【R18】婚約者は私に興味がない【完結】

迷い人

文字の大きさ
21 / 49
03.

21.懲罰房 01

しおりを挟む
 会いたかった人……マティルはバウマンと共に懲罰房にいるとブラームは聞いた。

「どうせバウマンを引っ張りださなければいけないのだから丁度いい」

 溜息交じりに自分に話しかけるようにバウマンは呟いた。

 ソレは密かな嫉妬。
 婚約者のいる相手に嫉妬を向ける不毛。

 マティルは、バウマンが懲罰房に入れられた日からずっと授業に出る事も無く毎日のように懲罰房に通い、日がな一日を過ごしていると聞けば……嫉妬をして当然だろう。 ずっとマティルに恋していたのだから。

 何時の間にそんなに仲良くなったのか不満を覚える。
 だが、反面、ソレで良かったともブラームは思った。

 側に居る者を失ったマティルが周囲を囲まれ、仲良しごっこを善意と共に強要されながら、色々なお願いをされ断るに断れずに困り切っている。 そんな様子が簡単に想像できたから。

 複雑な思いと共に懲罰房へと向かう。

 半地下にある懲罰房の出入り口の横には小さな小屋があり、見張り台には1人の男が口笛を吹きながら彫り物をしていた。

『2人は逃げる気はないようだからね』

 そんな言葉を意味深に王太子は言っていた。

『なぜ2人なんだ?』

『僕に怒らないでくれよ。 行ってみるのが一番早いんだからさ』

 やる気のない見張りだが、バウマンが脱走を試みない以上、彼の役目はバウマンと、日々通ってきているマティルを守る事である。 最近では通ってくるマティルの送り迎えのために見張りを留守にするらしい。

 安全を考えた送迎に文句がある訳等ない。

 生徒の年齢が年々下がっている中で、今はもう拷問を必要とする程の問題行動をとる者もいないため、懲罰房があるぞと脅しのために残されているだけの場所なのだから、緩くても良いと思っている。

 それでも王太子の含みのある言葉や笑いが気になっていた。 ためすように番人の前を通り過ぎようとすれば、軽く声がかけられた。

「あ~、あんた、勝手に通ってもらっては困るよ」

 呑気な声とは違い、ナイフの形をした木片がまっすぐにブラームに飛んできて、ソレを交わしながら番人の男に近寄って行く。

 ひゅーと口笛がならされれば、軽薄な男だと、そんな男に送迎されているマティルが心配になった。

「王太子殿下の許可は得ている」

「はいはい、えっと、許可証明を拝見してよろしいですか?」

 言われて1枚の紙を見せつけた。

「王太子殿下の印を確認させていただきました」

「今日、彼には外に出てもらう」

「どうぞ」

 証明書にはブラーム・クラインが保証人となり外に出すと言う書面への了承がなされていたのだ。

 そして、ブラームは歩き出す。 その背に向かって明らかに面白がっている番人が声をかけてきた。

「驚かないように覚悟して入ってくださいよ」

 言われれば、ブラームは顔をしかめた。 罰らしい罰はないと言っていたが、正直言って信用に値するかと言えば、どこかうさん臭さの残る相手だ。 王太子も今の番人も。

 半地下となっている石づくりの建物。
 重たい鉄の扉を開いた。
 天井近くの小さな窓から光が差し込む。

 石造りの廊下は拷問具を運んでいた名残で広い。
 かつかつと響く足音は、恐怖を煽るための工夫。

 最奥の部屋へと向かえば……、突き当りの廊下を3部屋分ほど前にして、大きな布がカーテンのように揺らめいていた。 かすかな光が透けるように見えて空のようなカーテンだと思った。

 カーテンを手で押し上げるようにくぐれば、驚いた瞳がブラームを見つめる。

「ブラーム様?」

「何をしているんだ?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...