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番外(こんな未来もあるかもしれない)

番外α 01

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 家の側に車が2台とまり、1台が駐車場に入り、そして1台が去っていく。

 克己は遠方に嫁いだ同級生の結婚式に出ているから、戻ってきたのはパパ教授の方。

 動画を一時停止し、玄関へと向かおうと立ち上がればピョンと晃が肩に乗ってきて、そして親良も一緒に部屋を出る。

「おかえりなさ~いパパ」

 パパと呼ぶ事に抵抗もなくなっていた。

「教授、言って下されば、迎えに行きましたのに」

 親良が何故言ってくれないのかと、声と表情で不満を告げれば、パパ教授は嬉しそうに笑っていた。

「いやぁ……家族っていいねぇ~」

「どうして、そういう話になるんですか」

 口調こそ責めている親良だが、その声はとても優しい。

「夕食はどうしますか?」

 食事会だと聞いていたのに、少しだけ早い帰宅だったから。 私達は、珍しく見たい動画が一致した事もあって、今日は宅配ピザを頼み動画を見ながら食事を済ませていたのだ。

「そうだね……中途半端な時間に食事を食べてしまったから、小腹がすいたら冷凍庫の中のオニギリを貰って茶漬けにでもするから気を使わなくていいよ」

 優しい声で微笑みながら言ったパパ教授は、既に19歳となっている私の頭を幼い子にするかのように撫でてくる。

「でも……」

 私の口に人差し指を当てるふりをした教授は小さな声で言う。

「本音を言うと、今日の食事会は少しばかり重くてねぇ……。 アッサリ済ませたいのですよ。 ですが、そんな事で年を取ったと言われたくはない……繊細なパパ心を理解してください」

 パパ教授のお茶目な口ぶりに私が笑えば、パパ教授も目を細めて笑っていた。

「親良君もありがとう。 気遣いは要らないよ。 代行費用は出版社持ちです。 それと、コレはお土産。 子供を3人預かっていると言ったらケーキを持たせてくれたんですよ。 3人で仲良く食べなさい」

「子供って……教授、俺はもう30も近いんですけど」

「私にすれば十分若いさ」

「いえ……10も違いませんよね?」

「僕が……本当の年齢を言っているとでも思っているのかい?」

 そう言ってパパ教授が笑えば、親良も仕方がないとでもいうように笑い返した。

「俺は人間ですら無いが?」

「むしろ、出版社の会長の夢枕に立ってお布施でも貰えばどうですか?」

「趣味じゃないな」

「と言う事は……、このケーキ、全部、私のかしら?!」

 親良はどうぞと笑うが……晃はゲッと言う音を立てた。

「太るぞ?」

「あぁ、そういえばカロリーは不死の力とは関係みたいですね……最近、肉が」

「親良。 ウルサイ……」

「コラコラ、私は休ませて貰うから仲良く食べるんだよ」



 そうしてもらったケーキは、イチゴ、メロン2種類のショートケーキを3人分ずつ。

 部屋に戻って映画の続きを再生し、皿の上にケーキを置くが……。
 親良はパソコンに向かい、妖カラスはベッドの上に腰を下ろしていた。

 ちなみに……ココは、私の部屋。

 元々、私を預ける前提だった葛城邸のこの部屋は他の部屋よりも広く、親良に宛がわれた部屋は客間ではあるがぐるりと本棚に覆われ、大量に置かれた本が圧迫感を与え部屋を狭く見せていた。

 で、親良も私の部屋をリビング替わりに、過ごす事が多い。
 そして晃は、カラスなので部屋は要らないらしい。

「何を飲みます?」

「お茶、紅茶、コーヒー、ソロソロ夜眠れなくなるぞ」

「でも、ケーキですよ? 飲み物無しで食べろと言うのですか?!」

「明日でもいいんじゃないのか?」

「賞味期限がココに!!」

「賞味、期限だろう?」

 ケーキがあるのに何故食べないの?

 私にはとても理不尽で、不可解な問答に思えたのですが……、親良からは苦笑が漏れるだけで、ドチラが間違っている等と言う意見はない。

「なら……白湯?」

「ソレはいいから……」

 妖カラスから、人の姿になり部屋が暗くなる始める。

「晃、仕事中ですので、暗くするのは止めて下さい」

「はぁ、まぁ、仕方ないかぁ」

 トンッと私の足を引っかけ、転倒させてくる晃。

 そして晃は、私がうぉおおっと、何て感じで数歩下がるのを見極めて、ベッドの上に倒してきた。

「な、なに?」

 呆気なく身体はベッドに放り出され、悪い予感がヒシヒシと襲われながらも上体を起こした状態で、見下ろしてくる晃を見上げる。

「何をするつもりですか?」

「人の姿を取っている時点で、想像つくだろう?」

 不敵に晃は笑って見せれば、

 茶番だなと小声でつぶやく親良は苦笑している。

「け、ケーキを食べる?」

「あぁ、そうだな。 雫はケーキを食べるんだ」

 そう言いながら晃は四つ這いで顔を近寄せてくる。
 ニヤニヤして見せる様子が……嬉しそうで、少しヤバイ……。

 チュッと軽く触れてくる晃の唇が、グッと押し付けられ深く結びつき、甘く私の唇を噛みながら舌が口内へと押し入ってきた。

「ちょ(と、何するのよ!!)」

 キスなんて毎日の挨拶になったけど、こう深く絡めあうようなキスを親良がいるのにするのはどうなのでしょうか? と……思うが、晃にはそういう羞恥心と言うのが無いらしい事は既に分かっていて、私は諦めてぬるりとした熱い舌が絡められるのを受け入れた。

 舌先が絡み合い、舐められ、くちゅくちゅと水音が響く。
 れろれろとカラカウように舌先が、舐められちゅっとキツク吸われる。

「ぁ、んっ……ふぅっ」

 甘い声を口づけの隙間から漏らせば、口内から舌がユックリと抜かれ、唇が触れる距離で笑われ、チュッと口づけされ、耳元で囁かれる。

「どうした? 何時もより興奮しているようだが、そんなにイヤラシイ声を親良に聞かせたいのか?」
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