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19.王族の利益、子供達の失態 01

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 バウマン・ベールの懲罰房生活は1か月に渡り続いていた。

 それだけの間ブラーム・クラインは王都に戻る事が叶わなかったのだ。

 貴族同士が争いを始めたため解決を命じられていたのだ。 原因は、鉱石の採掘が盛んな領地と、加工が盛んな領地の間における鉄の取引価格。

 名工と呼ばれる武器職人が作った剣の価格が、鉄1㎏100イエン、2キロの大鍋の価格30,000イエン。 初心者用剣(鞘込み)の重さ約3キロの価格80,000~150,000イエン。 熟練の者が作成した者であれば100万イエンを超える。

 鉄の取引価格を値上げしろと言うものと、職人の技術を理解していないというものの間の争いの仲裁に入り、折り合いを見つけ、新しい契約書面を文章化させ、ブラームはようやく王都に戻ってきたところだった。

「あ~~癒しが欲しい……」

 恋した子を思い出すと同時に、不器用で危うい青年もセットで思い出すのが少しばかり忌々しくて、あ~~と唸るように声をだして頭をかく。

「やぁ、おかえり。 優秀な君にしては随分と時間がかかったね」

 粘っこい口調の男が声をかければ、不意に背後に気配を感じた。

「過分な評価、痛み入ります」

 優雅に鷹揚な動作で振り返り礼を述べた。

「正当な評価だよ。 君と争わずに済んで僕は安堵しているのだから」

 ブラームに声をかけたのは、ヴィッテル国王太子であるアドル。 その評価は相応しくないと繰り返せば、私の評価を疑うのか? と言われかねないため、ブラームは頭を下げて礼の形を取る。

「アドル様の元、その評価に違わない力を発揮できるよう尽力いたしていきましょう」

「堅苦しい対応は止めてくれ。 距離を置かれては不安となる。 ところで報告は、もう?」

「はい、既に陛下にはお目通り頂いた後です」

「それはいい。 お茶でもどうだ」

「いえ、この後、会いたい者がいるので遠慮しますよ」

 もう一度頭を下げ歩き出せば、アドルも共に横を歩きだす。

「その事で、話さなければいけない事がある」

 言われれば、ブラームは歩みを止めた。

「君の気に入りが、懲罰房に入れられているがどうする?」

 ブラームは眉間を寄せて呟くように言う。

「マティルが?」

「いや、その婚約者の方だ」

「バウマンが? 何をしたんだ?」

「いつもの事ですよ。 何時になれば理想の学園に近づいてくれるのか」

 大げさな溜息と共に王太子はやれやれと肩を竦め、そして何があったのかを説明した。 

「言論での迫害。 ソレは心を殺す暴力だ。 いい加減に何か対策を立てろと言っている」

 苛立ち交じりに言えばブラームが言えば、押さえろと手で示される。

「そう簡単な話なら、喜んで実行しますよ。 彼は今回やりすぎました。 公平を掲げているからこそ、数名の口の悪い坊ちゃんたちを血だまりに沈めたと言う目に見えた罪を無かった事にするわけにはいけません。 そして、1月ですよ、1月もあればケガも治るものです。 彼等はやられたままでは済まさないでしょう。 今までの例を考えれば、子供達はより過激に狡猾に嫌がらせをするでしょう。 何しろ彼等は人前で大恥をかかされただけでなく、生徒会でも成果を出せず、失態を犯しました。 鬱屈もたまり新しい羊を物色し始めている。 ソロソロ何らかの理由をつけて出さなければ他の者が被害にあいます。 なんらかの、折り合いをつけて彼を出しなさい」
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