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五章『悪の組織編』
第五十二話『アンソス.ルルーディー』後編
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目の前で、ヴェンディを盾にするルル―ディーがニヤニヤと笑みを浮かべている。
ヴェンディのポケットには紙にして保存しているホアイダも居る。
つまり、ルル―ディーは二人を人質にしているということだ。
「言っとくけど、悪者は貴様らだ。あたしが正義じゃ」
確認をとるかのように、ルル―ディーが言った。
「元々この洞窟は僕や僕の手下の住処だった。なのに貴様ら人間が手下を皆殺しにして、あたしの命まで奪おうとしたんじゃ。それなのに……居場所があるのに欲を出して自分らのエリアを増やそうと……貴様らは悪じゃ!なのに人間共はあたしら魔物を残酷に殺しが出来る悪だと言うのだ……違う!全部違う!残酷なのは貴様ら人間じゃ!見せかけの美しさばかりを語り、自分らの罪と酷さを隠すのだ!本物の悪はどっちだ!貴様らだ!あたしは怒っている!あたしこそ正義だ!貴様なら分かるだろべゼ!貴様もあたしと同じ気持ちだから人間の世界を荒らし回っているのだろ!そうだろ!べゼ!!」
さっきまで純粋に破壊を楽しんでいるように見えたルル―ディーが、突如人間に対する怒りを露わにした。
顔を見なくても、雰囲気だけで伝わるようなしかめっ面をし、ヴェンディの頭を潰す勢いで掴んでいる。
自分が正義だと主張し、人間を悪だと断言するルル―ディーが滑稽に見える。
さっきのルル―ディーと比べて魅力を感じない……何とも哀れだ。
「……いや、違うよ」
「何!?」
「僕は好きで世界を混乱に巻き込んでいる。自分が正しいなんて一度も思ったことない。ましてや、人間が間違っているとも思ったことない。楽しくて仕方ないんだ……僕の行動原理は全て自分本位だよ」
「貴様……他の人間とは違うと思ったのに……思い違いだったか」
「他の人間と違うと思った?その通り……僕はチープでくだらない人間じゃない……悪魔をも超えた悪魔……絶対悪のべゼだ」
「やはり殺すという判断が正しかった」
「今この場は君が絶対的な正義だ……そして僕が絶対的な悪だ。来いよ正義のヒーロー」
ルル―ディーは直接僕と戦いたくなったようだ。
ヴェンディを遠くに投げ捨て、体と地面から無数に生やした樹木を僕を囲むように伸ばした。
「正義は勝つのじゃ!」
――能力番号14『木を枯らす能力』。
この能力は、近くにある木を一瞬にして枯らすことの出来る。
戦闘で使わないと思っていたが、今この場はどの能力よりも役に立つ。
周りに来た樹木は一瞬にして枯れ落ち、僕の体までは届かなかった。
ルル―ディーは面食らった表情をし、一歩後ずさりをする。
「嘘だ……一体何をしたんじゃぁ……」
「まだ足掻けるだろ……それとも悪役から逃げるか?」
「うあああぁぁ!来るなぁ!」
ルル―ディーは慌てて背を向けて、走って逃げようとした。
しかし、僕が何かしたわけではないのに、顔から突っ込むように転けた。
「うぎゃあああぁぁ!痛いよぉ!鼻から大量の蒸散が出てるよぉぉ!!」
「なんだこいつ?素はアホなのか?」
鼻から大量の液体を流すルル―ディーは、とうとう追いつめられる。
樹木の効かない僕の前では、こいつはただの魔物だ。
「殺さないでえええぇぇぇ!!」
ルル―ディーが少女の顔をし、悲しそうに涙を流した。
「それが効くのはヴェンディくらいだよ」
「そんなことない……もう貴様はあたしの策略にハマっているのじゃ」
さっきまで子供のように泣いていたルル―ディーは、態度を変えてニヤリと笑った。
「さっきの鼻水!?」
ルル―ディーが鼻から出していた水が、奇妙に動きだした。
その水は、地面の中に染み込むように落ちていく。
僕に攻撃する訳でもなく、ただ地面に逃げるように消える水が不可解だ。
「地面そのものが液体になってるのか」
「そうじゃ間抜け!」
僕が気付いた時には、地面自体が柔らかく、少し粘々する液体に成り代わっていた。
僕の足が地面に動きを止められ、身動きが取れなくなった。
「あとはあたしが貴様を始末するだけじゃ!死ねい!」
ルル―ディーが手から放ったのは、魔法で作った岩の塊だった。
しかし、僕の影から出た死神が、その岩を切り裂いた。
「何!?」
「動けなくても、余裕で勝てるから」
能力番号24『影から死神を出す能力』を使うと、ルル―ディーは慌てて僕の元から距離を取った。
そして、中距離から岩の塊を弾丸のように放つ。
死神が何度も岩を切り裂くが、ルル―ディーはしつこい。
「どんどん体が地面に埋まっていく……時間稼ぎが狙いか」
僕の体は徐々に地面に沈んでいた。
このままでは、あと一分もしないうちに完全に地面に埋まってしまう。
そうなれば、僕は窒息死してしまう。
「能力番号27『二秒間重力を反転させる能力』」
重力が反転しても、ルル―ディーと倒れるヴェンディだけが宙に浮くだけで、僕の体はビクともしなかった。
「もうおしまいじゃ!」
「おぉ!」
頭上から、僕の一回りも二回りも大きい岩が降ってきた。
地面から脱出するどころではない。
「能力番号23『息を強風に変える能力』」
息を強風に変え、岩を押し上げようとするが、やはり無意味だった。
寒い洞窟の中で、ただ白い息が巨大な煙のように出るだけだ。
「能力番号39『煙を実体化させる能力』」
しかし、岩は止まった。
白い息を実体化させることで、岩が支えられる形になった。
「逃がすかよ!」
「ぬぅ!?」
能力番号3『手から釣り糸を出す能力』で、離れていたルル―ディーの体を拘束する。
再び樹木を出して抵抗するルル―ディーだったが、僕の能力で樹木が枯れてしまう。
「うおおおおお!」
釣り糸を引っぱると、抵抗するルル―ディーが叫びながら地面に引きずられる。
そして、僕の元まで引き寄せた。
「あたしが窒息死すると思うか?」
「だよね」
ルルーディーを釣り糸で固く縛り、上に突き上げるように持ち上げた。
「能力解除」
「げぇ!?」
大きな岩を支えてた実体化した煙が解除された。
よって、支えられていた岩がルルーディー目掛けて落ちてくる。
「やめろおぉぉおぉ!!」
「生きたければ、僕をここから出すしかないね」
激しい音と土煙を上げて岩が落下した。
洞窟が揺らぎ、鉱石が何個か落ちるくらいの衝撃だった。
「はぁはぁ……」
ルルーディーが岩にぶつかる前に、液体化されている地面が解除された。
おかげで、羽根で飛んで岩から逃れることが出来た。
「捕まえたよ、お嬢様」
「あ……あっ……」
ルルーディーは僕に抱えられて上空に飛んでいる。
がっちりと抑えられているから、ルルーディーが逃げることは出来ない。
逃げることの出来ない証拠に、今にも泣きそうな顔をしている。
「ごめんなしゃいベゼ様!!あたしが間違っていました!だから仲間にして下さい!靴磨きでも食卓の準備でも何でもします!だから殺さないでください!」
ルルーディーは泣きながら僕の胸に顔をスリスリと押し当てる。
万策付きたから、得意の演技で切り抜けるつもりだろう。
「正義は勝つ。勝者が正義なのだから当たり前だよね?だから……僕が悪として勝利し続ける。世の理をひっくり返す」
そう言って、ルルーディーの頬を手でムニッと強く掴む。
「うぅ」
「命乞い……もう一度して」
「たしゅけて……ころしゃないで……」
「ふふっ、僕は泣き叫ぶ子供を殺すのが好きなんだ」
「うにゅうぅぅぅ!!」
ルルーディーは自分がどうなるか悟り、演技でない本当の涙を流した。
最後の悪あがきとして体から樹木を出すが、それもすぐに枯れた。
その数秒後、ルルーディーの息の根を止めた僕は、邪悪な笑みを浮かべた。
ヴェンディのポケットには紙にして保存しているホアイダも居る。
つまり、ルル―ディーは二人を人質にしているということだ。
「言っとくけど、悪者は貴様らだ。あたしが正義じゃ」
確認をとるかのように、ルル―ディーが言った。
「元々この洞窟は僕や僕の手下の住処だった。なのに貴様ら人間が手下を皆殺しにして、あたしの命まで奪おうとしたんじゃ。それなのに……居場所があるのに欲を出して自分らのエリアを増やそうと……貴様らは悪じゃ!なのに人間共はあたしら魔物を残酷に殺しが出来る悪だと言うのだ……違う!全部違う!残酷なのは貴様ら人間じゃ!見せかけの美しさばかりを語り、自分らの罪と酷さを隠すのだ!本物の悪はどっちだ!貴様らだ!あたしは怒っている!あたしこそ正義だ!貴様なら分かるだろべゼ!貴様もあたしと同じ気持ちだから人間の世界を荒らし回っているのだろ!そうだろ!べゼ!!」
さっきまで純粋に破壊を楽しんでいるように見えたルル―ディーが、突如人間に対する怒りを露わにした。
顔を見なくても、雰囲気だけで伝わるようなしかめっ面をし、ヴェンディの頭を潰す勢いで掴んでいる。
自分が正義だと主張し、人間を悪だと断言するルル―ディーが滑稽に見える。
さっきのルル―ディーと比べて魅力を感じない……何とも哀れだ。
「……いや、違うよ」
「何!?」
「僕は好きで世界を混乱に巻き込んでいる。自分が正しいなんて一度も思ったことない。ましてや、人間が間違っているとも思ったことない。楽しくて仕方ないんだ……僕の行動原理は全て自分本位だよ」
「貴様……他の人間とは違うと思ったのに……思い違いだったか」
「他の人間と違うと思った?その通り……僕はチープでくだらない人間じゃない……悪魔をも超えた悪魔……絶対悪のべゼだ」
「やはり殺すという判断が正しかった」
「今この場は君が絶対的な正義だ……そして僕が絶対的な悪だ。来いよ正義のヒーロー」
ルル―ディーは直接僕と戦いたくなったようだ。
ヴェンディを遠くに投げ捨て、体と地面から無数に生やした樹木を僕を囲むように伸ばした。
「正義は勝つのじゃ!」
――能力番号14『木を枯らす能力』。
この能力は、近くにある木を一瞬にして枯らすことの出来る。
戦闘で使わないと思っていたが、今この場はどの能力よりも役に立つ。
周りに来た樹木は一瞬にして枯れ落ち、僕の体までは届かなかった。
ルル―ディーは面食らった表情をし、一歩後ずさりをする。
「嘘だ……一体何をしたんじゃぁ……」
「まだ足掻けるだろ……それとも悪役から逃げるか?」
「うあああぁぁ!来るなぁ!」
ルル―ディーは慌てて背を向けて、走って逃げようとした。
しかし、僕が何かしたわけではないのに、顔から突っ込むように転けた。
「うぎゃあああぁぁ!痛いよぉ!鼻から大量の蒸散が出てるよぉぉ!!」
「なんだこいつ?素はアホなのか?」
鼻から大量の液体を流すルル―ディーは、とうとう追いつめられる。
樹木の効かない僕の前では、こいつはただの魔物だ。
「殺さないでえええぇぇぇ!!」
ルル―ディーが少女の顔をし、悲しそうに涙を流した。
「それが効くのはヴェンディくらいだよ」
「そんなことない……もう貴様はあたしの策略にハマっているのじゃ」
さっきまで子供のように泣いていたルル―ディーは、態度を変えてニヤリと笑った。
「さっきの鼻水!?」
ルル―ディーが鼻から出していた水が、奇妙に動きだした。
その水は、地面の中に染み込むように落ちていく。
僕に攻撃する訳でもなく、ただ地面に逃げるように消える水が不可解だ。
「地面そのものが液体になってるのか」
「そうじゃ間抜け!」
僕が気付いた時には、地面自体が柔らかく、少し粘々する液体に成り代わっていた。
僕の足が地面に動きを止められ、身動きが取れなくなった。
「あとはあたしが貴様を始末するだけじゃ!死ねい!」
ルル―ディーが手から放ったのは、魔法で作った岩の塊だった。
しかし、僕の影から出た死神が、その岩を切り裂いた。
「何!?」
「動けなくても、余裕で勝てるから」
能力番号24『影から死神を出す能力』を使うと、ルル―ディーは慌てて僕の元から距離を取った。
そして、中距離から岩の塊を弾丸のように放つ。
死神が何度も岩を切り裂くが、ルル―ディーはしつこい。
「どんどん体が地面に埋まっていく……時間稼ぎが狙いか」
僕の体は徐々に地面に沈んでいた。
このままでは、あと一分もしないうちに完全に地面に埋まってしまう。
そうなれば、僕は窒息死してしまう。
「能力番号27『二秒間重力を反転させる能力』」
重力が反転しても、ルル―ディーと倒れるヴェンディだけが宙に浮くだけで、僕の体はビクともしなかった。
「もうおしまいじゃ!」
「おぉ!」
頭上から、僕の一回りも二回りも大きい岩が降ってきた。
地面から脱出するどころではない。
「能力番号23『息を強風に変える能力』」
息を強風に変え、岩を押し上げようとするが、やはり無意味だった。
寒い洞窟の中で、ただ白い息が巨大な煙のように出るだけだ。
「能力番号39『煙を実体化させる能力』」
しかし、岩は止まった。
白い息を実体化させることで、岩が支えられる形になった。
「逃がすかよ!」
「ぬぅ!?」
能力番号3『手から釣り糸を出す能力』で、離れていたルル―ディーの体を拘束する。
再び樹木を出して抵抗するルル―ディーだったが、僕の能力で樹木が枯れてしまう。
「うおおおおお!」
釣り糸を引っぱると、抵抗するルル―ディーが叫びながら地面に引きずられる。
そして、僕の元まで引き寄せた。
「あたしが窒息死すると思うか?」
「だよね」
ルルーディーを釣り糸で固く縛り、上に突き上げるように持ち上げた。
「能力解除」
「げぇ!?」
大きな岩を支えてた実体化した煙が解除された。
よって、支えられていた岩がルルーディー目掛けて落ちてくる。
「やめろおぉぉおぉ!!」
「生きたければ、僕をここから出すしかないね」
激しい音と土煙を上げて岩が落下した。
洞窟が揺らぎ、鉱石が何個か落ちるくらいの衝撃だった。
「はぁはぁ……」
ルルーディーが岩にぶつかる前に、液体化されている地面が解除された。
おかげで、羽根で飛んで岩から逃れることが出来た。
「捕まえたよ、お嬢様」
「あ……あっ……」
ルルーディーは僕に抱えられて上空に飛んでいる。
がっちりと抑えられているから、ルルーディーが逃げることは出来ない。
逃げることの出来ない証拠に、今にも泣きそうな顔をしている。
「ごめんなしゃいベゼ様!!あたしが間違っていました!だから仲間にして下さい!靴磨きでも食卓の準備でも何でもします!だから殺さないでください!」
ルルーディーは泣きながら僕の胸に顔をスリスリと押し当てる。
万策付きたから、得意の演技で切り抜けるつもりだろう。
「正義は勝つ。勝者が正義なのだから当たり前だよね?だから……僕が悪として勝利し続ける。世の理をひっくり返す」
そう言って、ルルーディーの頬を手でムニッと強く掴む。
「うぅ」
「命乞い……もう一度して」
「たしゅけて……ころしゃないで……」
「ふふっ、僕は泣き叫ぶ子供を殺すのが好きなんだ」
「うにゅうぅぅぅ!!」
ルルーディーは自分がどうなるか悟り、演技でない本当の涙を流した。
最後の悪あがきとして体から樹木を出すが、それもすぐに枯れた。
その数秒後、ルルーディーの息の根を止めた僕は、邪悪な笑みを浮かべた。
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