離縁は計画的に、恋は衝動的に、本当は愛していたんだと言われましても困ります

迷い人

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本編

01.自分からは婚姻を拒否なさらないのですね

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 それは決して私が望んだ結婚ではありませんでした。

 生まれた瞬間に婚約者であることを私の定められた次期公爵『ワイズ・クルール』は、花嫁衣裳を身にまとった私にわざわざ会いに来た。

 婚姻の契約前、花嫁の間で行われる禊の最中、止める司祭の静止もきかず夫となる男は乱暴に扉を開こうとしたが、鍵がかかっており、彼は乱暴に蹴り開けて入っていらしたのです。

「どうなされましたか?」

 祈りを中断し私は、静かに問いかけました。

「神の御前で婚姻を誓う前に話がある!」

 背の高いガッシリとした逞しい体型。
 銀色の髪に、銀色がかった水色の瞳。

 世間では、氷銀月の君と令嬢達に人気だと噂に聞きますが、共に育った相手ではそのように夢見心地で見ることは出来ないものです。

 振り返ることなく神の偶像の前で手を組んだままの私。 そんな私に彼は苛立った様子で腕をつかみ強引に立ち上がらせます。 ベールで隠され視線は合うことはありませんが、私の方からは興奮状態で顔を赤らめたワイズ様の顔が良く見えました。

「どのようなお話でございましょうか?」

「シア・グリフィス。 オマエが今日、私の妻となる事でグリフィス家は終わりを告げる。 伯爵家の名を継ぐ者はおらず、そしてオマエはただのシアでしかなくなる。 ようするにだ!! 公爵家と、爵位の後ろ盾のないオマエとでは、私の方が各段に偉い!! ここまではわかるな?」

「はい……」

「だが、わが父であるクルール公爵が、グリフィス家最後の当主であったオマエの祖父ダン・グリフィスに命を助けられたことを理由に定められたこの婚姻は、私の方から断る事が出来ない。 だから、この婚姻、オマエの方から皆の前で破綻させろ」

「嫌でございます」

「はぁ? 公爵家の権力、地位、財力にしがみつき贅沢したい、そんなあさましい事を考えているのか?」

 神々の前で行う禊を邪魔してまで乗り込んできたワイズの乱心、大ごとにしてはいけないと考えつつも、大ごとだと思った司祭はワイズ・クルールの父であるマイズ・クルール公爵を呼びに急いでいた。

「どうして、ワイズ様をお慕いしているからだと、お考え下さらないのですか……」

「はっ、だからどうだと言うのだ。 私は絶対にオマエを愛することがない!! それがオマエにとって不幸になるだろうと思うからこそ、このように忠告を与えているのだ。 いや……やっぱりオマエは、未来の公爵夫人と言う立場が欲しいだけだな」

「そのような事……」

「私がオマエを絶対に愛していないように、オマエも私を本気で愛してなどいないだろう!! もし、私を愛していると言うなら、私の幸福を一番に考えられるはずだ。 それが出来ないと言うことは、オマエは私を愛していないと言うことだ。 なんて醜い!! いくら父がオマエの祖父に命を助けられたとはいえ、このような私欲に紛れた女と結婚しなければいけないとは、なんと私は不幸なのだ!! この結婚、なかったことにすると宣言すると誓え」

 ワイズ様が私の首に手を伸ばし、キリキリと締め上げてきた。

「何をしておる!!」

 ドンドンと扉がなれば、ワイズは私を睨みつけ低く小さな声で脅すように言った。

「わかったな。 みんなの前でこの婚姻は私の不本意であり拒否すると宣言するのだぞ」
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