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18.歩み寄り 04
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「イジメは、ありません……ただ、とても気持ちが悪いと思ったんです」
「気持ちが悪い……ですか? 何をされたのですか? ミミズを靴に入れられたとか。 鞄にネズミの死体を入れられたとか」
「ちょ、待って、そういうのは聞きたくないです。 想像すると……」
「済みません。 彼等の物理的イジメは酷く間接的なもので」
次の言葉をためらっていると、かなり長く無言が続いてしまい、バウマン様の方が先に口を開いた。
「気になるようなら、独り言でも呟いてみるのはどうでしょう?」
ソレは少し寂しい人のような気がして微妙に思うのですが……。
でも……。
マティルは、両手を胸の位置にあげ、何かを手に持つ素振りをする。 子供の頃、ぬいぐるみに話しかけていた事を思い出した。
「私は大きな声も、暴力も、ビックリするし怖いです」
「……驚かせて、怖がらせて、すみません……」
「バウマン様、返事をしては私の独り言にはなりませんよ」
言えば、苦笑交じりに笑うような吐息が聞こえた。
「驚いて、血が怖くて、連れ去られていくバウマン様の背を見れば不安で……。 そんな私の元に、令嬢達がかけよってくださいました。 まだ12か13かの幼い方達です。 そして、大勢の方が私を慰めて下さったのです」
「そう、ですか? お友達は出来ましたか?」
声には、私の感じた感覚が理解できていない事が分かり、イラっとした。
イラって、私は……バウマン様に理解を欲している? 語るだけ無駄だと思っていた頃からの自分の変化に驚いていた。 私は、私を理解しようとしてくれるかもと、希望を抱いてしまったのでしょうか?
「お友達には、なれそうにありません」
「何か嫌な事を言われたのですか?」
「嫌な……いえ、慰めの言葉が、なんだかイヤだと思ったんです。 それに、あの時、彼女達は床を濡らす血を踏んでいたんです。 ためらう事無く」
「それだけ、貴方を案じていた……と言うほどの親しさ……そんなものは存在する訳ありませんね」
「はい、温かなお茶と甘い菓子が直ぐに準備されていました」
彼女達の同情の言葉はバウマン本人に告げる事が出来なかった。 ソレが戸惑いとなり、言葉が途切れれば、
「気になさらないで下さい。 私の事を悪く言っていたのでしょう。 友達になりたいと思う方がいらしたなら、甘えてみてはどうですか?」
「いいえ、突然の大きな音が苦手なだけで、バウマン様が怖い訳ではありません!! 私は、私を可哀そうだと言う人を友達にしたくありません」
領地、領民と言う人質が私の、男爵家の手のひらの上にあり、侯爵家に嫁ぐならと繰り返すバウマン様が、私に危害を加える訳等ありえない。 と、思う……。 なのに誰も彼もが可哀そうだと言うのだ。
苛立ちを覚えた。
「……コレからは、冷静さを保つよう気を付けるようにします」
「ソレは、助かります」
私達は、小さく笑った。
「それで、マティルの怖かったものは、なんだったのでしょうね」
「えっと些細な事なんです。 小さな子が血に濡れた床を気にせず、私にかけより、同情的な言葉を発したのです」
繰り返すのは同じ言葉。 それ以上何も無くて、あくまでも感覚的なものだからマティルは説明のしようがない。 バウマン様はかなり長く考え込んでいて、その様子は私を理解してくれているようでうれしかった。
「大きな音、血に怯える貴方には、自分に向けられている訳ではないとは言え、暴力の場を無かったかのように動く者達が気になったのでしょうか?」
「そうかもしれません……。 あたたかなお茶を出してくれるのが教師だったなら。 教師の立場だから、そのようにしなければいけない、そのように演じるだろうと割り切れるのですが、小さな子ではそこまで計算づくと言う訳ではないのでしょうけど……」
バウマンはまた考え込む。
「マティルはソレを優しさだと思えなかったのですね。 そう、なら、……私がそうなのですが……、周囲が見えなくなるほど1つだけを目的に据えると意外に気にならなくなるものですよ」
人を嫌わずに済むようにとの言葉を選びながらも、バウマンは考えた。
マティルは近づきたいと考えて当然だ。 下手な事をする人はいないはずなのに? それとも友人になろうと言う下心がイヤだったのでしょうか?
バウマンは色々と後悔した。
もし、威嚇をするにしても、閣下の留守中にするものではなかった……と。
「気持ちが悪い……ですか? 何をされたのですか? ミミズを靴に入れられたとか。 鞄にネズミの死体を入れられたとか」
「ちょ、待って、そういうのは聞きたくないです。 想像すると……」
「済みません。 彼等の物理的イジメは酷く間接的なもので」
次の言葉をためらっていると、かなり長く無言が続いてしまい、バウマン様の方が先に口を開いた。
「気になるようなら、独り言でも呟いてみるのはどうでしょう?」
ソレは少し寂しい人のような気がして微妙に思うのですが……。
でも……。
マティルは、両手を胸の位置にあげ、何かを手に持つ素振りをする。 子供の頃、ぬいぐるみに話しかけていた事を思い出した。
「私は大きな声も、暴力も、ビックリするし怖いです」
「……驚かせて、怖がらせて、すみません……」
「バウマン様、返事をしては私の独り言にはなりませんよ」
言えば、苦笑交じりに笑うような吐息が聞こえた。
「驚いて、血が怖くて、連れ去られていくバウマン様の背を見れば不安で……。 そんな私の元に、令嬢達がかけよってくださいました。 まだ12か13かの幼い方達です。 そして、大勢の方が私を慰めて下さったのです」
「そう、ですか? お友達は出来ましたか?」
声には、私の感じた感覚が理解できていない事が分かり、イラっとした。
イラって、私は……バウマン様に理解を欲している? 語るだけ無駄だと思っていた頃からの自分の変化に驚いていた。 私は、私を理解しようとしてくれるかもと、希望を抱いてしまったのでしょうか?
「お友達には、なれそうにありません」
「何か嫌な事を言われたのですか?」
「嫌な……いえ、慰めの言葉が、なんだかイヤだと思ったんです。 それに、あの時、彼女達は床を濡らす血を踏んでいたんです。 ためらう事無く」
「それだけ、貴方を案じていた……と言うほどの親しさ……そんなものは存在する訳ありませんね」
「はい、温かなお茶と甘い菓子が直ぐに準備されていました」
彼女達の同情の言葉はバウマン本人に告げる事が出来なかった。 ソレが戸惑いとなり、言葉が途切れれば、
「気になさらないで下さい。 私の事を悪く言っていたのでしょう。 友達になりたいと思う方がいらしたなら、甘えてみてはどうですか?」
「いいえ、突然の大きな音が苦手なだけで、バウマン様が怖い訳ではありません!! 私は、私を可哀そうだと言う人を友達にしたくありません」
領地、領民と言う人質が私の、男爵家の手のひらの上にあり、侯爵家に嫁ぐならと繰り返すバウマン様が、私に危害を加える訳等ありえない。 と、思う……。 なのに誰も彼もが可哀そうだと言うのだ。
苛立ちを覚えた。
「……コレからは、冷静さを保つよう気を付けるようにします」
「ソレは、助かります」
私達は、小さく笑った。
「それで、マティルの怖かったものは、なんだったのでしょうね」
「えっと些細な事なんです。 小さな子が血に濡れた床を気にせず、私にかけより、同情的な言葉を発したのです」
繰り返すのは同じ言葉。 それ以上何も無くて、あくまでも感覚的なものだからマティルは説明のしようがない。 バウマン様はかなり長く考え込んでいて、その様子は私を理解してくれているようでうれしかった。
「大きな音、血に怯える貴方には、自分に向けられている訳ではないとは言え、暴力の場を無かったかのように動く者達が気になったのでしょうか?」
「そうかもしれません……。 あたたかなお茶を出してくれるのが教師だったなら。 教師の立場だから、そのようにしなければいけない、そのように演じるだろうと割り切れるのですが、小さな子ではそこまで計算づくと言う訳ではないのでしょうけど……」
バウマンはまた考え込む。
「マティルはソレを優しさだと思えなかったのですね。 そう、なら、……私がそうなのですが……、周囲が見えなくなるほど1つだけを目的に据えると意外に気にならなくなるものですよ」
人を嫌わずに済むようにとの言葉を選びながらも、バウマンは考えた。
マティルは近づきたいと考えて当然だ。 下手な事をする人はいないはずなのに? それとも友人になろうと言う下心がイヤだったのでしょうか?
バウマンは色々と後悔した。
もし、威嚇をするにしても、閣下の留守中にするものではなかった……と。
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