 裏門をくぐり、なんとか城内から出てほっと息をつく。雑木林のよこを通って街道を進んだ。

 ウォーザリが頃合いを見計らってまた質問してきので、ヴルカとのやりとりを説明した。

「なんと! いやはや七十年生きてきて、知らないことばかりですな……」

 どうやら使い魔を連れている魔法使いは、過去の文献にもいないようだ。まあ、知っていれば教えてくれただろうし、火の精霊の言い方だと、俺の珍しい体質あっての使い魔なんだろう。

「新しい地脈については、何か心当たりはある?」
「むむむ……ただ少なくとも共和国に火の地脈はありますな。ワシは見たことはありませんが」
「そういえば、インドル親方も向こうにも火の精霊はいるって言ってたな……」

 トカゲを共和国の火の精霊の地脈に連れていけばいいということか。その間は、俺の魔力はトカゲに消費され続ける。
 消費されている実感はないが、以前トロが魔力を使い果たして倒れたみたいことを言っていた。詠唱中に魔力の限界というものを感じるらしい。未だにその感覚はないが、今後注意して魔法を使うようにしないとな……。

 トカゲは道と建物のL字の隅に沿って歩いてついてくる。
 馬車や兵士がすれ違うと頭を動かして、興味深そうに目で追っていた。
 宿に到着すると、新しく用意してもらった2階の俺の部屋に向かう。

「階段、上がれるかな……?」

 尋ねても無口なトカゲは、なんの反応も示さない。
 階段を上がり踊り場でトカゲを待っていると、予想通り段差を登りきれず前足を引っ掛けたまま後ろ足をバタバタしてもがいていた。

「どうしようかな……ウォーザリっち、トカゲって抱いても噛まないかな?」
「むむむ……ただのトカゲなら噛みますが……精霊様から遣わされたトカゲですぞ、主人を噛むことなどあるのでしょうか」
「でも、どうみてもただのトカゲとしか……」

 じっとトカゲと目を合わせる。すると、トカゲの口が開いた。

「さっきからトカゲトカゲ言うナ!」
「「ヒィ! しゃべった!」」

 頬を震わせて口をパクパク動かす。長い舌を器用に動かして、言葉を発しているようだ。

「トカゲじゃない、エンバーって呼びナ!!」
「エンバー……」

 どうやらトカゲの種類じゃなく、彼の名前のようだ。ただのトカゲじゃなかったみたいだが、それなら早く言ってほしかったナ。

「俺はタクト、そしてこっちが」
「ワシはオードル・ウォーザリ。元魔法教師で世界生活魔法トーナメントで三位入賞を二度しているベテラン魔法使いじゃ」

 エッヘンと、咳払いするがエンバーはプイと横を向いた。

「……なんかよく分からない奴だナ」

 口を横に引きつらせてウォーザリは黙り込んだ。

「それじゃ、エンバー。階段を登れないみたいだから、抱っこしていい?」
「いいけど、絶対に落とすナ! あと、おしりに手を添えて抱っこしてナ。腰が痛むからナ」

 俺はエンバーの後ろから手を回して、注文通り尻尾の付け根あたりに手を添えた。

「重いな……」

 背中は硬い鱗で覆われているが、腹のほうは柔らかくて温かい。エンバーは高いところが苦手らしく、階段を上がると俺の腕にしがみついてきた。俺は爬虫類好きではないが、無表情でビビっているところが意外とかわいい。

 やっと俺の部屋にエンバーを抱えて入る。床に放すと、その大きさを改めて知る。ウォーザリも入ると一気に部屋が狭くなった。

「ハァ~。恐かったナ……ところで、その台座にのせてほしいナ」
「台座?」

 エンバーの上げた頭は一段高いベッドの方を向いている。俺はエンバーの足の裏と尻尾を拭いてから、ベッドの上に置いた。

「フゥ~柔らかいナ~! フゥ~!」

 謎の声を発しながら、足をバタバタさせる。

「エンバー、その爪でベッドに穴をあけないでくれよ」
「そんなの分かっているナ! フゥ~!」

 興奮気味のエンバーは体をゴロゴロ横転させて満喫する。
 すると、突然体を硬直させた。

「……た、たいへんだナ!」
「ど、どうしたの」
「お腹すいたナ」

 俺はため息をつくと、もう一度エンバーを抱きかかえて階段を下り、食堂に向かった。
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