スキルマスター

第一章 ムーン・ブル編

第25話 ギルド内

　勇敢な俺は、階段の手前に到着して出入り口を見上げる。

（こういうのは、やっぱり緊張するなあ）

　緊張な俺は、最初に教室に訪れるような不安の中で表情をやや強張らせて思考した。

（足を踏み外さないようにな）

　慎重な俺は、視線を足元に移して思考した。踏面を確実に捉えて階段を上り切る。視線を上げる。視界に淡い光に包まれている広々としたギルド内が飛び込む。

　ギルド内は、手前側に吹き抜けのある間取りのようだ。窓から差し込む日差しが木製と思われるウォールナット色の家具や床の一部を明るく照らす。照らす日差しが反射して淡い光に変化する。淡い光がギルド内を優しく包み込む。差し込むステンドグラスからの七色の光りが夢のようなコントラストを生み出し、冒険者等の人々がそれらの中でまばらに活動する。

（凄い雰囲気いいな！）

　感動な俺は、思わず教室とは段違いでクラシックミュージックの流れる高級な喫茶店のようだと強く思考していた。七色の奥側に一層雰囲気を醸し出している装飾の豊かな横長のカウンター付の場所を発見する。

（あそこが受け付けか！）

　感激な俺は、思わず右足を前方に踏み出すと同時に前のめりで強く思考していた。

（よし！）

　歓喜な俺は、身なりを整えて待ちきれないと強く思考した。表情を明るくして受け付けへと歩き始めめる。出入り口を通過し、思わず歩く速度を落としてしまう。

（見た目以上に広いな。内装と明かり加減も最高だ）

　感銘な俺は、ギルド内を見渡しながら淡い光を意識して思考した。顔を右前方側に向ける。複数枚の掲示板が広い空間に立ち並び、数人の冒険者が集まる。視線を左前方側に向ける。数多くのテーブル席が広い空間に並び、数組の冒険者が寛ぐ。テーブル席の奥側にバーのようなカウンターと席も存在する。Ⅰ人の女性の冒険者がガラス製と思われるジョッキを左手にし、１人ずつの紳士淑女なバーテンダーと談笑している。再び顔を右前方側に向ける。

（あれはクエストボードだな。やばい！　始めて来た場所なのに、何があるのかなんとなく分かる！　俺はニュータイプか？！）

　興奮な俺は、思わず瞳を鋭く輝かせたあとに表情を緩めて妄想を暴走させながら疑問に強く思考していた。

「兄ちゃんも飲んでくれ！」

　カウンター側から女性の気前の良い声が強く届いた。欲望な俺は、思わず顔をそちらに向けてしまう。

「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて」

「いいってことよ！」

　会釈する紳士なバーテンダーは、丁寧に返事を戻した。赤ら顔でご機嫌な様子の冒険者は、気前の良い声を強く上げた。ジョッキの中身を豪快に呷る。

『ダン！』

「ぷっは～。やっぱ昼間から呑むビールは最高だぜ！」

「最近、頑張ってますからね」

　叩き付けられたジョッキとカウンターから大きな音が届いた。歓喜に痺れて俯くかの様子の冒険者は、炭酸を大きく吐き出したあとに顔を上げて勝利宣言かのような声を高らかに強く上げた。グラスを磨く淑女なバーテンダーは、冒険者に微笑みかけて話した。

「お代わり！」

「今日は思う存分呑んで下さい。サービスもしますよ」

（なんて羨ましい！　絡まれたら絡み返して是非おごってもらおう！）

　益々ご機嫌な様子の冒険者は、ジョッキを掲げると同時に満面の笑みを浮かべて叫び声を強く上げた。ジョッキを受け取る紳士なバーテンダーは、魅惑に返事を戻した。ハングリーな俺は、思わず冒険者をガン見して思考していた。絡まれたい視線を冒険者に送り続けながら受け付けへと向かう。満面の笑みを浮かべている冒険者は、紳士淑女なバーテンダーの誘惑なサービスを窺いつつ体を前後に楽し気に揺らし始める。

（おかしい！　ここは異世界なんだから、絡まれなきゃダメだろう！）

　アングリーな俺は、思わず右拳をきつく固めて強く思考していた。３人を順番にガン見する。背後に振り向く淑女なバーテンダーがジョッキのお代わりを、カウンターの内側を見つめる紳士なバーテンダーが小皿を、各々カウンター上に用意する。口角を大きく上げる冒険者が、右手を小皿に伸ばしてナッツのような物を一粒持ち上げる。それを口へと運ぶ。両目を大きく見開いて感極まる表情を浮かべる。両手を上下に激しく動かすと同時に両足も上下に激しくばたつかせる。

（何食べてんだ？！）

　大不満な俺は、思わず左拳もきつく固めて疑問に強く叫ぶように思考していた。

（はあ～。この世界、やっぱり何か深刻な異変が起きてるのか…）

　脱力な俺は、肩を大きく落とすと同時に女神の話を思い出して切実な事態と思考した。不本意に受け付けに辿り着く。

（仕方ない。あとで一杯やるか…）

　切実な俺は、表情を曇らせながらも前向きに思考した。視線も前向きにして気持ちを切り替える。雰囲気を醸し出している受け付け付近は静寂な様子。カウンター越しの椅子に横向きで俯いて座る髪色が茶色の女性を発見した。