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二章『大都市メディウム編』
第十九話『新たな目的』
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学校を一週間以上休むことになった。
この世界では、医療技術そのものはあまり発展していないが、医療系の魔法がある。
そのような魔法を使える者のほとんどが、医療関係で働いている。
その魔法を使っても、僕の体は一種間以上安静にしないといけないらしい。
「ほんとすげえなお前、記事を見るまでボーン.アダラなんて空想の魔物だと思っていたよ」
「さすがマレフィクスです」
学校を休んだことで、ヴェンディとホアイダがお見舞いに来た。
お見舞いに来たことで、ギルドに加入したことがバレた。
バレて問題は無かったが、できれば内緒にしておきたかった。
「それにしてもギルドに加入したとはな。俺誕生日二月だから待ち遠しいぜ。ホアイダは十二月だっけ?」
「はい。十二月六日です」
「君がギルドに参加した時には、僕はSランクになってるよ」
「ハハッ、さすがに調子乗りすぎな」
この二人が居る病床は、かなり賑やかだ。
暇している僕には、正直ありがたい。
「そうそう、お前が学校に来なかったから渡せなかったんだよ。な?ホアイダ」
ホアイダが、ヴェンディの問いかけに小さく頷く。
そして二人は、僕に小さい箱を二つ渡した。
「誕生日おめでとうございます。白い箱が私からで、黒い箱はヴェンディからです」
そう言えば、二人に誕生日を教えていた。
この二つの箱は誕生日プレゼントということになる。
まず最初に、横に長く黒い箱から開けよう。
リボンを解き、少しわくわくしながらゆっくりと箱を開ける。
中には、端っこに金で描かれたポム吉のようなキャラクターが居る。
ちょっと高級そうなお財布だ。
「そのキャラ、ポム吉みたいですね」
「僕も思った」
次に、小さな白い箱を開ける。
箱の中には、宝石で出来た赤色のヘアピンと、先端にこれまた金のポム吉のようなキャラクターが付いてる赤のイヤーカフ。
「またポム吉……」
「マレフィクスは髪が長いのに切らないので、ヘアピンがあると便利かと……」
「イヤーカフは?」
「単に私が、イヤーカフ仲間が欲しいだけです」
少し恥ずかしそうに言うホアイダ。
こいつが右手でポム吉を意味なくいじってる時は、大抵表情に困っている時だ。
「二人ともありがとう」
今この場で、貰ったばかりのプレゼントを燃やすのも良いが、この品は思い出の品として貰っておこう。
* * *
結局、退院したのは二週間後だった。
月も六月から七月に変わったしまった。
この地方の季節で言えば、冬から春だ。
七月五日、土曜日。
この日、退院して初めてギルドに訪れると、多くの人に褒められた。
「お前さんがエリオットの一番弟子か!若いな!」
とか。
「凄いな君、エリオットがべた褒めしていたよ」
とか、
「よお!ボーン.アダラ殺しの少年!」
とか。
これは退院中に得た情報だが、ボーン.アダラのことはニュースにもなった。
ボーン.アダラという幻の魔物が実在したこと、ボーン.アダラが倒されたこと。
つまり僕は、歴史的な瞬間に直で立ち会えたことになる。
凄くラッキーだ。
「おめでとうございますマレフィクス、『ボーン.アダラ殺し』の称号をギルド本部から授与されました」
称号というのは、功績だと捉えていい。
何か大きなことを成し遂げると貰えるらしいが、僕は初クエストで貰えてしまったようだ。
「どうも」
「ランクも上がっていますからご確認ください」
受付人も凄く嬉しそうだった。
称号をギルドカードに記入する時も、気分よさそうにしていた。
「マレフィクス!久しぶりだなぁ」
元気な声と共に、エリオットが僕の肩を優しく叩いた。
「久しぶり」
「君にプレゼントがある。ちょっと二階まで付いてきな」
――プレゼント?誕生日ならとっくにすぎたけど……なんだろう。
そう思いながらも、黙ってエリオットに付いて行く。
エリオットが向かった場所は武器屋だった。
この前武器と防具を買ったお店で、おっちゃんの店主がこれまた嬉しそうに、待っていた。
「坊主すげえな、エリオットと二人でボーン.アダラを倒しちまうなんて」
「まあね。僕天才だから」
「それはともかく、お前さん武器破損したよな?」
「うん」
「新しい武器を用意しといた」
そういって店主が渡したのは、前のデザインと変わらない双剣だった。
だが、黒い刃の素材が前と違う。
「気付いたか?その刃の素材は坊主が倒したボーン.アダラの骨だよ。鉄なんかよりずっと硬く丈夫な素材だ」
「値段は?」
「スマイル一つ」
つまりお金は要らないってことだな。
お礼に、軽く笑ってやろう。
「フッ、ありがと」
「おうよ」
エリオットが言っていたプレゼントってのは、この双剣のことだった。
新し武器を買うのに、お金を気にしていたから、正直嬉しい。
「マレフィクス、今日はクエストに行くのかい?」
「もちろんだよ」
「なら一階に行こう。そろそろハンナも来るはずだ」
「分かった」
これからも、ギルドでエリオットを利用し、もっと多くの魔物を殺して行く予定だ。
多くの魔物を殺すことで、能力番号19『衣類を生物に変える能力』でより強く、より多彩な魔物の力を得ることが出来る。
今回、『ボーン.アダラ』を殺せたことはかなりの収穫だった。
Sランクの魔物に出会えることは滅多にないからね。
* * *
七月七日、月曜日。
今日から学校へ復帰だ。
「正直お前が居ないと学校はつまらないぜ」
いつも通りの三人で、昼食を取っているときに、ヴェンディがそう言った。
「ホアイダ、こいつキモイな」
「どこがですか?」
「マレフィクス、やっぱお前最低だな」
ヴェンディは、言って後悔したような表情を浮かべ、少し拗ねる。
「けど、私もマレフィクスが居る方が楽しいです。クラスにはマレフィクスしか友達居ませんし」
「だろうね」
「それはそうと、もうそろ春休みだぜ?」
ヴェンディに言われて思い出した。
この学校の春休みは七月十五日、春休みまであと一週間と一日なのだ。
この国の学生にも、日本で言う夏休み冬休みがある。
長期休みの制度は国によって違うだろが、この国では春と秋だ。
「確かさ、春休みにしたこと?思い出的なことを発表する宿題無かったけ?」
「ある。けど俺、発表するほどの予定今のとこ無いんだよな。お前らはある?」
「ん~、そういえば、春休み始まってすぐにお母様の誕生日があるので、お父様とケーキでも作ってお祝いをすると思います」
「ほお~ん、良いじゃん。親孝行してんな……マレフィクスは?」
「世界征服」
僕の発言以降、一瞬空気が凍った。
二人とも、どう反応していいか分からないって表情だ。
「世界征服って……具体的にそれは何をするんだ?」
「世界中の観光都市に訪れる」
「お前それ……世界旅行だろ!何が世界征服だ!分かりずらいギャクだったから反応に送れたろッ!このアホォ!」
「イテッ……」
別にギャクじゃなかったが、当然のように打たれた。
だが、おかげでヴェンディもホアイダも、表情が戻った。
「世界旅行というのは本気なのですか?」
「本気」
「お前の爺ちゃんと行くのか?」
「いや、僕一人」
「嘘!?お金は?移動手段は?行く場所は?」
「爺さんに出させる。移送手段は馬とか船とか地形による。場所は『ニューデリー』とか大国から小国までいろいろ」
「スゲー行動力。ほんと尊敬するよ」
「君も行くかい?ヴェンディ」
「いや……俺は、やめとく」
――ダメ押しで誘ってみたが、やはり来ないか。
ヴェンディはセイヴァーとしても行動しなくてはならない。
僕と世界旅行してる時に、セイヴァーとしての活動は出来なくなるから、来ないのは当然。
「あの、私も行くって言ったら、困りますか?」
「え?別に、困りはしないけど……まさか、行きたいの?世界旅行」
「はい」
まさか、ホアイダが自ら行きたいと申し出ると思わなかった。
ホアイダを連れてくメリットはなさそうだし、計画の邪魔になるかもしれない。
しかし、ヴェンディを誘った後に、ホアイダを断るのは不自然だし、旅の話相手が居るのは良いかもしれない。
「良いよ。一緒に行こう」
「ありがとうございます、マレフィクス」
ホアイダは瞬驚きつつも、嬉しそうに笑った。
こうやって笑うと、ちょっとボーイッシュな女にしか見えない。
それはともかくだ。
なぜ世界旅行をするか、不思議に思ったよね?
実は、大国に欲しい能力を持つ人間が居ることが分かったんだ。
つまり、世界旅行を装い、その人間を殺して能力を奪うことが今回の目的。
その能力、それは『行ったことある場所に転移する能力』。
世界中で悪さしたい僕には、とても必要な能力。
春休み、これを取りに行く。
この世界では、医療技術そのものはあまり発展していないが、医療系の魔法がある。
そのような魔法を使える者のほとんどが、医療関係で働いている。
その魔法を使っても、僕の体は一種間以上安静にしないといけないらしい。
「ほんとすげえなお前、記事を見るまでボーン.アダラなんて空想の魔物だと思っていたよ」
「さすがマレフィクスです」
学校を休んだことで、ヴェンディとホアイダがお見舞いに来た。
お見舞いに来たことで、ギルドに加入したことがバレた。
バレて問題は無かったが、できれば内緒にしておきたかった。
「それにしてもギルドに加入したとはな。俺誕生日二月だから待ち遠しいぜ。ホアイダは十二月だっけ?」
「はい。十二月六日です」
「君がギルドに参加した時には、僕はSランクになってるよ」
「ハハッ、さすがに調子乗りすぎな」
この二人が居る病床は、かなり賑やかだ。
暇している僕には、正直ありがたい。
「そうそう、お前が学校に来なかったから渡せなかったんだよ。な?ホアイダ」
ホアイダが、ヴェンディの問いかけに小さく頷く。
そして二人は、僕に小さい箱を二つ渡した。
「誕生日おめでとうございます。白い箱が私からで、黒い箱はヴェンディからです」
そう言えば、二人に誕生日を教えていた。
この二つの箱は誕生日プレゼントということになる。
まず最初に、横に長く黒い箱から開けよう。
リボンを解き、少しわくわくしながらゆっくりと箱を開ける。
中には、端っこに金で描かれたポム吉のようなキャラクターが居る。
ちょっと高級そうなお財布だ。
「そのキャラ、ポム吉みたいですね」
「僕も思った」
次に、小さな白い箱を開ける。
箱の中には、宝石で出来た赤色のヘアピンと、先端にこれまた金のポム吉のようなキャラクターが付いてる赤のイヤーカフ。
「またポム吉……」
「マレフィクスは髪が長いのに切らないので、ヘアピンがあると便利かと……」
「イヤーカフは?」
「単に私が、イヤーカフ仲間が欲しいだけです」
少し恥ずかしそうに言うホアイダ。
こいつが右手でポム吉を意味なくいじってる時は、大抵表情に困っている時だ。
「二人ともありがとう」
今この場で、貰ったばかりのプレゼントを燃やすのも良いが、この品は思い出の品として貰っておこう。
* * *
結局、退院したのは二週間後だった。
月も六月から七月に変わったしまった。
この地方の季節で言えば、冬から春だ。
七月五日、土曜日。
この日、退院して初めてギルドに訪れると、多くの人に褒められた。
「お前さんがエリオットの一番弟子か!若いな!」
とか。
「凄いな君、エリオットがべた褒めしていたよ」
とか、
「よお!ボーン.アダラ殺しの少年!」
とか。
これは退院中に得た情報だが、ボーン.アダラのことはニュースにもなった。
ボーン.アダラという幻の魔物が実在したこと、ボーン.アダラが倒されたこと。
つまり僕は、歴史的な瞬間に直で立ち会えたことになる。
凄くラッキーだ。
「おめでとうございますマレフィクス、『ボーン.アダラ殺し』の称号をギルド本部から授与されました」
称号というのは、功績だと捉えていい。
何か大きなことを成し遂げると貰えるらしいが、僕は初クエストで貰えてしまったようだ。
「どうも」
「ランクも上がっていますからご確認ください」
受付人も凄く嬉しそうだった。
称号をギルドカードに記入する時も、気分よさそうにしていた。
「マレフィクス!久しぶりだなぁ」
元気な声と共に、エリオットが僕の肩を優しく叩いた。
「久しぶり」
「君にプレゼントがある。ちょっと二階まで付いてきな」
――プレゼント?誕生日ならとっくにすぎたけど……なんだろう。
そう思いながらも、黙ってエリオットに付いて行く。
エリオットが向かった場所は武器屋だった。
この前武器と防具を買ったお店で、おっちゃんの店主がこれまた嬉しそうに、待っていた。
「坊主すげえな、エリオットと二人でボーン.アダラを倒しちまうなんて」
「まあね。僕天才だから」
「それはともかく、お前さん武器破損したよな?」
「うん」
「新しい武器を用意しといた」
そういって店主が渡したのは、前のデザインと変わらない双剣だった。
だが、黒い刃の素材が前と違う。
「気付いたか?その刃の素材は坊主が倒したボーン.アダラの骨だよ。鉄なんかよりずっと硬く丈夫な素材だ」
「値段は?」
「スマイル一つ」
つまりお金は要らないってことだな。
お礼に、軽く笑ってやろう。
「フッ、ありがと」
「おうよ」
エリオットが言っていたプレゼントってのは、この双剣のことだった。
新し武器を買うのに、お金を気にしていたから、正直嬉しい。
「マレフィクス、今日はクエストに行くのかい?」
「もちろんだよ」
「なら一階に行こう。そろそろハンナも来るはずだ」
「分かった」
これからも、ギルドでエリオットを利用し、もっと多くの魔物を殺して行く予定だ。
多くの魔物を殺すことで、能力番号19『衣類を生物に変える能力』でより強く、より多彩な魔物の力を得ることが出来る。
今回、『ボーン.アダラ』を殺せたことはかなりの収穫だった。
Sランクの魔物に出会えることは滅多にないからね。
* * *
七月七日、月曜日。
今日から学校へ復帰だ。
「正直お前が居ないと学校はつまらないぜ」
いつも通りの三人で、昼食を取っているときに、ヴェンディがそう言った。
「ホアイダ、こいつキモイな」
「どこがですか?」
「マレフィクス、やっぱお前最低だな」
ヴェンディは、言って後悔したような表情を浮かべ、少し拗ねる。
「けど、私もマレフィクスが居る方が楽しいです。クラスにはマレフィクスしか友達居ませんし」
「だろうね」
「それはそうと、もうそろ春休みだぜ?」
ヴェンディに言われて思い出した。
この学校の春休みは七月十五日、春休みまであと一週間と一日なのだ。
この国の学生にも、日本で言う夏休み冬休みがある。
長期休みの制度は国によって違うだろが、この国では春と秋だ。
「確かさ、春休みにしたこと?思い出的なことを発表する宿題無かったけ?」
「ある。けど俺、発表するほどの予定今のとこ無いんだよな。お前らはある?」
「ん~、そういえば、春休み始まってすぐにお母様の誕生日があるので、お父様とケーキでも作ってお祝いをすると思います」
「ほお~ん、良いじゃん。親孝行してんな……マレフィクスは?」
「世界征服」
僕の発言以降、一瞬空気が凍った。
二人とも、どう反応していいか分からないって表情だ。
「世界征服って……具体的にそれは何をするんだ?」
「世界中の観光都市に訪れる」
「お前それ……世界旅行だろ!何が世界征服だ!分かりずらいギャクだったから反応に送れたろッ!このアホォ!」
「イテッ……」
別にギャクじゃなかったが、当然のように打たれた。
だが、おかげでヴェンディもホアイダも、表情が戻った。
「世界旅行というのは本気なのですか?」
「本気」
「お前の爺ちゃんと行くのか?」
「いや、僕一人」
「嘘!?お金は?移動手段は?行く場所は?」
「爺さんに出させる。移送手段は馬とか船とか地形による。場所は『ニューデリー』とか大国から小国までいろいろ」
「スゲー行動力。ほんと尊敬するよ」
「君も行くかい?ヴェンディ」
「いや……俺は、やめとく」
――ダメ押しで誘ってみたが、やはり来ないか。
ヴェンディはセイヴァーとしても行動しなくてはならない。
僕と世界旅行してる時に、セイヴァーとしての活動は出来なくなるから、来ないのは当然。
「あの、私も行くって言ったら、困りますか?」
「え?別に、困りはしないけど……まさか、行きたいの?世界旅行」
「はい」
まさか、ホアイダが自ら行きたいと申し出ると思わなかった。
ホアイダを連れてくメリットはなさそうだし、計画の邪魔になるかもしれない。
しかし、ヴェンディを誘った後に、ホアイダを断るのは不自然だし、旅の話相手が居るのは良いかもしれない。
「良いよ。一緒に行こう」
「ありがとうございます、マレフィクス」
ホアイダは瞬驚きつつも、嬉しそうに笑った。
こうやって笑うと、ちょっとボーイッシュな女にしか見えない。
それはともかくだ。
なぜ世界旅行をするか、不思議に思ったよね?
実は、大国に欲しい能力を持つ人間が居ることが分かったんだ。
つまり、世界旅行を装い、その人間を殺して能力を奪うことが今回の目的。
その能力、それは『行ったことある場所に転移する能力』。
世界中で悪さしたい僕には、とても必要な能力。
春休み、これを取りに行く。
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