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3章 ルシッカ伯爵領 中央都市
25.不法投棄者 05
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「さて、罪を犯したその子供達が罰を受ける事となりました。 間違いは正され、これで伯爵も安心し皆さまとお会いになるでしょう」
私が言えば、都市の住民は安堵の様子を見せた。
伯爵は呼ぶまでもなく、森の中から姿を現しそして、私の身体にその大きな身体を寄り添わせ、まるで手をつなぐかのように、私の腕に長い尾が触れた。
「私に話があるとのことですが、どのような用ですか?」
伯爵は恐ろしい姿だ。
だけど声は優しい。
今も、何時もと変わらず穏やかで落ち着いた印象を醸し出している。
「私達を助けて下さいませ」
「ルシッカ領は、国の端にある防衛拠点の1つではありますが、実際に戦らしいものは起こってはおらず、隊士の方々は国から労働対価を得つつ、領地の治安維持、インフラ整備に協力してくださっている。 他の領地と比べても、ずいぶんと恵まれているのですが、何の不都合があるというのでしょうか?」
伯爵がツラツラと言う。
これは、過去の住民の発言パターンから、準備しておいた返し。
「隊士の方々が働いてくださると言っても、我々に何の関係があるでしょうか? 彼等が私共の店を利用する時は、かならず値引かれる。 私共にしてみれば、あの方々がいるからこそ、日々の赤字が募ると言うものです」
「分かりました。 隊士の方々に改善を求めておきましょう」
「そうではありません!! 私共に必要なのは未来の約束ではなく、過去の保証なんです!! あの方々が安く商品を買おうとするあまり、我々は常に損失が発生したのですから」
これは、私が聞いていた彼等の金引き出しパターンとは違っていた。
「本当にそうなのですか?」
「私の記憶では、隊士の方々を受け入れる代わりに、納税の減額が適用されていると聞いていますが?」
「そ、それがなんだと言うのですか!! 私共は実際にこうして生活に困窮しているんですよ!!」
「隊士の方々は、その支出入の記録は細かく国に管理されております。 ですので、彼等によってもたらされた損害分とみられる金額は私が保証いたしましょう」
その言葉を聞いて、住民達はようやくホッと人心地着いたように見えた。 だが、それで終わりかと言えば、その安堵は自分達に思い通りにようやくなったと言う安堵だったらしく、彼等はこう続けたのだ。
「隊士たちによってもたらされた長い間の損失には、利益がつくというものです。 何しろ私共は、自費によって商品を仕入れ、損失を出しながら販売を行い、そして独自で金を準備し仕入れ常に損を負わされていたのですから、当然ですよね? ご理解いただけますよね? 伯爵様にご理解いただけないようでは……口減らしのために、幼い子供には死んでもらい。 年頃の子達は奴隷商人に売却するしかありませんな」
ニヤリと男が笑えば、他の住民も笑いだす。
だが、既に子供達は罪の贖いという形で保護済である。 そしてこの場に来ている大人達の元で生まれた子供達は、幼児に至るまで保護済である。
「好きにするといいですよ」
そう、伯爵は涼やかに微笑み、私達は談笑をしながら、隊士たちと共に彼等の宿舎へと向かうのだった。
私が言えば、都市の住民は安堵の様子を見せた。
伯爵は呼ぶまでもなく、森の中から姿を現しそして、私の身体にその大きな身体を寄り添わせ、まるで手をつなぐかのように、私の腕に長い尾が触れた。
「私に話があるとのことですが、どのような用ですか?」
伯爵は恐ろしい姿だ。
だけど声は優しい。
今も、何時もと変わらず穏やかで落ち着いた印象を醸し出している。
「私達を助けて下さいませ」
「ルシッカ領は、国の端にある防衛拠点の1つではありますが、実際に戦らしいものは起こってはおらず、隊士の方々は国から労働対価を得つつ、領地の治安維持、インフラ整備に協力してくださっている。 他の領地と比べても、ずいぶんと恵まれているのですが、何の不都合があるというのでしょうか?」
伯爵がツラツラと言う。
これは、過去の住民の発言パターンから、準備しておいた返し。
「隊士の方々が働いてくださると言っても、我々に何の関係があるでしょうか? 彼等が私共の店を利用する時は、かならず値引かれる。 私共にしてみれば、あの方々がいるからこそ、日々の赤字が募ると言うものです」
「分かりました。 隊士の方々に改善を求めておきましょう」
「そうではありません!! 私共に必要なのは未来の約束ではなく、過去の保証なんです!! あの方々が安く商品を買おうとするあまり、我々は常に損失が発生したのですから」
これは、私が聞いていた彼等の金引き出しパターンとは違っていた。
「本当にそうなのですか?」
「私の記憶では、隊士の方々を受け入れる代わりに、納税の減額が適用されていると聞いていますが?」
「そ、それがなんだと言うのですか!! 私共は実際にこうして生活に困窮しているんですよ!!」
「隊士の方々は、その支出入の記録は細かく国に管理されております。 ですので、彼等によってもたらされた損害分とみられる金額は私が保証いたしましょう」
その言葉を聞いて、住民達はようやくホッと人心地着いたように見えた。 だが、それで終わりかと言えば、その安堵は自分達に思い通りにようやくなったと言う安堵だったらしく、彼等はこう続けたのだ。
「隊士たちによってもたらされた長い間の損失には、利益がつくというものです。 何しろ私共は、自費によって商品を仕入れ、損失を出しながら販売を行い、そして独自で金を準備し仕入れ常に損を負わされていたのですから、当然ですよね? ご理解いただけますよね? 伯爵様にご理解いただけないようでは……口減らしのために、幼い子供には死んでもらい。 年頃の子達は奴隷商人に売却するしかありませんな」
ニヤリと男が笑えば、他の住民も笑いだす。
だが、既に子供達は罪の贖いという形で保護済である。 そしてこの場に来ている大人達の元で生まれた子供達は、幼児に至るまで保護済である。
「好きにするといいですよ」
そう、伯爵は涼やかに微笑み、私達は談笑をしながら、隊士たちと共に彼等の宿舎へと向かうのだった。
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