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三章『世界旅行編』
第二十一話『大昔の歴史』
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馬に乗り始めて10分、ホアイダが泣きながら、僕の背中にベッタリ付き、腰に手を回していた。
「はぁぁ」
「ぐすんっ……」
なぜ、泣いてるのか?
それは10分前、僕が馬から落ちたホアイダを殴ったからだ。
『泣いたら殴る』と言ったのに、泣いたので殴ったら、もっと泣いた。
馬に落ちた最初こそ涙を堪えていたが、頭から落ちたのがかなり傷んだのだろう。
すぐに、ボロボロと涙を零した。
「本当に殴るなんて、酷いです」
仕方なく、頭に包帯、頬には湿布を巻いて、痛み止めを飲ませたが、まだグズっている。
それに、馬から落ちたのがトラウマになったのか、僕の背中にベッタリ付き、離れようとしない。
体の感覚と心音が直に伝わってくる。
正直、落ち着かない。
「お前、ぺチャパイだな」
たまに暑くなり、本当に鬱陶しい時はこの言葉を言う。
「それ、嫌です」
そうすることで、少し体を離してくれる。
だが、数分もしれば、すぐにくっつき始める。
ホアイダが女か男か体を触れていてもハッキリは分からないが、女よりな気はする。
脱がせて性別を確認し、謎を知ることで満足することは出来るが、決してしない。
そういう行為を欲望のままする悪役は、ダサく、かっこ悪く、気色の悪い。
そういう悪役は、僕が嫌悪する者だ。
僕が目指すのは美しさを基本とした悪役だ。
それに前も言ったが、僕はそういうのに興味無い。
ひょっとしたら、愛を理解出来ない理由の一つかもしれない。
* * *
港に着いた頃には日が落ち、真っ暗になっていた。
しかし、港は出向前ということもあり、人々が忙しそうにしていた。
「起きな。着いたよ」
「んん?」
先ほどまで泣き疲れていたホアイダは、馬に乗りながら寝ていた。
「手続きに行くよ」
「……分かりました」
馬を布に戻し、手続きをする為の建物に入り、窓口に行く。
予約していた為、手続きは早く終わった。
どこ行きか、何名か、危険な物は持っていないか、全ての確認が済む。
これから船に乗るが、勿論フェリーやクルーザーでは無く、『キャラック船』と呼ぶべき船だ。
ヨーロッパ15世紀に使われていた遠洋航海に適した船だ。
勿論、呼ばれ方や構造は多少違うだろう。
この船に一般客40人程乗るのだ。
「あと30分後に出向だって」
「ねぇ、教えてくださいよ。旅行のルートを」
「船で教えるよ」
* * *
どこに向かうか、どの国に行くか、どのルートを通るのか、それを話す前にはこの世界の地形――つまり世界地図を説明しなければならない。
しかし、世界地図を説明するには、ある歴史を話さないとならない。
その歴史は昔々のことだ。
世界の地形が全て繋がっていた時代……まだ都市を守る為の壁やギルドが存在していなかった時代だ。
人々は魔物が居る世界で、怯えながら生きていた。
昼間は勿論、夜は安心して眠れない。
それは全て魔王を名乗る強大な魔物が現れたからだ。
その魔王の名前は『ウルティマ』――『大魔王ウルティマ』。
彼の力は圧倒的だった。
後に、世界の中心になる『神の土地』を支配し、付近の国々を全て支配下に置く程の力を持っていた。
もはや、世界がこの男に支配されるのは時間の問題であった。
だが、ある勇者がそれを阻止すべく立ち上がった。
『アーサー.ヒカイト.ディレン』。
ヴェンディの祖先にあたる人物であり、王族であった人物だ。
彼は、100万人以上の『カタラ人』の命を使い、『世界を創造する魔法』を使って、魔王ウルティマが居る土地から世界を切り離した。
100万人のカタラ人とウルティマの土地に居た人々は犠牲になったが、『神の土地』の周りには無尽蔵に広がる海が出現した為、ウルティマと神の土地は世界から孤立した。
しかしその10年後、海を渡ることが出来る船が作られた為、100万人のカタラ人の命は無駄になる。
その償いとしてか、単に世界の為か、自分自身の名誉の為か、それは分からないが、アーサーはウルティマと神の土地の近くにある『奇跡の島』で決闘をすることを決意する。
結末は、アーサーが自身の命と引き換えに、ウルティマを島に封印する形で終わる。
話すべき歴史の話はこれで全てだ。
皆が疑問に思っていることは分かる。
『カタラ人』とは何?と疑問に思っているだろう。
カタラ人、それは呪われた人種と言われている。
特徴としては、寿命が短い、肌や髪が白い、魔法を無詠唱で使える。
なぜ呪われた種族なのか?
それは魔法を無詠唱で使えるところにある。
魔法を無詠唱で使える者はカタラ人以外には魔物しかいない。
魔物は魔法を無詠唱で使える=カタラ人は魔物、昔の人々はそう考えていたんだろう。
つまり、人種差別や魔女狩りと似たようなものだ。
王族であり、英雄である『アーサー.ヒカイト.ディレン』も、カタラ人を差別していた一人であった。
その為、『世界を創造する魔法』に必要な命の犠牲とし、カタラ人を使ったのだ。
当時、だれも文句を言わなかった。
それどころか、喜んでカタラ人の制圧に協力した。
今の時代を生きる人々は、アーサーを英雄と呼ぶが、同時に正義と平和を言い訳に大量虐殺を行った大悪党とも呼ぶ。
そして、今の時代にカタラ人の存在は確認されていない。
カタラ人は絶滅、ということになる。
ちなみに、カタラ人が住んでいた国は世界番号1『バグ―』。
バグ―には、100万人のカタラ人の墓として、『カタラの石』と呼ばれる大きな石があるらしい。
今では観光都市になっているが、人々にとっては忘れてはいけない歴史の一つだ。
バグ―の人々の中には、王族を嫌う者も居ると授業で言っていた。
今でも魔王は存在するが、かつての魔王――ウルティマ以上の力は無く、大国が協力しれば阻止できる程の力しかない。
なので、あまり大きな行動はせず、小さな国や村しか襲わないらしい。
大国に魔王が現れることはここ100年以上無い。
長くなったね。
話すことは話した。
本題である世界地図について説明しよう。
まず、この世界には大きく分けて四つの土地がある。
人の土地、魔の土地、竜の土地、神の土地。
世界の中心とされているのが、先ほども話した『神の土地』。
この土地には国は無い。
理由としては、魔物が多すぎて住めたものでは無いからだ。
そしてその東にあるのが、僕の国エレバンがある『人の土地』。
名前の由来は、形が人に似ているから。
神の土地の西にあるのが『竜の土地』。
名前の由来は、形が竜に似ているから。
神の土地の南にあるのが『魔の土地』。
名前の由来は、形が悪魔を連想させるから。
* * *
僕とホアイダは、既に船に乗り、海の上に居た。
これから、この船は魔の土地を目指して出向して行くのだ。
魔の土地は、四つの土地の中で一番発展している土地だ。
国の数が多く、土地が一番広い。
この国には世界番号11『ニューデリー』から世界番号30『バーレーン』の20ヵ国がある。
勿論お目当てはニューデリーだ。
「船に乗りましたよ?教えてくださいよ」
「今日は疲れた。明日話す」
僕とホアイダは、小さな二人部屋に居た。
馬とは言えど、暑い中何時間も歩いていた為、体が重く、疲れている。
「明日絶対教えてくださいね?」
「分かったよ。早く寝な」
そう言えば、カタラ人同様、ホアイダも魔法を無詠唱で使える。
おまけに髪も肌も白い。
学校でいじめられていた理由……聞いたことはないが、もしかしたら『カタラ人』の特徴に当てはまってるからかもしれない。
しかし、こいつの話によれば、こいつの父親は無詠唱で魔法を使えないし、髪も肌も白では無い。
母親も無詠唱で魔法を使えないし、髪も白ではない。
病気で肌が色白とは聞いたが……病人なら当然だろう。
それに、例えホアイダの親のどちらかがカタラ人だとしても、大昔から命を繋げてきたとは考えずらい。
寿命の短いカタラ人なら尚更だ。
……またくだらないことを考えてしまった。
今は旅のワクワクの方が重要だ。
明日の為に、今日はぐっすり眠ろう。
「はぁぁ」
「ぐすんっ……」
なぜ、泣いてるのか?
それは10分前、僕が馬から落ちたホアイダを殴ったからだ。
『泣いたら殴る』と言ったのに、泣いたので殴ったら、もっと泣いた。
馬に落ちた最初こそ涙を堪えていたが、頭から落ちたのがかなり傷んだのだろう。
すぐに、ボロボロと涙を零した。
「本当に殴るなんて、酷いです」
仕方なく、頭に包帯、頬には湿布を巻いて、痛み止めを飲ませたが、まだグズっている。
それに、馬から落ちたのがトラウマになったのか、僕の背中にベッタリ付き、離れようとしない。
体の感覚と心音が直に伝わってくる。
正直、落ち着かない。
「お前、ぺチャパイだな」
たまに暑くなり、本当に鬱陶しい時はこの言葉を言う。
「それ、嫌です」
そうすることで、少し体を離してくれる。
だが、数分もしれば、すぐにくっつき始める。
ホアイダが女か男か体を触れていてもハッキリは分からないが、女よりな気はする。
脱がせて性別を確認し、謎を知ることで満足することは出来るが、決してしない。
そういう行為を欲望のままする悪役は、ダサく、かっこ悪く、気色の悪い。
そういう悪役は、僕が嫌悪する者だ。
僕が目指すのは美しさを基本とした悪役だ。
それに前も言ったが、僕はそういうのに興味無い。
ひょっとしたら、愛を理解出来ない理由の一つかもしれない。
* * *
港に着いた頃には日が落ち、真っ暗になっていた。
しかし、港は出向前ということもあり、人々が忙しそうにしていた。
「起きな。着いたよ」
「んん?」
先ほどまで泣き疲れていたホアイダは、馬に乗りながら寝ていた。
「手続きに行くよ」
「……分かりました」
馬を布に戻し、手続きをする為の建物に入り、窓口に行く。
予約していた為、手続きは早く終わった。
どこ行きか、何名か、危険な物は持っていないか、全ての確認が済む。
これから船に乗るが、勿論フェリーやクルーザーでは無く、『キャラック船』と呼ぶべき船だ。
ヨーロッパ15世紀に使われていた遠洋航海に適した船だ。
勿論、呼ばれ方や構造は多少違うだろう。
この船に一般客40人程乗るのだ。
「あと30分後に出向だって」
「ねぇ、教えてくださいよ。旅行のルートを」
「船で教えるよ」
* * *
どこに向かうか、どの国に行くか、どのルートを通るのか、それを話す前にはこの世界の地形――つまり世界地図を説明しなければならない。
しかし、世界地図を説明するには、ある歴史を話さないとならない。
その歴史は昔々のことだ。
世界の地形が全て繋がっていた時代……まだ都市を守る為の壁やギルドが存在していなかった時代だ。
人々は魔物が居る世界で、怯えながら生きていた。
昼間は勿論、夜は安心して眠れない。
それは全て魔王を名乗る強大な魔物が現れたからだ。
その魔王の名前は『ウルティマ』――『大魔王ウルティマ』。
彼の力は圧倒的だった。
後に、世界の中心になる『神の土地』を支配し、付近の国々を全て支配下に置く程の力を持っていた。
もはや、世界がこの男に支配されるのは時間の問題であった。
だが、ある勇者がそれを阻止すべく立ち上がった。
『アーサー.ヒカイト.ディレン』。
ヴェンディの祖先にあたる人物であり、王族であった人物だ。
彼は、100万人以上の『カタラ人』の命を使い、『世界を創造する魔法』を使って、魔王ウルティマが居る土地から世界を切り離した。
100万人のカタラ人とウルティマの土地に居た人々は犠牲になったが、『神の土地』の周りには無尽蔵に広がる海が出現した為、ウルティマと神の土地は世界から孤立した。
しかしその10年後、海を渡ることが出来る船が作られた為、100万人のカタラ人の命は無駄になる。
その償いとしてか、単に世界の為か、自分自身の名誉の為か、それは分からないが、アーサーはウルティマと神の土地の近くにある『奇跡の島』で決闘をすることを決意する。
結末は、アーサーが自身の命と引き換えに、ウルティマを島に封印する形で終わる。
話すべき歴史の話はこれで全てだ。
皆が疑問に思っていることは分かる。
『カタラ人』とは何?と疑問に思っているだろう。
カタラ人、それは呪われた人種と言われている。
特徴としては、寿命が短い、肌や髪が白い、魔法を無詠唱で使える。
なぜ呪われた種族なのか?
それは魔法を無詠唱で使えるところにある。
魔法を無詠唱で使える者はカタラ人以外には魔物しかいない。
魔物は魔法を無詠唱で使える=カタラ人は魔物、昔の人々はそう考えていたんだろう。
つまり、人種差別や魔女狩りと似たようなものだ。
王族であり、英雄である『アーサー.ヒカイト.ディレン』も、カタラ人を差別していた一人であった。
その為、『世界を創造する魔法』に必要な命の犠牲とし、カタラ人を使ったのだ。
当時、だれも文句を言わなかった。
それどころか、喜んでカタラ人の制圧に協力した。
今の時代を生きる人々は、アーサーを英雄と呼ぶが、同時に正義と平和を言い訳に大量虐殺を行った大悪党とも呼ぶ。
そして、今の時代にカタラ人の存在は確認されていない。
カタラ人は絶滅、ということになる。
ちなみに、カタラ人が住んでいた国は世界番号1『バグ―』。
バグ―には、100万人のカタラ人の墓として、『カタラの石』と呼ばれる大きな石があるらしい。
今では観光都市になっているが、人々にとっては忘れてはいけない歴史の一つだ。
バグ―の人々の中には、王族を嫌う者も居ると授業で言っていた。
今でも魔王は存在するが、かつての魔王――ウルティマ以上の力は無く、大国が協力しれば阻止できる程の力しかない。
なので、あまり大きな行動はせず、小さな国や村しか襲わないらしい。
大国に魔王が現れることはここ100年以上無い。
長くなったね。
話すことは話した。
本題である世界地図について説明しよう。
まず、この世界には大きく分けて四つの土地がある。
人の土地、魔の土地、竜の土地、神の土地。
世界の中心とされているのが、先ほども話した『神の土地』。
この土地には国は無い。
理由としては、魔物が多すぎて住めたものでは無いからだ。
そしてその東にあるのが、僕の国エレバンがある『人の土地』。
名前の由来は、形が人に似ているから。
神の土地の西にあるのが『竜の土地』。
名前の由来は、形が竜に似ているから。
神の土地の南にあるのが『魔の土地』。
名前の由来は、形が悪魔を連想させるから。
* * *
僕とホアイダは、既に船に乗り、海の上に居た。
これから、この船は魔の土地を目指して出向して行くのだ。
魔の土地は、四つの土地の中で一番発展している土地だ。
国の数が多く、土地が一番広い。
この国には世界番号11『ニューデリー』から世界番号30『バーレーン』の20ヵ国がある。
勿論お目当てはニューデリーだ。
「船に乗りましたよ?教えてくださいよ」
「今日は疲れた。明日話す」
僕とホアイダは、小さな二人部屋に居た。
馬とは言えど、暑い中何時間も歩いていた為、体が重く、疲れている。
「明日絶対教えてくださいね?」
「分かったよ。早く寝な」
そう言えば、カタラ人同様、ホアイダも魔法を無詠唱で使える。
おまけに髪も肌も白い。
学校でいじめられていた理由……聞いたことはないが、もしかしたら『カタラ人』の特徴に当てはまってるからかもしれない。
しかし、こいつの話によれば、こいつの父親は無詠唱で魔法を使えないし、髪も肌も白では無い。
母親も無詠唱で魔法を使えないし、髪も白ではない。
病気で肌が色白とは聞いたが……病人なら当然だろう。
それに、例えホアイダの親のどちらかがカタラ人だとしても、大昔から命を繋げてきたとは考えずらい。
寿命の短いカタラ人なら尚更だ。
……またくだらないことを考えてしまった。
今は旅のワクワクの方が重要だ。
明日の為に、今日はぐっすり眠ろう。
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