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八章『救世主編』
第八十五話『ホアイダと五人の勇者』後編
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* * * * *
ベゼは体に影を纏っている。
気体か固体なのかは分からないが、影が奇妙に動いている。
ホアイダの知らないベゼの能力だ。
「我はベゼ、悪の王だ」
ホアイダ達は、ベゼを囲んで一斉に動いた。
イワンがベゼと自分の位置を入れ替え、その瞬間ホアイダ達は一斉にベゼを攻撃した。
しかし、剣や銃弾はベゼの体にまとわりついている影によって吸い込まれてしまう。
「相手との居場所を入れ替える能力か」
ベゼがそう呟き、指から放ったビームでイワンの胸を撃ち抜いた。
「がはぁ!?」
「なにぃ!?やっぱりあいつは俺達が見えてる!?透明の俺達が見えているぞ!」
ホアイダがイワンを抱えて一歩下がる。
他の者も動揺しているが、冷静にベゼとの距離を取った。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。服の下に防具身に付けてて良かった」
イワンは無事だっだ。
胸を抑え、歯を食いしばって立ち上がる。
「能力番号8『音が目に見える能力』。この能力で君らの呼吸音も心音も声もハッキリと見えている。隠れることは出来ないよ」
余裕があるベゼは、得意げに能力をバラす。
おかげで、ホアイダ達は透明状態でも無駄だと理解した。
「援護を、お願いします」
ベゼに向かって行くホアイダに、五人の男達が着いていく。
ベゼの体に纏っている影を、ヴォルフが直接触って液体にする。
しかし、液体になった影は動きを止めずに、ヴォルフの体を掴み、口を塞いで息を止める。
「止まるな小僧共」
無口だったヘルヴォルが皆に言った。
ホアイダと男達は、ヴォルフに構わず、ベゼに攻撃する。
イワンはベゼの背後に投げたボールと自分の位置を入れ替え、背後を取る。
ベゼは皆に囲まれる。
しかし、ベゼが体から出した骨によって、イワンが胸を刺される。
フロールとアムレートの攻撃がベゼに避けられるが、ヘルヴォルの刀がベゼの腕を切り落とす。
ベゼはすぐさま羽根で周りの男達を蹴散らす。
「やるね爺さん。一番若々しい動きだった」
「貴様も、能力が多いだけの小僧じゃないらしいのぉ」
ヘルヴォルの頬が浅く切れる。
「何だ?一人居ない……ホアイダが居な――」
ベゼは床から出てきたホアイダに背後を取られる。
ホアイダはベゼの肩に小刀を刺し、ベゼの顔を掴んだ。
「これは!?何で君がこの能力を!?ホアイダ!!」
床は紙のような質感になっており、ホアイダの下半身も紙のようにペラペラになっていた。
どう見ても、ヴェンディの『あらゆる物を紙にする能力』だ。
それを何故か、ホアイダが能力として使用している。
「行けるぞ!小僧共援護だ!ホアイダの援護に回れ!」
三人の男達が、ベゼに顔を近付けようとするホアイダの元へ走った。
ホアイダがベゼの顔を強く掴み、口の筋肉を緩めた。
「この薄っぺら野郎!」
「がはぁ!」
しかし、ホアイダは腹を蹴られて首を掴まれる。
ホアイダはベゼの腕を掴もうとするが、体から出たきた骨がホアイダの腕をへし折る。
「あぁぁ!」
「何で君がヴェンディの能力を持っているの?君の記憶を見れば、分かるよね」
ベゼがホアイダの首を強く掴む。
能力を発動されないように強く握り、意識を保てなくさせている。
「なるほど、ヴェンディは他者に能力と魔法を引き継がせる魔法を発明し、それを君に使用したのか……。不思議に思ったんだよ……ヴェンディを殺しても能力が増えないから、生きてるのかと思ったけど……君が能力を手にしていたんだね」
ベゼは満足して、ホアイダを男達に向けて投げ飛ばす。
アムレートがホアイダを受け止め、他の二人がベゼに立ち向かう。
「フロール、結界で援護しろ」
「分かった。安心して死に急いできな、爺さん」
ベゼがフロールの能力によって、小さな結界に囲まれる。
「結界か……」
ベゼは能力を使って結界を壊そうとする。
しかし、結界はビクともしない。
「アホめ!その結界は概念だ!物理技や魔法なんぞで壊れたりはしない!」
結界の一部に穴が空く。
その穴はベゼの胸の場所に空いていて、刀が突き刺せる大きさだ。
その穴に、ヘルヴォルが刀を突き刺す。
ベゼは心臓を貫かれる。
「ヴェンディとの戦いで学んだ。たかが心臓を刺されても致命傷にはならないのだよ。血を固めれば瀉血出来るからね」
ベゼにダメージそのものはあるが、致命傷にはなっていなかった。
「嘘だろ……」
「慌てんな小僧、次の手を打つのみじゃ」
ヘルヴォルは一歩引いて結界の穴に火の玉を放った。
「フォティア.ラナ」
ヘルヴォルの炎は小さい玉だったが、威力はベゼの魔法以上だった。
結界の中に居るベゼに、一瞬にして火が移る。
しかし、周りの影が水に変わり、その影を浴びることでベゼの体から火が消える。
「愚かな爺だ」
ベゼは手から出した鏡をヘルヴォルに向けた。
そして、その鏡の中に手を突っ込んだ。
まるで、鏡が別の空間と繋がっているようだ。
「なんじゃ!?この能力は!」
「能力番号『41』鏡から物を取り出す能力」
ヘルヴォルの体は、別の空間に引っ張れたようにバラバラになり、ベゼの手元の鏡からヘルヴォルが出て来る。
ヘルヴォルはベゼと共に小さな結界の中に閉じ込められる形になる。
「今から爺殺すから!助けたいなら結界をお好きに解いてね!」
「ぐはぁ!?」
ベゼはヘルヴォルの腕をへし折り、ぶちぶちと音を立てて腕をもいだ。
「爺さん!!」
「やめろ小僧!結界を解除するなぁぁ!皆を連れて逃げるのだ!」
「くそぉ!!」
フロールはヘルヴォルの言う通り結界を解かなかった。
それが勝利に繋がることだと、重々分かっているから。
それでも、おめおめと逃げることは出来なかった。
「イワンが重症だ!ヴォルフとホアイダは無事だ!」
アムレートはイワンを抱え、ヴォルフとホアイダは首を抑えて立ち上がる。
「おい!結界を解除しろよ!」
ヴォルフが叫ぶ。
しかし、フロールは決して結界を解除しない。
「あの爺さんだって覚悟していたんだ……このまま押し潰す!」
フロールはベゼとヘルヴォルが捕まっている結界をじわじわと狭めた。
「なにぃ!?」
「ベゼ、爺さんと共に死ね」
結界は一瞬にして狭まり、ベゼとヘルヴォルの体をぺしゃんこにした。
結界内で血が破裂し、内蔵や肉片が飛び出る。
「まじかよ……」
「覚悟が甘いんじゃないんかヴォルフ、俺達はこの中の誰かを犠牲にする覚悟だってしていた」
静まり返った部屋で、ベゼを囲っていた結界がなくなる。
しかし、戦いは終わらなかった。
「そうそう覚悟が足りないよ?惨殺される覚悟が」
男達の背後にはベゼが居た。
ヘルヴォルに切られた腕以外、目立つ傷はない。
「バカな!」
「僕が転移出来ることは知ってたろ?はやり物事を熟す時は視野が狭くなるのだね」
ベゼの放ったビームが、アムレートの頭を貫いた。
それと同時に、ホアイダ達の透明になっていた体が元に戻る。
アムレートが死んで、能力が解除されたから透明化が解除されたのだ。
「えっ」
「アムレート!」
ホアイダと他の二人は、唖然としてアムレートを見る。
仲間が平然と殺されて動揺する。
「傷的にホアイダとイワンは戦えなそうだね。ヴォルフとフロール?君ら二人で楽しませてよ」
ホアイダは骨の折れた腕でイワンの胸を治癒する。
その前方で、ヴォルフとフロールが武器を持って、ベゼに立ち向かう。
ベゼは体に影を纏っている。
気体か固体なのかは分からないが、影が奇妙に動いている。
ホアイダの知らないベゼの能力だ。
「我はベゼ、悪の王だ」
ホアイダ達は、ベゼを囲んで一斉に動いた。
イワンがベゼと自分の位置を入れ替え、その瞬間ホアイダ達は一斉にベゼを攻撃した。
しかし、剣や銃弾はベゼの体にまとわりついている影によって吸い込まれてしまう。
「相手との居場所を入れ替える能力か」
ベゼがそう呟き、指から放ったビームでイワンの胸を撃ち抜いた。
「がはぁ!?」
「なにぃ!?やっぱりあいつは俺達が見えてる!?透明の俺達が見えているぞ!」
ホアイダがイワンを抱えて一歩下がる。
他の者も動揺しているが、冷静にベゼとの距離を取った。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。服の下に防具身に付けてて良かった」
イワンは無事だっだ。
胸を抑え、歯を食いしばって立ち上がる。
「能力番号8『音が目に見える能力』。この能力で君らの呼吸音も心音も声もハッキリと見えている。隠れることは出来ないよ」
余裕があるベゼは、得意げに能力をバラす。
おかげで、ホアイダ達は透明状態でも無駄だと理解した。
「援護を、お願いします」
ベゼに向かって行くホアイダに、五人の男達が着いていく。
ベゼの体に纏っている影を、ヴォルフが直接触って液体にする。
しかし、液体になった影は動きを止めずに、ヴォルフの体を掴み、口を塞いで息を止める。
「止まるな小僧共」
無口だったヘルヴォルが皆に言った。
ホアイダと男達は、ヴォルフに構わず、ベゼに攻撃する。
イワンはベゼの背後に投げたボールと自分の位置を入れ替え、背後を取る。
ベゼは皆に囲まれる。
しかし、ベゼが体から出した骨によって、イワンが胸を刺される。
フロールとアムレートの攻撃がベゼに避けられるが、ヘルヴォルの刀がベゼの腕を切り落とす。
ベゼはすぐさま羽根で周りの男達を蹴散らす。
「やるね爺さん。一番若々しい動きだった」
「貴様も、能力が多いだけの小僧じゃないらしいのぉ」
ヘルヴォルの頬が浅く切れる。
「何だ?一人居ない……ホアイダが居な――」
ベゼは床から出てきたホアイダに背後を取られる。
ホアイダはベゼの肩に小刀を刺し、ベゼの顔を掴んだ。
「これは!?何で君がこの能力を!?ホアイダ!!」
床は紙のような質感になっており、ホアイダの下半身も紙のようにペラペラになっていた。
どう見ても、ヴェンディの『あらゆる物を紙にする能力』だ。
それを何故か、ホアイダが能力として使用している。
「行けるぞ!小僧共援護だ!ホアイダの援護に回れ!」
三人の男達が、ベゼに顔を近付けようとするホアイダの元へ走った。
ホアイダがベゼの顔を強く掴み、口の筋肉を緩めた。
「この薄っぺら野郎!」
「がはぁ!」
しかし、ホアイダは腹を蹴られて首を掴まれる。
ホアイダはベゼの腕を掴もうとするが、体から出たきた骨がホアイダの腕をへし折る。
「あぁぁ!」
「何で君がヴェンディの能力を持っているの?君の記憶を見れば、分かるよね」
ベゼがホアイダの首を強く掴む。
能力を発動されないように強く握り、意識を保てなくさせている。
「なるほど、ヴェンディは他者に能力と魔法を引き継がせる魔法を発明し、それを君に使用したのか……。不思議に思ったんだよ……ヴェンディを殺しても能力が増えないから、生きてるのかと思ったけど……君が能力を手にしていたんだね」
ベゼは満足して、ホアイダを男達に向けて投げ飛ばす。
アムレートがホアイダを受け止め、他の二人がベゼに立ち向かう。
「フロール、結界で援護しろ」
「分かった。安心して死に急いできな、爺さん」
ベゼがフロールの能力によって、小さな結界に囲まれる。
「結界か……」
ベゼは能力を使って結界を壊そうとする。
しかし、結界はビクともしない。
「アホめ!その結界は概念だ!物理技や魔法なんぞで壊れたりはしない!」
結界の一部に穴が空く。
その穴はベゼの胸の場所に空いていて、刀が突き刺せる大きさだ。
その穴に、ヘルヴォルが刀を突き刺す。
ベゼは心臓を貫かれる。
「ヴェンディとの戦いで学んだ。たかが心臓を刺されても致命傷にはならないのだよ。血を固めれば瀉血出来るからね」
ベゼにダメージそのものはあるが、致命傷にはなっていなかった。
「嘘だろ……」
「慌てんな小僧、次の手を打つのみじゃ」
ヘルヴォルは一歩引いて結界の穴に火の玉を放った。
「フォティア.ラナ」
ヘルヴォルの炎は小さい玉だったが、威力はベゼの魔法以上だった。
結界の中に居るベゼに、一瞬にして火が移る。
しかし、周りの影が水に変わり、その影を浴びることでベゼの体から火が消える。
「愚かな爺だ」
ベゼは手から出した鏡をヘルヴォルに向けた。
そして、その鏡の中に手を突っ込んだ。
まるで、鏡が別の空間と繋がっているようだ。
「なんじゃ!?この能力は!」
「能力番号『41』鏡から物を取り出す能力」
ヘルヴォルの体は、別の空間に引っ張れたようにバラバラになり、ベゼの手元の鏡からヘルヴォルが出て来る。
ヘルヴォルはベゼと共に小さな結界の中に閉じ込められる形になる。
「今から爺殺すから!助けたいなら結界をお好きに解いてね!」
「ぐはぁ!?」
ベゼはヘルヴォルの腕をへし折り、ぶちぶちと音を立てて腕をもいだ。
「爺さん!!」
「やめろ小僧!結界を解除するなぁぁ!皆を連れて逃げるのだ!」
「くそぉ!!」
フロールはヘルヴォルの言う通り結界を解かなかった。
それが勝利に繋がることだと、重々分かっているから。
それでも、おめおめと逃げることは出来なかった。
「イワンが重症だ!ヴォルフとホアイダは無事だ!」
アムレートはイワンを抱え、ヴォルフとホアイダは首を抑えて立ち上がる。
「おい!結界を解除しろよ!」
ヴォルフが叫ぶ。
しかし、フロールは決して結界を解除しない。
「あの爺さんだって覚悟していたんだ……このまま押し潰す!」
フロールはベゼとヘルヴォルが捕まっている結界をじわじわと狭めた。
「なにぃ!?」
「ベゼ、爺さんと共に死ね」
結界は一瞬にして狭まり、ベゼとヘルヴォルの体をぺしゃんこにした。
結界内で血が破裂し、内蔵や肉片が飛び出る。
「まじかよ……」
「覚悟が甘いんじゃないんかヴォルフ、俺達はこの中の誰かを犠牲にする覚悟だってしていた」
静まり返った部屋で、ベゼを囲っていた結界がなくなる。
しかし、戦いは終わらなかった。
「そうそう覚悟が足りないよ?惨殺される覚悟が」
男達の背後にはベゼが居た。
ヘルヴォルに切られた腕以外、目立つ傷はない。
「バカな!」
「僕が転移出来ることは知ってたろ?はやり物事を熟す時は視野が狭くなるのだね」
ベゼの放ったビームが、アムレートの頭を貫いた。
それと同時に、ホアイダ達の透明になっていた体が元に戻る。
アムレートが死んで、能力が解除されたから透明化が解除されたのだ。
「えっ」
「アムレート!」
ホアイダと他の二人は、唖然としてアムレートを見る。
仲間が平然と殺されて動揺する。
「傷的にホアイダとイワンは戦えなそうだね。ヴォルフとフロール?君ら二人で楽しませてよ」
ホアイダは骨の折れた腕でイワンの胸を治癒する。
その前方で、ヴォルフとフロールが武器を持って、ベゼに立ち向かう。
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