上 下
18 / 73
03

15.両親の言い分、学生課の言い分

しおりを挟む
「何をしていたんだ!!」

 中間テストへの不参加から彼女『井本愛莉』への連絡はゼミの担当教授から行われた。 だが返事はなく中間テストの結果、井本の留年が確定した時点で、両親のもとに留年が確定したと言う簡易書留が届けられた。

 ソレに不満をもった井本愛莉の両親がやってきたのだ。

「彼女は、日頃から欠席の多い生徒でした」

 欠席は多いが成績は良い生徒だった。 なにより友人が多く代返を引き受ける相手は少なくは無かった事もあり、今まで留年に至る事は無かった。

 ただ、それだけ。

 実際の出席日数で単位を数えれば、21歳を迎えても1度も進級できなかっただろう。

「何のために高い学費を払っていると思っているんだ!! ちゃんと指導してくれなければ困る!!」

「こちらからは、定められた規定に基づき連絡を取らせて頂いておりますが、井本愛莉さんが応答してくれない事には何もできません」

「何もできませんじゃないだろう!! 連絡出来ないなら探せ!! 大切な娘なんだ!! この学校では、生徒達が授業やテストに出てこなくても良いと指導するのか!! 生徒が大学に何をするために来るのかよく考えてみろ!! 学ぶためであり、卒業するためだ、そんな当たり前の事ぐらい指導できないのか!!」

「先ほども申しましたが、連絡はしております。 ですが本人が自分のリスクを理解した上での行動を、大学側が無理やり指導すると言うのは自由の阻害とされます。 井本愛莉さんは法的に大人だと言う事を理解しておいでですか?」

「自由の阻害と言うが、本人に何かあったらどうしてくれるんだ!!」

「他の生徒達に事前に授業をサボる際の代返を頼んでいる以上、欠席は本人の意志が介入していますよね? それもかなり性質が悪い……」

「娘を馬鹿にしているのか!! 訴えてやる!! 覚悟しておくんだな!!」

「それよりも大学への在籍を続けるなら、手続きをしていただかない限り出席の有無に関係なく学費を支払っていただく事になりますがいかがいたしますか?」

「私の娘が行方不明になっていると言っている時に言うべき事はそんな事なのか!!」

 井本愛莉は問題も多いが友人が多かった。

 彼女を注意した事で嫌がらせを受けた講師もいたため、あえて井本愛莉の代返を見逃していた講師も少なくはない。 そもそも出席しないのでは注意のしようはないが……。

 娘を探せと言う親と、今後の方針と手続きを求める学生課。 この言い合いは必要以上に激しくそして生徒達の間でも噂となる。



『この学校に神隠しの噂があるんだけど、知ってる?』

 そんな声がひっそりと広がりだしていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】Apocalypsis アポカリュプシス

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:45

怪淫談(カイダン) ~オカルティックエロ短編集~

ホラー / 完結 24h.ポイント:340pt お気に入り:38

姫君たちの傷痕

ホラー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:57

映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:285pt お気に入り:5

【R18G/短編集】餌食

ホラー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:3

赤ずきんと猟師

ミステリー / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:27

巻き添えで異世界召喚されたおれは、最強騎士団に拾われる

BL / 連載中 24h.ポイント:3,471pt お気に入り:8,526

処理中です...