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03.
21.懲罰房 01
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会いたかった人……マティルはバウマンと共に懲罰房にいるとブラームは聞いた。
「どうせバウマンを引っ張りださなければいけないのだから丁度いい」
溜息交じりに自分に話しかけるようにバウマンは呟いた。
ソレは密かな嫉妬。
婚約者のいる相手に嫉妬を向ける不毛。
マティルは、バウマンが懲罰房に入れられた日からずっと授業に出る事も無く毎日のように懲罰房に通い、日がな一日を過ごしていると聞けば……嫉妬をして当然だろう。 ずっとマティルに恋していたのだから。
何時の間にそんなに仲良くなったのか不満を覚える。
だが、反面、ソレで良かったともブラームは思った。
側に居る者を失ったマティルが周囲を囲まれ、仲良しごっこを善意と共に強要されながら、色々なお願いをされ断るに断れずに困り切っている。 そんな様子が簡単に想像できたから。
複雑な思いと共に懲罰房へと向かう。
半地下にある懲罰房の出入り口の横には小さな小屋があり、見張り台には1人の男が口笛を吹きながら彫り物をしていた。
『2人は逃げる気はないようだからね』
そんな言葉を意味深に王太子は言っていた。
『なぜ2人なんだ?』
『僕に怒らないでくれよ。 行ってみるのが一番早いんだからさ』
やる気のない見張りだが、バウマンが脱走を試みない以上、彼の役目はバウマンと、日々通ってきているマティルを守る事である。 最近では通ってくるマティルの送り迎えのために見張りを留守にするらしい。
安全を考えた送迎に文句がある訳等ない。
生徒の年齢が年々下がっている中で、今はもう拷問を必要とする程の問題行動をとる者もいないため、懲罰房があるぞと脅しのために残されているだけの場所なのだから、緩くても良いと思っている。
それでも王太子の含みのある言葉や笑いが気になっていた。 ためすように番人の前を通り過ぎようとすれば、軽く声がかけられた。
「あ~、あんた、勝手に通ってもらっては困るよ」
呑気な声とは違い、ナイフの形をした木片がまっすぐにブラームに飛んできて、ソレを交わしながら番人の男に近寄って行く。
ひゅーと口笛がならされれば、軽薄な男だと、そんな男に送迎されているマティルが心配になった。
「王太子殿下の許可は得ている」
「はいはい、えっと、許可証明を拝見してよろしいですか?」
言われて1枚の紙を見せつけた。
「王太子殿下の印を確認させていただきました」
「今日、彼には外に出てもらう」
「どうぞ」
証明書にはブラーム・クラインが保証人となり外に出すと言う書面への了承がなされていたのだ。
そして、ブラームは歩き出す。 その背に向かって明らかに面白がっている番人が声をかけてきた。
「驚かないように覚悟して入ってくださいよ」
言われれば、ブラームは顔をしかめた。 罰らしい罰はないと言っていたが、正直言って信用に値するかと言えば、どこかうさん臭さの残る相手だ。 王太子も今の番人も。
半地下となっている石づくりの建物。
重たい鉄の扉を開いた。
天井近くの小さな窓から光が差し込む。
石造りの廊下は拷問具を運んでいた名残で広い。
かつかつと響く足音は、恐怖を煽るための工夫。
最奥の部屋へと向かえば……、突き当りの廊下を3部屋分ほど前にして、大きな布がカーテンのように揺らめいていた。 かすかな光が透けるように見えて空のようなカーテンだと思った。
カーテンを手で押し上げるようにくぐれば、驚いた瞳がブラームを見つめる。
「ブラーム様?」
「何をしているんだ?」
「どうせバウマンを引っ張りださなければいけないのだから丁度いい」
溜息交じりに自分に話しかけるようにバウマンは呟いた。
ソレは密かな嫉妬。
婚約者のいる相手に嫉妬を向ける不毛。
マティルは、バウマンが懲罰房に入れられた日からずっと授業に出る事も無く毎日のように懲罰房に通い、日がな一日を過ごしていると聞けば……嫉妬をして当然だろう。 ずっとマティルに恋していたのだから。
何時の間にそんなに仲良くなったのか不満を覚える。
だが、反面、ソレで良かったともブラームは思った。
側に居る者を失ったマティルが周囲を囲まれ、仲良しごっこを善意と共に強要されながら、色々なお願いをされ断るに断れずに困り切っている。 そんな様子が簡単に想像できたから。
複雑な思いと共に懲罰房へと向かう。
半地下にある懲罰房の出入り口の横には小さな小屋があり、見張り台には1人の男が口笛を吹きながら彫り物をしていた。
『2人は逃げる気はないようだからね』
そんな言葉を意味深に王太子は言っていた。
『なぜ2人なんだ?』
『僕に怒らないでくれよ。 行ってみるのが一番早いんだからさ』
やる気のない見張りだが、バウマンが脱走を試みない以上、彼の役目はバウマンと、日々通ってきているマティルを守る事である。 最近では通ってくるマティルの送り迎えのために見張りを留守にするらしい。
安全を考えた送迎に文句がある訳等ない。
生徒の年齢が年々下がっている中で、今はもう拷問を必要とする程の問題行動をとる者もいないため、懲罰房があるぞと脅しのために残されているだけの場所なのだから、緩くても良いと思っている。
それでも王太子の含みのある言葉や笑いが気になっていた。 ためすように番人の前を通り過ぎようとすれば、軽く声がかけられた。
「あ~、あんた、勝手に通ってもらっては困るよ」
呑気な声とは違い、ナイフの形をした木片がまっすぐにブラームに飛んできて、ソレを交わしながら番人の男に近寄って行く。
ひゅーと口笛がならされれば、軽薄な男だと、そんな男に送迎されているマティルが心配になった。
「王太子殿下の許可は得ている」
「はいはい、えっと、許可証明を拝見してよろしいですか?」
言われて1枚の紙を見せつけた。
「王太子殿下の印を確認させていただきました」
「今日、彼には外に出てもらう」
「どうぞ」
証明書にはブラーム・クラインが保証人となり外に出すと言う書面への了承がなされていたのだ。
そして、ブラームは歩き出す。 その背に向かって明らかに面白がっている番人が声をかけてきた。
「驚かないように覚悟して入ってくださいよ」
言われれば、ブラームは顔をしかめた。 罰らしい罰はないと言っていたが、正直言って信用に値するかと言えば、どこかうさん臭さの残る相手だ。 王太子も今の番人も。
半地下となっている石づくりの建物。
重たい鉄の扉を開いた。
天井近くの小さな窓から光が差し込む。
石造りの廊下は拷問具を運んでいた名残で広い。
かつかつと響く足音は、恐怖を煽るための工夫。
最奥の部屋へと向かえば……、突き当りの廊下を3部屋分ほど前にして、大きな布がカーテンのように揺らめいていた。 かすかな光が透けるように見えて空のようなカーテンだと思った。
カーテンを手で押し上げるようにくぐれば、驚いた瞳がブラームを見つめる。
「ブラーム様?」
「何をしているんだ?」
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